もう何年も前のことになります。

 

東京都内のスイーツの店へケーキを

買いに行ったときのことです。

初夏のころだったのかな。

 

人気店だったので、行列ができていました。

 

「お持ち歩きのお時間は?」

店員さんの定番の質問のあと、

客がそれぞれの時間を

答えるということが

繰り返されていました。

 

その流れが不意に止まったのです。

 

 

どうしたのかと、思っていると。

 

客は男性でした。

 

販売員の人の声がとぎれがちに聞こえてきました。

 

「保冷剤は・・・・・・補助的なもので・・・・・長時間使うものでは・・・」

 

男性の返答は聞こえません。

 

はっきり聞こえたのは支配人みたいな人が

「ホテルに戻られたら、

必ず冷蔵庫に入れてください」と言ったことです。

 

ホテル?

 

あくまで、想像ですが。

彼は出張かなにかで、

東京へ行くことになり、

だれかに

あの店のケーキを買ってきてと頼まれた。

「ああいいよ」と気軽に引き受けた。

 

彼は何としても。

頼まれたケーキを買って帰りたい。

 

店としては、「品質の保証ができない」ことは困る。

 

あの瞬間。店の空気が緊張したことを

今でも覚えています。

 

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