ちょっとお茶一服・≪西郷札≫・ 松本清張デビュー作品観ました・1991年度作 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。

  

 

 

 

 ちょっとお茶一服・・・
ドラマ ≪西郷札≫   1991年度製作  


こんばんは。いつもご訪問ありがとうございます。
    
松本清張作のドラマ特集が放映されている。

 

映画ではないので数本選んで見てみたが、その中でも興味をそそられ

 

見てみたのが、清張のデビュー作をドラマ化したもの。

 

 

西郷札という古い紙幣にまつわる純愛物語。

 

当時、つまりこの作品が発表された頃の時代として

 

多分小倉の朝日新聞ではないかと思うのですが、そこで企画された

 

<九州二千年文化史展>の出品リストに西郷札と覚書という

 

品目があった。

 

その覚書を書いたのが、西郷札の発行に携わった 樋村雄吾という

 

人物。その覚書をベースに構成した純愛物語を清張は執筆し、

 

直木賞候補になったのである。

 

そして次作が≪ある小倉日記伝≫で芥川賞を受賞した経緯がある。

 

この頃からすでに彼の作品は純文学性と推理小説の分野の両方を兼ね備えた

 

極めて稀有な作家と評判をとるのである。

 

 

この作品は実在した西郷札をネタにした実に巧みな構成の短編。

 

それがどんなドラマになっているか非常に興味深かった。

 

新聞記者の杉山卓二が宮崎支局の田中真知子から送られてきた西郷札と覚書を追って

 

宮崎に行くところからドラマは始まる。

 

そして・・・その物語は・・・・

 

キャスト

樋村雄吾      緒形直人
樋村季乃後に塚村季乃      仙道敦子
樋村喜右ェ門    川谷拓三
樋村さい      中田喜子
幡生粂太郎     前田吟
塚村圭太郎     風間杜夫
西蓮寺住職     大滝秀治
杉山卓二      蟹江敬三
田中真知子     古村比呂
 
雄吾の父植村喜右ェ門はさいという女性を後妻にした。

 

さいは季乃という女の子を連れ子した。

 

二人は兄妹として暮らし始めるのだが、季乃は雄吾に対する気持ちを率直に

 

態度で表すが、雄吾は寡黙で心の内を決してみせようとはしなかった。そして

 

 雄吾は西南戦争で西郷隆盛の反乱軍に加わるべく、季乃に別れも告げずに

 

植村の家を後にする。

 

雄吾は西南の役に参加。

 

雄吾は紙幣つくりに携わることになった・

 

 

薩摩軍3万に対して政府軍は6万。

 

政府と薩摩郡の装備の近代性にも格段の差があった。

 

西郷らは次第に劣勢に追い込まれ、鹿児島を退却。

 

熊本方面からさらに宮崎方面へと向かった。

 

このころには薩摩軍は軍資金にも窮するようになり、

 

ついに独自の紙幣を贋造するに至った。これがいわゆる「西郷札」である。

 

発行総額14万円余り。種類は10円、5円、1円、50銭、20銭、10銭の6種だった。

 

これを使って、必要な物品を調達しようとしたのだった。

 

戦は激しくなり

 

銃弾が樋村雄吾の右肩を貫くが、幸運にも生き延びることが出来た。

 

 

雄吾が素封家の庇護を受けて、一年二ヵ月後に故郷に帰ってみると、

 

戦火で家は焼かれ、父親は亡くなり、

 

義母と義妹季乃(すえの)は

 

行方不明になっていた・・・。

 

明治11年7月・・・東京

 

ある事件に巻き込まれ牢屋にぶち込まれる。

 

そこで知り合った人物との出会いが雄吾の身の上を変えた。

 

 

雄吾は、その人の世話で人力車を挽く車夫になる。

 

 

ある夜、雄吾は一目で高級官吏と分かる男を乗せる。

 

長い塀の多い屋敷町の一画で男をおろした。

 

男を迎えに門の外に出てきたのは、行方不明だった季乃だった。

 

が季乃は気づいていない。

 

暗い中でぼんやりと灯された提灯の明かりの中から丸髷を結った白い顔を

 

見た瞬間の雄吾の驚きは例えようもないほどだった。

 

季乃が東京にいる、人妻となっているーーーー

 

雄吾は車と共にきびすを返して走って走ってそこから出来るだけ

 

遠くに逃げた・

 

家にに帰り着くなり、瓶の水を柄杓で慌ててすくいむさぼるように飲んだ。

 

季乃が生きてこの東京にいた・・・・・!!

 

改めて季乃と会った雄吾。驚く季乃。

 

それから、季乃と雄吾は塚村に隠れて何度も会った。というより

 

季乃の一方的な段取りで会うのだが、雄吾とて季乃を嫌いではなく

 

むしろあの時行方不明になっていなかったら・・・という思いで

 

今は人妻である季乃と会うのは複雑な思いではあった。

 

 

塚村に自分たちが兄妹だと改めて会うことになったが

 

普通の兄弟愛とは違うものを直感で嗅ぎ取った嫉妬深い塚村だった。

 

 

 

車夫になるように取り計らってくれた恩人からある日

 

雄吾は

 

幡生粂太郎という人物を紹介された。その人は

 

ある頼みを聞いてくれという。

 

その頼みとは

 

季乃と雄吾が兄妹であることを知り塚村に助けてもらいたいことがあるので

 

仲介してほしいというものであった。

 

”先日 九州の友人からもらったものです!”と言って

 

西郷札を出した。”ご存知ですよね”

 

”こん札を作っちょったとです。”

 

”わたしに何をしろと??”   ”妹さんは塚村清太郎の奥さんだとか

 

大蔵省にも信用の厚い塚村に西郷札の買い上げを手助けして欲しいと働きかけては

 

下さらんだろうか?”

 

一瞬たじろいだ雄吾だったが引き受けた。

 

 

話を持っていくと塚村は意外にも引き受けてくれ、話だけはしてみようと

 

言ってくれた。塚村の脳裏に雄吾を窮地に追い込む飛んで火にイルなんとやらの

 

話が舞い込んだわけだ。

 

一方、

 

興信所に頼んで妻季乃の素行を追っている塚村。

 

雄吾を目の前から消してしまいたい塚村はある画策をする。

 

塚村は、紙屑と化していた西郷札を政府が補償回収するという嘘の情報を

 

雄吾に伝える。

 

 

雄吾と彼の恩人らに買占めをさせて、全財産を失わせることを企てるのだ。

 

塚村がそれとなく流した西郷札買上げの風評により

 

宮崎では西郷札の値が上がっていたために、

 

塚村の目論見通り、彼らは全財産を投じることになるのだった。

 

さらに塚村のやり口はそれだけではなかった。

 

ーーーーーー

雄吾は**味方の発行せし金券ひいきの余りに誑(たぶらか)したるにや

 

或は金儲け欲しさのためにや

 

今の処分明せざれ共、

 

そもそも虚言を以って

 

住民共、多勢を欺すは重罪につき

 

同人が東京に舞戻る節は直ちに逮捕するやう

 

警視本署にて御用意ありと。**と新聞に報じられることにーーーー

 

   なったのだ。

 

怒り狂った雄吾。自分は仲介しただけなのになんでこんな目に合わされるのだ・

 

塚村にとっては、何でもいいのだ。塚村は雄吾の存在自体が許せないのだから。

 

結末を記していると思われる覚書の終盤が破り取られていて

 

結末が分からないということで

 

小説も塚村や雄吾や季乃がどうなったのか明かされることなく終っているはず。

 

ドラマでは塚村が雄吾によって刺し殺され

 

雄吾と季乃はどこぞに向けてふたり逃亡したようである。

 

推理小説とも恋愛小説とも取れるこの作品の結末は読者が想像するしかない

 

 語り手が西郷札にまつわる悲劇が記された覚書を入手したという発端から、

 

その覚書が最後の数頁破棄されていたという結末までの構成は

 

さすがで、これは推理小説でもある。

 

西南戦争・新政府の歴史的記述、義理の兄妹の慕情、軍票買い上げで一攫千金を狙う亡者の妄想、てんこ盛りの内容がドラマの厚みにも

 

 

なっている。

 

清張がこの一作品で終ったとしても

 

小説家としての存在は後世に残ったと思われます。

 

明治政府は一銭の価値も認めなかった西郷札だが、

 

熱烈な西郷隆盛びいきには別の値打ちがあるという。

 

また、歳月の経過とともに少しずつ骨董的価値も生じていった。

 

この「西郷札」に目をつけ

 

それを膨らませ小説として、懸賞小説に応募したのである。

 

これによって、社会派推理小説の大御所となる松本清張。

 

西郷の贋札は、70余年の時を経て、日本の文壇史に意外な貢献をしていたのだ。

 

海音寺潮五郎、司馬遼太郎、池波正太郎、多くの作家が発表する歴史小説の

 

きっかけを作ったといってもいいと思います。

 

緒形直人さんこのとき24歳。仙道敦子さん22歳。

 

ドラマが制作された2年後にお二人は結婚されています。

 

 

子役から活躍された仙道さんは貫禄十分の演技で

 

引退されていたのがもったいないくらいです。

 

五社秀雄監督作品のころはすでに大物女優の出現と騒がれたものでした。

 

立ち姿が非常に美しく和の振る舞いが板に付いた方ですね。

 

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