『質屋』・・このロッド・スタイガーを見ずして・・・1968年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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今年77歳の映画好きでございます。

懐かしい名画、最近の気になる映画のことを
日記形式で書いています。
戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。

 

 

      『質屋』

 

 

          

 

    『波止場』、 『ドクトル・ジバゴ』、『夜の大捜査線』の順で見ていましたが、


ロッド・スタイガーさん・・

『質屋』を含めてとても四人が同じ役者だとは思えません。


『夜の大捜査線』で大ファンになってしまったわたくしです。その時に

スタイガーさんのことを調べて、(質屋)という作品を知ったのですが


ン十年経って、やっと鑑賞できました。

たくさんの方がすばらしいレビューを書いていらっしゃると思いますが、

 

わたしなりに感じたことを素直に書いてみまする。

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草原で蝶々を追う少年と少女、母親は川で水を汲み木陰で涼む。

年老いた母はみんなを見守っている。

父は二人の子供を抱き上げた時、父親は少女をずるずると降ろしてしまった。

何が起きたのだろう??


画面は変わって、日本でいうところの関西の文化住宅をちょっと大きくしたような

集合住宅の一軒の庭で、昼寝をしているあの父親の年を取った姿が・・・・



男がウエストサイド辺りへと車を走らせるシーンで初めてクレジットが出る。


軽快なクインシージョーンズのジャズに乗せて・・・・ブルックリンあたりか・・着いた先は彼の店・質屋である。

男はソラ・ナザーマン、質屋の主人である。


やってくる様々な客は自分にとってのタカラモノを質に入れるわけだから

出来るだけ高い値で貸してほしい。が、ソラは極めて事務的ににこりともせずに

最低の価格でしか引き取らない。がっくりくるが、また来ると客は皆言う。



何かで優勝したトロフイー、

一対の燭台を持ってきた黒人のオバサン

安っぽいランプを持ってきた黒人のおじさん。

携帯ラジオは音が出ないシロモノ

盗品を持ってきた三人組・・

幼児の靴一足・とてもいい品らしい。



主なキャスト


①主役の質屋の主人・・ソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)

  家のローンを負担しながら妹の家族と暮らしている。

元大学教授でユダや人。アウシュビッツで妻と子供を殺され自分だけが生き残り

そのトラウマと心に受けた傷で人と関わって生きていけない状況。

 



②質屋の手伝いの若者・ヘズス=ジーザス(ハイメイ・サンチェス)

 店の隣のアパートに母親と住んでいる。悪い仲間とは切れてソルを尊敬しており



 質屋経営のことを学びたいと思っているし彼を師匠と読んでいる。

 が仲間の方は切れたとは思っていない。 
 

恋人は黒人

③ソルに支援を願いに来た地元ユースセンターの女性職員

 マリリン・バーチフイールド(ジュラルデイン・フイッツジェラルド)

ソルの過去を知り、関心を持った。

この方、嵐が丘でイザベラの役どころでした。


④ソルの店と頻繁に取引しているロドリゲス(ブロック・ピーターズ)

 贅沢な暮らしをしているが裏であくどいことをしているこの界隈のボス・

質屋を隠れ蓑にしている模様。彼はアラバマ物語のあの方。。。


⑤ソルが時々訪問する・・亡き親友の妻とその義父メンデル(バルーク・ルメット)

収容所時代に逃亡を図った親友の父で、思い違いをしていていつもソルを罵倒するが

ソルは高ぶる感情を押し殺して黙って聞いている。


①から⑤で大体のお話の骨格はわかると思います。



下町の貧しい地区にあるこの質屋には、数ドルの現金を借りるために

いろんな人々がやってくる


店はまるで収容所を思わせる金網を張り巡らしている。


彼らはおそらくクレジットにも出ないような俳優さんかもしれないが

とてもリアルで切れ味のいいセリフと確かな表情の演技でキャラクターが生き生きと

表現されている。


ソルはドイツにいた時には大学教授だったがユダヤ人というだけでナチに

家族ともども捕らえられ、口には言えぬ経験をしていてそれが今でもトラウマで

何かにつけ脳裏によみがえり苦しんでいる。



現在とその過去が何かのきっかけでフラッシュバックで蘇る。

この対比、タイミングが素晴らしい。



街を歩いていて、犬の鳴き声がすれば、ドイツ軍の飼っていた犬が頭をよぎり、

金網の向こうで若者が喧嘩をしていると、彼の親友が金網の向こうで血を流して

金網にぶら下がり逃げようともがいている姿そして殺される場面がよみがえる。

そのフラッシュバッグの入り方が独特でハッとするのですね。

淡々とこなす仕事の中で頭の中にはいつもあの過去の出来事があって、人と関わりたくないのです。



電車に乗っていて、隣の車両に移ろうとして、ドアを開けるとそこはアウシュビッツ行きの列車の中

大勢の人の中妻は向こう、男の子を抱いていたソラは人に押されて息子を放してしまう。、

圧縮死するんです。このフラッシュバックはきつい。

 

ヘズスの三人の仲間が質屋に強盗に入ると言う。

 

恋人はお金なら自分が稼ぐからやめてくれというがその意志はないよう。




 

恋人は、自分が少しでもお金を作ろうとソラの店にやってきてソラに自分を買ってくれという。

服を脱ぎだすと、ソラは収容所で妻が兵士に暴行される場面を思い出し顔は苦渋に歪む。


ベニスの商人ならぬユダヤ人が質屋を営むというのも皮肉だ。


ソラも時には雄弁にしゃべることがある。吐き出すように。

ソラはマリリンに言う。

”もはや、私には怒りや復讐心もない。もう感情に振り回されることもない

平穏に暮らしたいだけだ。”


マリリン”でも苦しんでいるわ”

ソラ” あなたが邪魔するからだ!!

     わたしの人生に首を突っ込むんじゃない。”


ソラはロドリゲスへの上納金のことでもめるが、彼が売春宿やその他のあくどいことを

隠すために質屋をソラに任しているとは知らなかった。また悩みが増えたソラ。

そうするうちにヘズスの仲間が強盗に入る。手引きをしたヘズスは銃だけは使うなと

念を押すが・・・・・

ラストの叫びにすべてがある!

 


この物語はソラが人を信じられず、お金だけの人生そして過去を引きずって生きているところから

人の心を取り戻すまでを描いている。

 

いやあ、スタイガーさんの演技には圧倒されました。

画面は結構、望遠も使っているし、流す街のロケ風景もいい・

リンカーンセンターや、アポロシアター前を歩く・・

 


音楽もノリがいい・



 ベルリン国際映画祭の主演男優賞。     
 

 

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