あなたも、こんな場面を経験したこと、ありませんか?
「これ、何回も説明してるのに、まったく伝わらない」
「同じことを言ってるつもりだけど、相手の反応が違う」
私はこの本を読んで、ようやく「伝わらない」の裏にある“人間の認知のクセ”と“記憶の脆さ”の構図が見えてきた気がします。今日はその学びと、日常・仕事で使えるヒントを、あなたに語りかけるようにシェアしたいと思います。
まずは、本のタイトルとテーマを押さえておきましょう。本書は 『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』(著:今井むつみ)というもの。 “うまく伝わらない”という悩みを、単なる性格や能力の問題にせず、認知科学・心理学の観点から原因を探り、改善策を示しています。本の要約サービス flier(フライヤー)+2好書好日+2
この記事では、特に「コミュニケーション 重要性 人間の記憶 上書き 1GB」というキーワードを軸に、私たちの“伝わらない理由”とその対処法を、一緒に紐解いていきます。
1|コミュニケーションは仕事も人生も支える土台
まず、なぜコミュニケーションがこれほど重要なのか。
私たちは日々、チームで仕事を進めたり、家族・友人と関わったり、教育・指導をしたり。
そのとき、言葉を交わすだけではなく、「理解し合えるかどうか」が未来を左右します。
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誤解が生まれたら、プロジェクトが停滞する
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意思疎通がうまくいかなければ不満や摩擦が生まれる
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逆に、伝われば信頼や共感が育つ
そういう意味で、コミュニケーションは“道具”であり“アート”です。
言語・非言語・背景知識・認知スタイル・感情まで絡まってくる複雑な現象。
だからこそ、ただ“丁寧に話す”“言い換える”という表面的な工夫だけでは足りないんです。
本書は、「伝えること」と「理解されること」のズレに焦点をあて、認知科学で背景を整理しようとしています。本の要約サービス flier(フライヤー)+2好書好日+2
2|「伝わらない」は“スキーマのズレ”から始まる
本書で繰り返し登場するキーワードが「スキーマ(知識・思考の枠組み)」です。
これは、言ってみれば “その人が持っている物語の土台” のようなもの。
たとえば、「ネコ」という言葉を聞いたとき、あなたの頭にはどんな猫が浮かびますか?
家猫か野良猫か、模様や姿形、ふわふわかスラっとした毛か。
そのイメージは、あなたの体験・関心・記憶によって形づくられたスキーマです。
伝え手と受け手のスキーマが一致していなければ、「言葉」は入ったとしても“同じ意味”にならない。
説明がうまくいかないとき、まず疑うべきは、この スキーマのズレ なんですね。Zenn+3pukoblog+3本の要約サービス flier(フライヤー)+3
さらに、人は自分の当たり前(自分の常識・経験)を基準にして解釈を進めるので、
「話せばわかる」は幻想かもしれない──という指摘も本書の核心的な立ち位置。本の要約サービス flier(フライヤー)+2好書好日+2
だから、伝わらないからといって「相手が理解力がない」「丁寧に話してない」と即断するのは、ちょっと危うい。
むしろ、「自分がどう伝えているか」「相手のスキーマはどうか」を頭に置いて対話してみることが近道です。
3|人間の記憶は“上書きされる”もので、容量は1GBほど⁉
さて、もうひとつ印象的だった点は、「人間の記憶は忘れていくもの」であること、そして「1GB」ほどの記憶容量という主張です。PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
まず、この「1GB」という表現は多くのメディアでも語られており、「私たちが扱える記憶の“総量”は、パソコンでいう1GBほどしかない」というメタファーのようなもの。PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
ただし、これはあくまで紹介された説であって、脳科学的な裏づけとして確定しているとは言い切れません(脳の記憶容量をデジタル記憶容量に直すのは難しい)という反論もあります。X (formerly Twitter)
でも、この比喩が持つインパクトは大きい。「私たちの記憶は、容量が有限で、使い方によって忘れられ、上書きされていく」という問題意識を投げかけてくれます。
記憶は常に更新・上書きされる
記憶は「固定された記録」ではなく、呼び起こされるたびに少しずつ書き換えられることが、近年の記憶研究で示唆されています。
ある出来事を思い出すと、そのプロセスで情動や文脈、類似情報が混ざり込み、記憶そのものが変質していくこともある。Zenn+1
また、忘却のプロセスも自然なものです。
私たちが過去の情報をどのくらい覚えているかは、反復・想起・重要性など多くの要因に左右されます。
これを踏まえると、「何回説明しても伝わらない」の裏には、記憶の“限界”と“ゆらぎ”が関与している可能性が高いわけです。
4|「コミュニケーション × 記憶」の交差点で起こるズレ
では、伝えたいことと相手の記憶や認知がどうズレていくか、そのプロセスを一緒に見てみましょう。
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一度説明 → 相手の記憶にインプットされる
しかし、相手の受け取り側には記憶容量・注意資源という制約があります。
大量の情報、複雑な説明、専門用語などは一度に処理しきれないことがあります。 -
時間が経過 → 忘れ・上書きが起こる
説明を受けた直後は覚えていても、他の情報や新しい知識で上書きされ、記憶が薄れます。 -
再説明 → 語るままには記憶が戻らない
再度説明しても、最初に聞いた内容・前の誤解が残っている状態がベースになる。
これが「何度説明しても伝わらない」と感じる状況につながります。 -
スキーマのズレが残る
相手のスキーマに落としこまれて理解されない言い方が残ると、説明そのものが「別の意味」として記憶されてしまう。
このように、「伝える → 記憶 → 再生」までの流れには常にズレと揺らぎが入り込み得るのです。
5|「伝わる」コミュニケーションにするためのヒント
じゃあ、私たちはどうすれば「何回説明しても伝わらない」を減らせるか。
本書の洞察や私の考えを交えて、実践的なヒントをいくつか示したいと思います。
✅ 相手のスキーマを探る・すり合わせる
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最初に「あなたはこれまでこういう経験をしてきた?」など、背景を探る問いを入れる
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共通言語をつくる(用語・比喩・モデル)
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目線を合わせ、相手が持っていそうな枠組みを仮定した説明を試みる
✅ 重要な情報を絞る・強調する
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一度に伝える要素をできるだけ少なくする
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伝えたいポイントを先に明示する(結論ファーストではないが、意味の整理を最初に)
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キーワード・構造化・見出しを利用して整理する
✅ 可視化・例示を活用する
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図・グラフ・イラスト・フローを入れることで、言語だけに頼らない表現
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具体例、ストーリー形式で記憶の印象を強くする
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メタファー(比喩)を使って、既存スキーマとつなぐ
✅ 繰り返し・要約・想起を設計する
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説明後にまとめ(要約)を入れる
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相手に質問させたり、自分で言い返してもらったりする“能動的思考”を促す
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数日後にふり返りやリマインドする機会をつくる
✅ フィードバック・誤解チェックを入れる
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「今の説明、どこまで理解できた?」と確認する
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相手に要約をしてもらう
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誤解やズレが出た場合、その場で調整する
✅ 記憶の揺らぎを前提に設計する
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一度で完全に伝えきることは難しいと割り切る
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多重経路で再提示(あとでメールで補足、資料で再確認など)
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適切なペースでリマインドを入れる(間隔効果を活用する)
6|“伝わる”とはゴールではなくプロセス
私としては、この本を通じて痛感したのは、「伝わる」という状態は一瞬の出来事ではなく、やり取りを通じて育てていくものだ、ということです。
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一度目で100%伝わることはめったにない
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誤解やズレは不可避、その都度調整が必要
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相手を信じて「理解を共に育む」スタンスを持つこと
「コミュニケーション 重要性 人間の記憶 上書き 1GB」──これらの言葉を胸に、私は少しずつ“伝え方を設計する”ようになりました。
説明する前に、「彼/彼女にはどういうスキーマがあるか?」を考え、可視化ツールを用い、意図的な繰り返しを設計し、「伝えた後も記憶をサポートする仕掛け」を残す。
そうやって一つひとつ、伝わる可能性を少しずつ高めていく。
それが認知科学のヒントを借りた、現実的なコミュニケーションの道だと思います。
