子供の頃から、特別な時に食べられる料理が
あり、その一つがちらし寿司だった。例えば
学校の運動会とか、誰かの誕生日などである。
若い時に洗礼を受けた教会においても、それは
同様で、クリスマスとか、イースターによく
ちらし寿司は作られていた。日頃は来ない信徒も、そんな日には、教会を訪れていて、多い時には、25名を越える時があったので、ちらし寿司を作る時も、大きな木製の寿司おけに、寿飯や甘辛く煮た椎茸、錦糸玉子、そぼろ、さらに
インゲン、のり、紅生姜などを入れていた。
今は亡くなっているが、30数年前には、お料理が上手な老信徒が、何人もいて、彼女らが常に
中心となり、教会にとっては、大事な交わりである愛餐会の食事を、作っていたのである。
愛餐会とは、主に教会の礼拝の後に、そこに
集う人々が共にする食事会で、それを通した
交わりは、今ほど教会の形が整っていなかった
イエスキリストが、活躍していた時代から、
大切にされていた習慣である。
私がこの教会で作られたちらし寿司で、驚いたのは、その具にインゲン豆を使うことだった。
我が家には、小さな家庭菜園があり、亡き母は
インゲン豆も栽培していたが、煮たり、炒めものには使っていたその豆を、ちらし寿司に使うという発想は、私たち家族には、それまでは、
なかったからだ。それにヒントを得て、私が
ちらし寿司を作る時は、その豆をも、加える
ことにした。母からはよく料理を習うように、勧められたが、私は教会の古参の信徒から、
料理を学んだように思う。だから教会にとって
特別な日に作られたちらし寿司は、思い出深く、新しい聖堂が建てられた際に、処分した
そのちらし寿司を作っていた大きな寿司おけが
懐かしく感じられるのである。