「渚にて」の中でわたしが印象に残った話がいくつかある。
そのひとつ。
外で亡くなった人がいた場合。
その事故現場にお供えをしたり、お参りをすることはあまり良くない。死亡現場は死んだ人にとっては一番苦しい記憶しか残っていない。
だから、身内の人が不慮の事故などで外で亡くなったときは、一度だけ依り代になるような花束をもって現場へ行き、供える。
「さあ。一緒に帰ろう」と言って、その花束を仏壇か墓前に手向ける。そうすると死んだ人の魂は花束に宿って自分の家に戻ることができる。
これを読んで思ったことがある。
事故現場の花やお供えにそのままにしたら、関係のない浮遊霊が宿って、地縛霊になってしまうのかな。浮遊霊だって依り代になるものが欲しい。いや浮遊霊だからかもしれない。ずっと帰れない。だれかに迎えに来てほしい思いはあるはず。なんか。哀しい。
