「人はまた現状をもって常態なりと誤解して、その変遷を指導してみようとする念慮がなかった。
政治にも経済にもすべてこの病がある。諸君はある好機会において、この自ら作った鳥籠みたようなものの中から、羽ばたきをして飛出す練習をせられたらよかろうと思う。」
(柳田国男、「旅行の進歩及び退歩」)
以前はこうだったけど、ああやって変化して、いまこうなったなんて話をすれば、ふ~ん、という反応で関心などなかなかもってもらえるものではない。過ぎたこと、過去のことはたったただいまのこうなっているということに比べて格段に話題性が低いのかな。なかには歴史好きもいるけれど。
しかしそれはたしかに鳥籠にいるみたいなものだな。そこから飛び出そうとすれば、鳥籠のような現在のありさまをいつに変わらぬ姿と思い込む病を治さねばならないか。
歴史好きのほうが未来に羽ばたけるのかもしれない。