なくすは早い松「さやうさ、なくすは早い物、一文の銭もあだおろそかには設(もうか)りませぬ。おまへがたもお若いが、銭はつかひなさるな。金罰(かねばち)があたる。(式亭三馬、『浮世風呂』)収入がなくなって貯えを取り崩しはじめると、カネが見る見るなくなる現実。たとえわずかでもよい、日々、月々に入ってくる収入のなんとありがたかったかということ。余程の蓄財があれば別だが、中途半端な貯えは意外にはやくなくなり頼りにならない。死ぬまで収入の途を探さねばならんな。