ドラムスって後ろにいますやね。
リンゴスターもチャーリーワッツも後ろにいますね。
ポールやジョンの背中を、ミックやキースの後ろ姿を見ながら叩くのがドラムスですね。
そうなんですよ、打楽器というかリズムを取る楽器は後ろにいるもんなんですよ。


そこへ行くと、わたしらの編成は打楽器が前なんすよね、お囃子さんたちは、僕らの前に座っています。
そう言うもんだと最初から思っているので疑問も持ちませんけどね。
やりづらくないかなーって思うんですよ。
「慣れてますから」
とかね、言うんですけどね。

でもね、
スタジオで録音するときとかね、ラジオとかCDとか、大抵この並びではやりませんよ。
向かいあってまでしませんが、アイキャッチできるくらいの横とか、L字型になってやったりします。

ということは、前後の並びは決してやりやすいものではないと言うことなんですね。


この写真は、後ろから見た前に座ったお囃子さんたち。
なかなかリアルに後ろ姿でしょ。
当たり前だけど。
つまりお囃子さんたちは、全く僕らのことが見えないということですよ。
気配だけなんですよ。
そんな中でピタっと合わせていくんですからね、すごいもんだなーって。

演奏を聴いてもらう、良い演奏を聴かせたい、と思ったら、実はこの並び方ではないのです。
だって録音するときこうではないもの。
これすごく不便だし、良い演奏から離れてしまってますよね。

でも実はここがスゴイとこなんです。
様式美とでも言いましょうか、見た目のカッコ良さとでも言いましょうか。
カブいてる間にこうなってしまったんでしょーが。

演奏を「聴く」だけではなく「観る」も入ってるんです。
「観る」方が多いかもしれない。
だって並び方に留まらない様式美がたくさんありますもの。三味線の構え方、お唄の方の扇子の取り方、譜面のめくり方、鳴り物の構え方、打ち方。
全てが様式美なんです。

つまり、カッコ悪いのがダメなんです。
だらしがないのはいけないのです。
カブいてると言う中の線なんですね。
この線がとても大事。

だから舞台が好き。
みんながピリっとしてるから。
で、このピリっとしてることで研ぎ澄ますのです。
アイキャッチできないから。
研ぎ澄ましてるんです。
立三味線と立鼓、太鼓、大鼓、笛。
前と後ろで研ぎ澄ましてるからピタっと合うんです、合わせることが出来るんですね。

演奏が終わり幕が降りると、お囃子さんたちが後ろ向きます。お互いに「ありがとうございました」と言い合うんです。
この時の至福感がたまらなく良いのです。
みんな一緒に山登りして無事に下山したみたいな(山登りしたことないけろ)。
達成感っていうのかな、「やったーー!」って感じ。

今度いつ登るーーー?
みたいな。