決着の値段「面蔵 相州には名鍛冶も数多(あまた)ござるが、此の短刀などは拙者が鑑定では、先づ村正と言つてもよい作でござる。して直(あたい)は何程と申すのぢやな。 与三 精々働きまして決着の直段(ねだん)が、五十両でござりまする。」 昔はあたい(値)に直の漢字を当てた。値段も直段。直の反対は曲。曲はまがって偽りを表すようだが、直には間違いない正しさの意味あり。 正当なる物が決着の正当なる値打ちを定められる。