米国株過熱、最高値ハイペースで更新「クラスター現象」
NQNスペシャル
2024年2月5日 10:06 [会員限定記事]

ロイター
米主要株価指数がハイペースで過去最高値の更新回数を増やしている。債券利回りの上昇(価格は低下)を伴う株高は、バブル相場への傾斜を強めている。

良いニュースは良いニュースの局面
2日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、最高値を更新した。1月の雇用統計が市場予想を上回る結果で、米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測は後退したものの、米経済のソフトランディング(軟着陸)を期待した買いの勢いが上回った。

好決算のメタプラットフォームズとアマゾン・ドット・コムがそれぞれ急伸。エヌビディアも続伸し、上場来高値を更新した。同社株の年初来の上昇率は34%に及ぶ。これら3銘柄を含む米巨大IT企業で構成される「NYSE FANGプラス」指数は前の日に比べ4.9%高と、1日の上昇率としては2023年2月2日以来、ちょうど1年ぶりの大きさだった。

23年後半は米経済指標の悪化が利上げ停止と早期の利下げ転換期待を高め、株買いの勢いが強まる「悪いニュースは良いニュース」の局面だった。足元では追加利上げの可能性がなくなり、景気後退入りの予想が大きく減少するなか「経済指標の改善は株式市場の好材料となる」(シティグループのスコット・クロナート氏)。経済の軟着陸を示す統計が株式相場を押し上げる「良いニュースは良いニュース」の局面に転換したとみられる。

S&P500種、5000の大台が目前
機関投資家が運用指標にするS&P500種株価指数は1.06%高の4958.61と最高値で終えた。強気派で知られる米投資調査会社ファンドストラットのトーマス・リー氏はSNS(交流サイト)で5000は単なる通過点で、さらに上昇する理由は複数あるとの見方を示す。リー氏は今月初めに米メディアで「FRBが政策ミスを犯さなければ、今年は株式市場にとって素晴らしい年になる」と指摘。基本ケースでの年末時点のS&P500種は5200としながら「上方リスクは最大で5500以上まで上がるケースだ」とも述べた。

S&P500種は1月19日に2年ぶりに最高値を更新。その後、今月2日までに7回更新した。米国のような長期的に右肩上がりの株式市場では、最高値を1度更新すると、その後はじり高相場で最高値更新回数が増える「クラスター現象」が起きる。

今年に入り21営業日で7回の最高値更新だが、年内いっぱいこのペースが続くとすると、24年の最高値更新回数は83回程度になる。コンパウンド・キャピタル・アドバイザーズのチャーリー・ビレロ氏によると1929年以降、最も年間の最高値更新回数が多かったのは95年の77回だ。

リスクプレミアム、23年ぶり低さ
米国株はバブルの様相を強めている。S&P500種の予想益回り(PER=株価収益率の逆数)から3カ月物の米財務省短期証券(Tビル)の利回りを差し引いた株式リスクプレミアムは23年以降、マイナスの状態が続く。今年に入りマイナス幅は一段と広がり、バンク・オブ・アメリカ(BofA)によれば、ITバブル以来、23年ぶりの低さだ。対債券比での株式の割高感は極端に高まっている。

BofAのマイケル・ハートネット氏はリポートで金融引き締めが続くなかでも経済が好調に推移し、ハイテクを中心に買われる株式市場はバブルの様相を呈しているとの見方を示す。とりわけ、今年に入ってから債券利回り上昇と同時に進むハイテク株上昇の流れはITバブルの局面と相似していると指摘した。

米アトランタ連銀が経済指標から自動計算する「GDPナウ」では、1〜3月期の実質国内総生産の成長率は4.2%と1月中旬の3.0%から短期間で大きく上昇した。米経済は軟着陸どころか、そもそも減速しないノーランディング(無着陸)への傾斜を強めている。株式市場はメルトアップ(相場の異常な上昇)局面にあることは間違いなさそうだ。

〔日経QUICKニュース(NQN) 張間正義〕