出会い系でやり取りしていたバツイチ四十路女性ハルさんと、球場で初めて会った。
出会い系サイトで、俺のような平凡中年男は女性と全く出会えない。
サイトってバーチャルなのでは?
とさえ疑っていた。
『ゲート前で背番号38のユニフォームを着て待ってます』と、約束の時刻にハルさんからラインがきた。
見回すと、四十路には見えない若い女性が、まず目に入る。思ったより若いんだ…
「ハルさんですか?」と声をかけたら、「はあ?」と不審な目で見られた…
人違いだった。スミマセン!
次に視界に入った背番号38の女性には、半周見回してから慎重に声をかけた。
「はい。私です」とにこやかに答えた中年女性は、中肉中背で普通すぎるほど普通だった。
ジーパンにユニフォーム姿で、メイクはナチュラル(素っぴんではない)。
俺の中の出会い系サイトのイメージが、ケバくて突飛だったのか?
とにもかくにも二人で入場して、中に入って席につく。
「最近は娘が付き合ってくれなくなって、一人が多いんです」と笑う彼女。
取りあえずチケット代を払い、飲み物を奢る。試合は始まった。
野球談義を交わしながら見ていると、手に汗握るシーソーゲームになった。
味方が得点するたびにハイタッチ、最後は劇的な幕切れに抱き合って喜んだ。
試合後、夕食を誘って一緒にした。
中華料理屋で話ながら食べる。
彼女はシンママ、一人娘は大学生だと笑う。夜勤もこなす介護職で頑張っているらしい。
彼女はとにかく明るくて、こちらまで楽しくなる。食事は終盤にさしかかる。
出会い系の場合、このままホテルに連れてってもいいのかな…?
店を出て帰り道、ちょっと手を繋いでみた。
特に拒否はされない。 駅が近くなる…
暗がりで、思いきってキスしてみた。
軽く返した彼女が、「じゃあ」と微笑んで去った。
見送った俺は、『これからどうすれば?』と考える。
彼女は野球好きで、今日の券は彼女の余り。
今度は自分がチケットを用意して誘えばいいのでは?
そして試合後は、もっと誘ってもいいのかな?
いろいろ物思いにふける夜になった。