日本で店舗や通販サイトを運営していると、よく困るのが消費者からの返品。
販売側が不良品を売ってしまったり、購入者が常識的な使用をしたにもかかわらず、
強度不足などで破損してしまったものについては、もちろん販売側に責任があると
考えます。
しかしながら、責任の所在が不明な怪しい返品が多いのも確か。
どう考えても無理に使用した形跡があったり、故意の破損だったりする場合もある。
他にも購入した時は感じなかったが、購入後に思っていたものと違っていたので返品。
これはイメージ違い。
散々、お店で試着したにもかかわらず・・・のような。
実際に商品を手に取れない通販の場合はイメージ違いはよくあることですけどね。
他にも数年前に販売した商品の返品やどこで買ったかわからない商品の返品など。
とてもじゃないけど、返品した人の神経を疑ってしまうような事例。
ただね。
返品全体からすると、こういうのって日本の場合はとても少ない。
全体の何%ぐらいなのかなぁ。
厳しく品質管理をしているお店では、さらに少ない割合になると思う。
日本ではそもそも返品という行為自体があまり一般的ではないし、実際に店頭で自分で
選んだ行為に責任感を感じてしまう人が多い。
「ああ、これ、失敗したなぁ。」
で済ましてしまうケースが多いんですね。
ある意味、精神的に健全なんだと思います。
消費大国アメリカではどうなのか?
これがとてつもなく緩い返品事情なんですね。
もうほとんど無秩序といってもいいくらいです。
「プレゼントの返品」はアメリカの返品事情を代表する有名は逸話ですね。
ある男性が付き合っている女性にクリスマスプレゼントをした。
女性の方は日本人ですね。
開けてみると商品と一緒に購入店のレシートが入っていた。
当然、購入額も丸見えです。
日本なら値段がバレないように値札をとったりするのが礼儀です。
レシートを抜き忘れたのか、と思い、笑い話のつもりで彼にこのことを言った。
すると思いがけない返事が返ってきた。
「僕がレシートを入れたんだよ。もしプレゼントが気に入らなければ、お店に行って
返品か交換してもらえばいい。」
なんて話です。
アメリカでもっとも大きなセールといえば11月4週目木曜日の「サンクスギビングデー」
の翌日、金曜日の「ブラックフライデー」です。
アメリカ中の販売店が一気に黒字化するという金曜日です。
クリスマスプレゼントをここで買うというのが一般的で、ものすごいお買得価格になるとい
うことで徹夜の列ができるほど。
それがクリスマスの後にはどうなるか?
そう、プレゼントを手に返品しにくる人たちでショッピングセンターや百貨店は溢れかえり
ます。
これはセールだけの話ではなくて、365日日常的に起こっている現象なんです。
昔は日本と同じようにアメリカにも色々な返品条件の設定がありました。
しかし、いまやどんな理由であれ自由に返品しても構わない、というのが常識となってい
ます。
実際に使った後だろうが、1年以上経過していようが、勝った時のレシートがなかろうが、
返品の理由はどうでもいいんです。
気に入らないとか、無駄使いを旦那に怒られたからとか、そんなのでもいいんです。
果ては盗難品だったり、他人の持ち物であっても、理由すら問われないのでわからない
んです。
有名な話だと、タイヤの返品というのがあります。
大手百貨店にタイヤを返品しにきた人がいたんです。
この百貨店は理由も聞かずに返品に応じて言い値で返金しました。
これのどこがおかしいのか?
だってこの百貨店ではタイヤは扱っていないんです。
売ってない商品の返品を受けつけて、お金を返金したんです。
変な話でしょ。
でも、これはあくまでこの百貨店が一般の消費者のことをいかに大事にしているか、と
訴えているんですね。
「いくらでも返品してもらっもてけっこうです。我々はいつもお客様のことを考えています。」
裏返せば、
「それだけ我々のこと信用してください。いつでも我々のお店で安心してお買い物してくだ
さい。」
ということですね。
いつでも返品を受けてくれるお店だから、誰もが気兼ねなくいくらでも買い物ができるとい
う気分になるんです。
返品された商品は未使用品なら再販、状態をみてディスカウントショップで販売、さらに
訳アリ品としてアウトレットへ、と販路が組まれて処分されていきます。
こんな自由に返品させてお店は儲かっているのか?!
普通はそう思いますわな。
しかし、これで十分に儲かってるんです。
だってアメリカ人っていくらでも買うんですもん・・・・。
「貯金する」という概念は少なく、「お金は使ってなんぼ」という認識があるんですね。
靴や服だって一度の買い物で3足、4足、5着、6着と買うわけです。
気に入らなければ返品すればいいんですから。
まぁ自由に返品が可能だから、っていう理由だけじゃない、とは思いますがね。
まだ日本はそこまで進行してはいませんが、一部の靴の通販なんかは返品自由となってい
ます。
試し履きできない通販だから、めぼしい靴を10足くらい買って、家で試してから合わないもの
を返品するという方式です。
行きも帰りも運賃はタダです。
不思議な商売です。
こうやってEC通販を中心に送料無料がだんだん浸透してきています。
そこへ返品自由が新たに浸透し始めたらどうなるんでしょうかね?
アメリカみたいにバンバン買い物する人が増えるのか?!
それともバンバン、お店やメーカーが倒産するのか?!
怖いですねぇ。