洋楽好きで、日頃は主に外国の音楽しか
聴かない私でもテレビの影響には勝てず、
そこから流れる歌謡番組は、時々拝聴していた
あれば俗に言う中3トリオが人気絶頂の時代。
テレビをつければ、桜田淳子など十代で、
デビューしたアイドルらが、そんな番組に
頻繁に出演していたものだが、ファンでは
なかったが、私が注目したのが、今は息子も
歌手として活躍している山口百恵である。
彼女は様々な賞を授与されても、ほとんど
涙を流さなかった。いわゆるクールビューティー。私はこの彼女の冷静沈着な振る舞いに、
当初はとても違和感を感じた。何故そこで
感激しないのか? しかしその生い立ちを
知り、妙に納得したことを覚えている。
彼女の母は愛人だった。交際していた男性には妻子がいたのだ。不倫関係にあった状態で、
彼女は生まれ、その父親に当たる男性は、
彼女を認知しなかったから、母親は苦労して、
彼女を育てた。これは私の憶測だが、こんな
生い立ちから、彼女は人間不信に陥り、
家計を支えるために、歌手になったのかも
しれず、厳しい芸能界において、生き抜くため、あえてそうして強さを演じていた可能性もある。その人気を利用して、彼女の後に夫と
なる三浦友和を主演にシリーズ物のドラマが
制作されたが、決して演技は上手とは思えなかった。
だが彼女の持つカリスマ性が受けて、マスコミがその動向を伝えることにより、尚人々に、
その存在を印象付けていったように、思える。
そして三浦友和との交際が進むにつれ、彼等が
婚約し、結婚が決まった段階で、潔く歌手を
辞めることを決意したが、まだ歌手としても
活躍出来た年齢で、人気絶頂の時に、それまでに手にした地位や栄光を捨てる覚悟を決め、
培った歌手としてのキャリアを捨てる決断を
した彼女の女性としての芯の強さに驚き、
衝撃を覚えた。現役最後のコンサートでは、
演奏予定の全ての曲を歌い終えた後、マイクを
ステージに置く光景は、印象的でテレビは、
何度もそれを写し出していた。私はそこに
芸能界という荒野を生きた彼女の強さを
見たように思った。
エディト ピアフのヒット曲の一つにあの
有名な愛の賛歌があるが、歌詞の中に貴方の
ためなら、この黒髪も染め、家族や友そして 国も捨てるという言葉かあるが、山口百恵は、
愛のために、歌手という生き方を捨てた。
だからその潔さに、誰もが称賛したのかも
知れない。もうそのような歌手は、現れないと痛感している。