何度繰り返せばわかるのか







それは解るまい







当の本人ですら、当事者ですらわからないのだから








一体どこまで墜ちれば
冷蔵庫から納豆を取ろうとしたところで目が醒めた。


もはやそれしか覚えていない今日の夢。






となりには女の子が背中を向けて眠っていた。



そうだ、なにかご飯を食べていた、白いご飯とおかず、それでどうも二杯目に納豆をたべたくなったのだった、確かそんな気がする。


時計はまだ6時前で、もちろん朝の、もう一眠りしたかったが、トイレに行きたくなって、用を足しベッドに戻るとなかなか眠れなかった。



独り暮らしの狭いベッドに二人で寝るのはとても窮屈でしんどい、今の僕にとっては、もちろん時と場合ととなりに寝てる女の子でその広さはかわってくるのだが、気持ちの問題として、とりあえず今日のベッドは狭すぎたのだ。





ここでいつもの思考、いつまでこんなことを続けていくんだろう、もうこりごりだぜまったく、あー、寝てしまおう忘れてしまえ、浅い眠りが迎えにくる。


なんどか夢を見ているととなりの子が擦り寄ってきて朝が始まる。




いつまで続けるつもりなんだまったく。

終わらない討論に見切りをつけ欲望にまみれて昼がくる。




そして何もない、何もない午後がはじまっていく。



そんな四月の休日。





何かが変わりだすのはもっと先のことだと思っていた。



ひっくり返った洗濯物をそのまま干す僕を見て君は言う。



















「何でそのまま干すのよ」














僕はどうせたたむ時なり、履く時着る時に直すのだからいいじゃないかと言うと、














「あなたがもしこの洗濯物をたたんだり、履いたり着たりする前にひょいとこの世界から消えてしまったら、この洗濯物たちはずっとひっくり返ったままなのよ?
ひっくり返ったまま干され続けるのよ?
それってとても惨めな気がしない?」














「もしそうなった時は君が彼らを救ってやってくれ、そして世界中のひっくり返ったまま干される洗濯物たちに歌でもうたってやればいいさ。」








「どんな歌よ、それ。」








「洗濯物の歌だよ、ひっくり返ったまま干され続ける洗濯物に対する気持ちを込めた洗濯物のための歌。惨めだかわいそうだと思う君の気持ちをそのまま歌にすればいいんだ。」










「わたしにできるかしら?」










「さぁ、どうだろうね、僕にはできないけど。ひっくり返ったまま洗濯物を干すことに慣れすぎてしまっているからね。」











「そうかもしれないわね、でも今からでも遅くないと思うけど。彼らを今救ってあげたらどうかしら?少しは世界からひっくり返ったままの洗濯物が減るし、あとの面倒が減るわよ。」


















「彼らはすでにひっくり返ったまま干されているんだよ、それをひっくり返すということはすでにあるそれからひっくり返すということになる。彼らはすでに干されているんだ。わかるかな?」


















「あなたって頑固ね全く。」














「そうゆう気分なだけだよ。」






「どんな気分よ?」








「ひっくり返ったままの洗濯物をひっくり返したくない気分」
















「ふぅん、そうゆう気分の時もあるのね。」





「そう、そうゆう気分の時もあるんだ。君はないの?」













「うーん、そう言われるとあるかもね、脱いだ服をそのままにしたい気分とか使った食器を洗いたくない気分とか。」










「そう、きっとそういった類のものだよ。ほら、そしたらあれもそれらしく見えるだろ?ひっくり返ったまま洗濯物を干したい気分だったんだって。」







「そうかもね、確かに。」











「まぁあのまま干され続けていたら惨めに見えてくるだろうけど、それはどんな洗濯物にも言えることだろきっと、たぶん。」













「その時はわたしが彼らのために歌ってあげればいいのね?」












「まったく、君は素敵だね」