■【映像】タリバンをわかりやすく解説／アフガニスタンのカブールをタリバンが制圧し、世界に衝撃走る。
一一2001～2021年の20年にわたる米軍のアフガン駐留をやめると声明したバイデン政権、その直後の8月15日にタリバンは首都カブール制圧。数千の難民が空港に押し寄せる。
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■■〈イスラーム原理主義が生まれるのはなぜか〉
映画「ホテル・ムンバイ」は、インド西部のムンバイ（旧名ボンベイ）の有名ホテルを2008年に襲撃し、宿泊者100人以上を殺害したテロ事件を描いた衝撃的映画で印象に残っているが、このテロ事件で衝撃を受けたのは若いテロリストを送りこんだのが、パキスタンのタリバン運動を組織した連中だったことで、実はアフガニスタンのタリバン（神学生）は1979～1986年のソ連のアフガン侵攻後の内戦中にパキスタンに逃れたアフガニスタン人の若者をパキスタン軍情報部が難民キャンプに神学校をつくらせ、スンニ派のシャリーア（イスラーム法）遵守の戦闘員を育成し、アフガニスタンに派兵して諸部族同士の内戦を終わらせた。
インドと対立しているパキスタンはかつてからアブにスタンを勢力下におくことを狙っており、パキスタンから武器供与を受けたタリバンはたちまちアフガニスタンを制圧し、1996年政権を握った。ところが娯楽（飲酒・音楽・映画）を禁止し、さらに女性の就業・教育を禁止し、頭からかぶるブルカを女性に強制して世界に衝撃を与えた。アメリカは2001年の9.11事件をおこしたアルカイーダの首謀者オサマ・ビンラーディンがアフガニスタンに逃れ、タリバン政権がアメリカへの引き渡しを拒否した、ブッシュ大統領（子）がイラク（フセイン政権）戦争と同時にアフガニスタンに侵攻し、タリバン政権を倒し、アメリカの傀儡政府を樹立して20年間も支援してきたが、2021年8月末までに米軍をアフガンから撤兵することを声明すると、数週間でタリバンがアフガニスタンを制圧、30万もいる国軍は実質5～6万人のタリバン兵に戦わず瓦解してしまった。しかし、7世紀にムハンマドが神アラーから受けた啓示書『コーラン』の掟を21世紀の現代社会に持ち込むのには無理があります。7世紀後半といえば、日本は飛鳥時代ですよね。そんな昔の掟を現代に再生して女性は家事と育児だけに専念し、学校なんかに行かせなくてもよいというのは、宗教特有の狂気です。
アメリカのキリスト教原理主義も似た傾向のものがあります、ダーウィンの進化論を否定し、教会の教えよりも『新約聖書』の主の言葉（福音）を信仰すればよいとる「福音派」（ルターの信仰義認説に立脚）がありますね。コーランと同じように、新約聖書の教えを絶対視し、妊娠中絶を罪と考え、同性愛を罪悪視します。ところで、近年、イスラーム原理主義のアルカイーダやIS（イスラーム国）やタリバンなどが台頭してきた原因はどこにあるのでしょうか。根っこがなければ草木が成長しないように、原因がなければイスラーム原理主義は台頭してきません。大きな理由は2つあります。
一つは、イスラーム世界に押し寄せている西欧近代化の波に対する信仰上の危機感です。かつてヨーロッパ諸国の植民地になったイスラーム世界には欧米の資本や産業や風俗が流入してきて、必然的に近代化されていきます。こうした異教徒による近代化は、すなわち西欧化を意味し、自分たちが大切に育成してきた伝統や文化を破壊していると映るのです。こうした異教徒の西洋人の生活スタイルに反発して、イスラーム教徒が『コーラン』の教えに戻ろうとするのは当然なのです。かつてペリーの来航（1853年）に衝撃を受けた幕末の日本人が「尊王攘夷」を掲げて外国人を襲撃しちのと同じメンタリティーなのです。
もう一つの理由は「富の不均衡」です。産業が近代化されれば、うまく流れに乗った人は儲かって、裕福になっていけますが、中東やアフガニスタンの若者たちの大半には仕事がありまきん。本来、イスラームの教えでは、アラーの前での平等が第一で格差を否定しています。イスラーム教徒（ムスリム）は一部の人間のみが裕福になることは許しません。「寄付」や「寄進」のことをアラビア語でザカートといいますが、これはメッカ巡礼（ハッジュ）や断食（ラマダーン）や礼拝（1日5回）と並ぶイスラーム教徒の義務です。だから、アラブの王や権力者が富を独占して民衆に分配しないのは「イスラーム法（シャリーア）」に反する行為ととらえ、「革命を起こしてよい」という理屈になるのです。「平等」「分配」という考えが徹底しているので、富の不均衡に対する反発が、イスラーム原理主義の台頭する素地となっているのです。
