懐く「自分になづいて来たと思つたのは、飛んだお門違ひの己惚(うぬぼれ)ーー」(中里介山、『大菩薩峠』)ここでなづくとは懐くのことで、なつくこと。慣れ付いて親しんでくださるわけ。人様でもペットでも懐いてくれていると思うのはたいがい、じぶんの自惚れだな。それを知らされる残念な時がくるものだ。じぶんがお門違いであったと気づかせていただいただけでもありがたいと思わねばならないか。