*こちらは妄想のお話です。
大好きな方々のお名前を借りています。
秋
新しい生活が始まった。
僕は通信制の学校に転入、昔から自宅学習をしていたから、とくに困る事はなかった。
週一回のリハビリへ通う事、健太の朝、夕の散歩。夕方の散歩には智が付き合ってくれる。
こっちに戻ってから、お互いに、和、智って呼ぶようになった。心の中では呼んでいたけれどね、少し恥ずかしいかな。
智の挿し絵は、評判がよく、他の作家さんからも依頼が来るようになっていた。
僕は、智の挿し絵の本は、2冊買って、1冊は何冊かまとまったら、他の色々リクエストの品と一緒に潤に送っている。
潤は、あっちで、伸び伸びしているみたい。
彼女も、出来た!って連絡が来て、雅紀を悔しがらせている。
その雅紀も、お父さんのお店が、繁盛して学校から帰ると手伝っている。
智のお父さんは船を買って漁をしたり、釣り人を案内したりしている。智も時々船に乗っている。
翔が、事務所経営についての勉強を始めた。
影山さんとの共同経営だったが、今後のことを考えて、空き時間も増えたこの際にと。
みんな前を向いて進んでいるって感じ。
僕の右手は、完全ではなく、まだまだ。
ピアノも優しい曲なら、なんとか弾けるようになった程度。
大事なこと、智からプレゼントを貰った。
お婆様が頼んでいた僕の絵と、一緒にもう一枚。
ステキな絵なんだ、モデルは僕なんだけど…
桜が舞う中で、空に向かって手を広げ、背中には羽が生えているような…
お婆様は、天使のようねって
その手の先にはもう一つの手。
差し出す手をまるで迎えてくれるような…
この手は誰か、僕は知っているよ。
だって、その手をそっと握って離さないって誓ったんだもん。