彼女は若い頃、1つ年上の男に夢中だった。

彼は意志が強くて、カリスマ性があって

魅力的な人で、偶然飲み会で席が隣になり

話しが弾んで意外だったと。

彼女は自分で自分のことを地味と言っています。

こんな私と彼みたいに華やかな人が

話しが合うなんてと。

そんな事はありません。

まあ、敢えて言うなら和風な雰囲気かと。

次に2人で飲みに行く約束を

その場でしていたとは驚きです。

展開は見えているかもしれませんが、

彼女は彼とその最初のデートで一夜を

共にしてしまうのです。

一夜限りの関係という事です。

厄介なことに、体の相性が良かったために、

彼女がやっと気持ちを

切り替えらそうになった時

その男は彼女を誘いまた関係を持ち、

そんな事を何度も繰り返していました。

こう言うのを腐れ縁って言うのでしょうか。

男は自分に入れあげている彼女に警戒しつつも

体を欲しくなってしまう。

彼女はもうやめようと思っても

彼に求められると、気持ちよりも何よりも

体が反応してしまう。

彼女は彼と静かに唇を交わしている時に

彼の唇の柔らかさや、

2人の唇が溶け合って境界線がなくなるような

快楽に身を任せ、

共有しているのは、今この瞬間の快楽だけ、

そう思ったと。

愛しているのに愛されていないことも

わかってる。

でもそんな事はもうどうでもよくて、

ただただこの瞬間に飲み込まれてしまいたいと。

そんな事を思う自分やその状況に絶望感を

感じながら、同時に全身で感じる

その至福な快楽に流され飲まれていくことに

酔っていたと。


彼と縁を切ってから彼女は一時期、

ちょっと狂っていた。

少なくともそう見えた。

それまで、男性関係には慎重だったのに、

彼を忘れさせてくれる男を探していた。

そんな事をすればするほど、

彼の代わりなどどこにもいない事を

思い知るだけなのに。

他の誰かを探すならいいかもしれない。

けれど他の誰かに彼を求めたら、

その人が彼ではない以上、不毛な事なのに。

結局、彼が自分に残した強い痕跡を

消してくれる人は居ない事を確認して

彼女の旅は終わる。

全ての事に意味があるならば、

彼女にとって彼との出会いの意味は

なんだったのか?

彼女はその答えをみつけたのだろうか?