『忍ぶ川』・・純愛と故郷の風土への魂の回帰を描く・・ 1972年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画のことを
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戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。


 

 

《忍ぶ川》

 

 

 

栗原小巻さん

 

こんばんは。いつもご訪問ありがとうございます。

 

吐夢のページではここんとこ『配達されない三通の手紙』フイーバーでしたが

 

どうしてこの作品、こんなに人気があるんでしょう??ねっ。

 

 

吉永小百合さんファンが

 

サユリストと呼ばれた時代、コマキストと呼ばれ比較されたのが

 

栗原小巻さんであり、

 

彼女の人気も当時は相当のものだったように記憶しています。
 

その小巻さんの代表作

 

《忍ぶ川》

 

 

1970年以降、

 

小百合さんが映画で活躍されるのに対し、小巻さんは主に舞台で活躍されている。

 

小巻さんは

 

劇作家の父を持ち、

 

幼少の頃はヴァイオリニストを目指していたらしい。訳あって断念。その後バレリーナを目指すも演技力が必要と言われ

 

俳優座養成所に入所。

 

第15期生。

 

15期生というのは

 

花の15期生と言われている。その同期の役者さんたちは今殆どが第一線で活躍されたし、されている。

 

 

小野武彦

 

河原崎次郎《故人》

 

柴田侊彦

太地喜和子《故人》

高橋長英

地井武男《故人》

夏八木勲《故人》

 

浜畑賢吉《故人》

林隆三《故人》

原田芳雄《故人》

前田吟

三田和代

村井国夫

竜崎勝などなど。

 

さて、毎日映画コンクールで主演女優賞に輝いた

 

小巻さんの代表作。

 

 

早稲田大学に通う学生哲郎と

 

上野谷中に近い山の手にある学生寮の近くの

 

”忍ぶ川”という小料理屋で働いている志乃という娘の

 

恋物語である.

 

しかし

 

二人の恋愛が本筋ではあるが、

 

単なる恋愛映画ではなく

 

日本のまた  人間の

 

心のふるさとへの

 

潜在的思慕を描いた秀逸な作品である。

 

東宝設立40周年記念作品。

 

にもかかわらず、モノクロ、そして  映画の斜陽を

 

感じ始める時代の中での見応えのある佳作である。

 

三浦哲郎の第44回芥川賞受賞作であり、

 

熊井 啓監督作品である。

 

お話入ります。

 

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哲郎は学生寮の近くにある小料理屋忍ぶ川で働いている志乃と

 

お店で知り合ったことから

 

急速に親しみをましてゆく.
 

 

 

 

仲良くなった二人はある休日に深川へ行く。

 

 

 

そこは二人にとって

 

共通の思い出の場所であった。

 

まず行った木場は

 

哲郎の兄が働いていて、月に一度学費を

 

貰いに行っていたところ。

 

 

がその兄が親戚達からお金を借りるだけ借りまくって行方を

 

くらましたことから哲郎一家の運命が狂ってしまった。

 

借金騒ぎの件で秋田の田舎に住む哲郎一家の長兄と次姉は

 

そのことがきっかけで自殺する。

 

遺された父と母と一番下の目の悪い姉の三人は

 

旧い暗い家の中で息を殺してひっそりと暮らしていて

 

頼りと、希望は、

 

哲郎だけという重いものを背負ってしまった哲郎の

 

これからの人生は厳しい。

 

一方、志乃は洲崎遊郭の中で育った。

 

 

父はインテリであったが射的屋の娘に熱をあげ

 

そこに入り込んでしまい、

 

志乃が生まれてからも一生を遊戯場のオヤジで終わった。

 

父はその後栃木の村へ疎開したが、古寺のお堂に棲みついて

 

志乃の仕送りと弟の働きでほそぼそと余生を送っていた。

 

志乃も哲郎も正直に洗いざらいを話し合った。

 

そんな境遇が二人の心をいっそう深く強く結び付け

 

ひとつの

 

運命というか共通の運命の糸に繋がったような気がしたのだった。

 

志乃の縁談話やいろいろあるなかで、志乃の父が危篤になり

 

志乃は哲郎に父の死の前に逢って欲しいと一緒に栃木へ行く。

 

父の死後、志乃は哲郎の元へ嫁いでゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たい目を浴びせていた姉も次第に打ち解けて行った

 

一家五人だけの結婚式であった。

 

初夜の晩も秋田は深い雪で冷えた。

 

秋田では夜、寝床に入るのは素っ裸だそうである。

 

その方が温かいというその地方の風習であった。

 

 

二人の運命がひとつに重なる...

 

がそれは二人がやっと安らぎの場を

 

見つけた夜に他ならなかった。

 

このシーンは当時センセーショナルであったが、これほど

 

美しく感動的に描かれたシーンはそれまでになかったものだ。

 

これは単に二人が結びついたというものではなく、

 

ただの愛の証だという単純なものではなく、

 

終に辿りついた魂の

 

棲み家であったのだと思う。

 

不幸といえば不幸な身の上で落ち着く場所のない二人であったが

 

秋田のこの土地、風土への回帰であった.

 

重い鬱積したものを抱えた二人が安らぐ

 

雪のふるさとへの回帰が、全てが このシーンに

 

凝縮されていたように思えてならない。

 

 

ベストキャストでしたね・

 

小巻カラーが最も出ている作品だと思います。

 

先だって書いた『越後つついし親知らず』でもそうなんですが、

 

豪雪・・・というのは厳しいけれど 逆に人を温かく包み込むこともあるのだなと

 

思った作品でした。

 

 

 

製作  東宝  

1972年度作

監督  熊井 啓

原作  三浦哲郎

 

キャスト

 

 加藤 剛

   栗原小巻

   岩崎加根子

 

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