白鵬との結びの一番。速く、鋭く、これぞ日馬富士という相撲で、
横綱としての初優勝を全勝で締めた。賜杯を手にすると、
これまで崩さなかった表情がようやく緩む。「うれしいね」。声が弾んだ。
突き刺さるような立ち合いから、すぐにもろ差し。頭もつける。
軽量横綱の技が光ったのは、右下手を切られた瞬間から。
右手で相手の右膝を押さえつけ、左下手からの投げで崩す。
攻め続けた最後は万全の寄り。北の湖理事長(元横綱)は「きょうが一番良かった」とうなった。
9勝にとどまった先場所は、進退を問う声まで飛び出した。
「みんなの言葉が、いい意味で考えるとやる気になった」。
込み上げる悔しさ、屈辱感を胸にしまい「上がった以上頑張っていくしかない」。
負けん気の強い横綱は、へこたれず奮起した。
全勝優勝はこれで3度目。1場所15日制となった1949年夏場所以降、3度以上全勝した力士は、いずれも10度以上の優勝を遂げている。「(横綱は)誰でもなれるものではない。一生懸命頑張る」と日馬富士。地位の重責を自覚し、全うする覚悟を示した。