(女舞)・あの時 松竹大船映画絶頂期・・1961年度作
岡田茉莉子さんが日舞の師匠を演じ、佐田啓二さんが能楽宗家の若太夫と言う役で共演。
華麗なるカラー映画と評判をとった作品。
題名は(女舞)ということは、男舞があるってこと??]
能楽用語辞典を開いてみると、
【おとこまい】とは、
【舞の種類のひとつ。
「小袖曾我」の曾我十郎・五郎や、「七騎落」の土肥実平など、
現実の男性(多くは武士)が舞う舞。
テンポも速く、男性的に颯爽と祝賀の心をもって舞われることが多い。
笛・小鼓・大鼓で奏される大小物(楽器編成が笛・小鼓・大鼓のもの)だが、太鼓は入らない。】とあった。
じゃあ能楽とは??
【能楽とは、能と狂言を合わせて呼ばれる日本の舞台芸術で、能は能楽の1つです。】とありました。
そこんとこ踏まえて本題に入ります。
女性の気持ちを解そうとしない冷酷な男を演ずるのですが、
鑑賞する前に、やさしい印象の佐田さんにこんな役ができるのかな?という
思いがありました。
息子さんの中井貴一さんならやっちゃうでしょうけれど・・・とまあ思って
とにかく鑑賞することに・・・・・んで、 ニヒルでしたぞ。
物語は簡単に・
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浜村流の若い舞踊家・浜村千弥(浜村せんや・・岡田茉莉子)は、自分の舞に物足りなさを感じ、
能楽宗家の若太夫である西川昌三(佐田啓二)について能の稽古を始めた。
西川は最初、教授を断ったが、千弥の熱心な頼みに負け、引き受けることになった。
しかし、彼の稽古は想像以上に厳しくまた、態度は冷ややかだった。
千弥は日本の古典をもう一度探ってきたいという意欲に燃えていた。
西川は天才と称せながらも、女性関係についてはとかくの噂が絶えなかった・・・
千弥も西川の家に車を横付けして度々訪れるのを目撃していた。
その女性は元華族の五条克子(杉田弘子)だった。
だが、千弥に対してはそんな気配は見せることはなかった。
だが、千弥の方は稽古を重ねていくうちに、西川の芸の冴えに益々驚嘆すると共に、
西川という男の不思議な魅力に取りつかれていくのを止めることが出来なくなった。
千弥が、舞った舞の意見を聞くべく西川の家を訪れた時、
西川は千弥を五条家の能衣裳の展示会に誘う。
その帰り、西川は千弥を誘い一夜を共にするのだった。
千弥は日に日に西川にのめり込んでいき、
一方で神崎(仲谷昇)という大学の先生との見合い話も進む。
苦悩の日々をおくる千弥。
その間に弟子の麻弥(岩下志麻)と神崎は少し親しくなるが・・・
間も無く西川は本家から波紋になり金沢へ移っていく。
何かにつけて千弥の相談相手だった布川教授(宮口精二)からその話を聞き、
悶々とする千弥だったが、西川への思いを断つ決心をし、神崎と結婚をする。
そして、千弥は【葵上の舞】を舞う日が近づいてきた。
参考のためにと布川教授が用意した西川家の能舞台で、
面みを被った西川が千弥の前で舞う。
西川は体を壊していて、東京に戻っていたのだ。
やがて千弥の舞の日、
胸を患っていた西川は死んでしまう。
一人舞う千弥の見事な舞が
西川の旅立ちを彩っていた???
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小津作品に見る茉莉子さんはハイカラな役が多いですが
本作品では嫋やかでやさしい女性を演じています。
舞踊の名取でもある茉莉子さんの舞ががっつりと見れてラッキーです。
能の勉強を重ねた岡田茉莉子の舞台シーンも素晴らしいですが、
脇役陣を含め全体が実にしっかりと描かれているのは見事だと思います。
脇役は豪華でほくほく!!北林谷栄さんが佐田さんの隠れ家のばあやさんで出とるよ!
この隠れ家で二人が密会するんです。
谷栄さんの孫が二木てるみさんダス。
その上、尾上梅幸さんの 【娘道成寺】がばっちり見れます。
題名のとおり、舞、舞、舞のシーンが多い。
舞の衣装もりっぱ!!
稽古場面、実演場面とたっぷりと楽しめる豪華さです。
男女、師弟、父子が縺れにもつれてなかなかに地獄でありますなあ・・・
今、こんな嫋やかな大人の女性の役をするとしたら今の女優さんだれがいるかなあ??
昭和の映画全盛期の頃の作品は、こういった上等な作品が当たり前のように封切られていて、
この作品も見応え十分な作品です。贅沢だなあ。
キャスト
佐田啓二
岡田茉莉子
岩下志麻
千之赫子
杉田弘子
宮口精二
北林谷栄
二木てるみ
尾上梅幸
スタッフ
監督 大庭秀雄
原作 円地文子
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