我が家は、昔からおせち料理は作らなかった
母も働いていたし、父は漁師だったから、
余りしきたりには、こだわりなかったのだ。
我が家で年末に食べていたのは、お刺身の
盛り合わせと、母の手作りの飯寿司だった。
飯寿司とは、鮭やほっけを、切り身にして、
血抜きのために、数日水にさらす。今は
プラスチックの樽が主流だが、昔は木の
樽に、刻んだ大根、ニンジン、生姜と、糀谷
そしてご飯と、そのさらしたホッケ等の魚を
交互に入れて、塩と酢をかける。そして一番
上に、笹の葉を敷き詰め、木の蓋をして、重石を置く。最初は小さな重石だが、それを徐々に
大きな石に変えていく。越冬用に作るので、
長期保存のためには、酢は最適だし、笹は
防腐効果と殺菌作用がある。おそらく北国では
かつては、冬は食料事情も悪かったので、それも保存食となっていたのだろう。
こうして数回重石を取り替えた後、樽を逆さに
して、水分を切れば、食べ頃になる。今は
スーパーでも売られているが、私は母が夜
遅くまで、かかって漬け込んだ飯寿司が、
好きだった。しかし母の死により、それも
食べられなくなったのは、とても残念である。