あれは私が大学に行く前だったように思う。

弟から、一つのカセットテープをもらった。

キャロル キングのタペストリーという

アルバムのカセット版だった。都会の片隅に

ありそうなアパートの部屋。片膝を立てて、

座っていた若きキャロル キングが写っていた

アルバムジャケット。邦楽好きだった弟が、

何故そんな洋楽のテープを、所持していたのかはわからないが、私は毎日のように、それを

聞いていた。そのジャケット上の彼女の

セーターにジーンズ姿は、生活が貧しいことを

伝えているように、思えたし、おそらく都会で暮らす学生は、家具もさほどない所で、質素に

暮らしているのではないかと、想像したものだ

そのアルバムの大半は、彼女が作った

オリジナル。少し鼻にかかった独特の低い

彼女の声に、圧倒された。そして彼女が

作った曲の多くは、報われない愛に生きる

女性の心の弱さが、表現されているように

思えた。まだ恋愛経験もなかった当時の私には

知らない世界。しかしそれらの中でも、心に

止まった曲はある。後に何人かの歌手により、

カバーされたYouve got friendという友情を

描いた曲である。貴方がトラブルに巻き込まれ、誰も貴方を思わず、希望の光も見えない

時、私の名を呼んで。どんな時も、貴方の

元に駆けつける。私たちは、友達だからという熱い友情が伝わる曲で、子供の頃から、友人が

余り出来ずに、よくいじめられた私は、初めて

それを聞いた瞬間に、こんな心ある友人が欲しいと、痛感した。特にその2番の歌詞には、

貴方が苦しみに陥った時でも、誰かが貴方を

傷つけ、痛めつけるけれど、私は貴方のそばに

行き、寄り添ってあげるという実に、心が打たれる内容である。物書きとしての空想かもしれないが、キャロル キングはそれまで人に、

騙されたり、裏切られるなどして、傷ついた

経験があり、世の中が冷たくて、残酷であるという実感を抱いたのだろう。しかし何らかの

出会いにより、生きる希望が生まれ、もし

誰かが辛い状況に陥ったなら、その人を励まし、誰もがその人を見捨てても、私だけは、

大切な友を見捨てたり、心を裏切ることは

するまい。心を共に分かち合いたいと、彼女は

決意したのかもしれない。後に知ったが、彼女は初めて結婚した男性に、不倫され、その男性との間に子供がいたが、離婚している。けれども仕事では彼女を支えるジェームズ テーラーという友達がいて、彼等の友情は、生涯続いた。ちなみにジェームズ テーラーは、ビートルズがイギリスの既存のレコード会社から、

離れて、設立したレコード会社のアップルに、

デビュー当時は、所属していたし、同じく

シンガーソングライターのカーリー サイモンと結婚したものの、数年で離婚し、別の女性と再婚している。そういう今では、彼等は愛した

人との別れを経験していたので、それもまた

友情を育んだ要因になっていたかもしれない。

実際に彼女のライブに、彼が何度もゲスト出演している。人生の辛酸を舐めたからこそ、

彼女が作る曲が、心の真実として、迫ってくる。


ここ数年の間に、親や恋人など、私にとって、

大事な存在を失い、起業という未知なる世界の扉を開けて、ビジネスを始めた私は、本当に

この世の非情さや厳しさを実感しているので、

どんな時も、貴方の元に駆けつけて、そばに

いるという世界的にも、ヒットしたその曲は、

時に弱った私の心に、光を灯して、人間は

良いものだと、感じさせてくれる。そういう

意味では、私を元気にさせてくれる曲の一つである。全ては彼女とこうした形で出会うきっかけになった我が弟に、感謝である。彼が彼女の

カセットテープをくれなければ、私は彼女の存在も、知らなかっただろうし、そのような

名曲にも、出会わなかったと、思う。偶然なんか

ない。全ては必然だという。ならばこれも、

神がもたらした導きなのだろう。それが嬉しい日々である。


元気をもらえる曲

 

 

 

 

 

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