「ま、まぁさ、カレー食べよっか。」
どう返事していいのか、
こんなみんなの前で
…カズの前で宣言されて
なにも返事できない俺を見かねたのか
相葉くんが翔さんを収めるように
声をかけてくれた。
「せっかく運んでもらったのに冷めちゃうしさ!ね!」
翔さんは何かしら
俺の返事を待つような顔で
俺を見つめていたけれど
諦めるようにドサっと椅子に座った。
俺はその場を逃げるように
離れてしまう。
「潤ちゃん…。」
相葉くんの声も聞こえたけど
智が俺を見ていたけれど
俺は店を飛びだしてカズを追いかけた。
「カズっ!」
朝から降っていた雨は天気予報では
1日降り続くと言っていた。
俺の声に振り返ったカズは俺を見て
驚いていた。
「潤くん!傘は?!」
傘も差さずにカズを追ってきた俺に
カズは傘を差し出す。
「朝持ってった傘があったでしょ?」
「カズ、俺はっ、」
俺はカズが好きで
何もカズに求めないから
ずっとそばにいたい。
「潤くん。」
俺の胸の内を知らないカズは
強い眼差しと声を発して俺を見る。
「俺たちは兄弟なんだよ。俺は潤くんをそれ以上にもそれ以下にも思ってない。」
「カ、ズ……。」
「それに俺と潤くんはいつまでも一緒に、なんて無理なんだよ。」
「そんなこと…、」
「だけどどれだけ離れても俺たちは家族なんだ。」
「でも俺は」
「翔さん、いい人だよ、きっと。兄貴が言うんだから間違いない。」
カズは俺から視線を逸らさなかった。
「カズは…もう、俺を助けてくれないの?」
「もちろん俺も兄貴も潤くんが困ってたら助ける。家族なんだから。」
「ならっ、俺はそれ以上のことは…っ、」
「俺はこうやって傘を差し出すことは出来ても潤くんがを安心させるように抱きしめてあげることはできないんだ。」
カズはすごく悲しい顔なのに
すごく優しい声で言った。
「ね、潤くん。翔さんがその人なのかわからないけれど、仲良くなりたいって思ったんだから。その気持ちを大事にしてみなよ。」
「カズ…。」
「店、戻りなよ。その様子じゃ兄貴に言わず飛び出してきたんでしょ。はい、これ持って。」
カズが俺に傘を押し付けたけど
俺はその傘を振り払った。
「カズの傘はいらないっ!」
怒ってくれればいいのに。
こんな勝手な俺を。
だけどカズは怒るどころか眉を下げて
「いらないかー。」
って傘を拾い上げた。
カズを傷付けなくないのに。
カズは俺のために言ってくれてるのに。
胸が苦しくて、何もカズに言えなくて。
カズに背を向けて俺は来た道を戻った。
そんな俺を
カズは追いかけて来てくれなかった。
