≪濹東綺譚≫・銀幕の女優さんたち40  山本富士子さん②  | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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 銀幕の女優さんたち  40 山本富士子②  ≪濹東綺譚≫

 

こんばんは。いつもご訪問いただきましてありがとうございます。

 

今夜は、御歳 87歳になられる山本富士子さん。

 

昭和25年のミス日本、大映にスカウトされるのはその3年後

 

富士子さんも若尾文子さんと同じくデビュー当時は長谷川一夫さんの

 

相手役でスタートである。

 

銀幕の美女①でも紹介しましたが、”金色夜叉”や”婦系図湯島の白梅”といった

 

新派っぽい作品がことのほか似合う女優さん。

 

その中でもわたしの好きな作品は 

 

   ”日本橋””夜の河””夜の蝶””彼岸花””白鷺””細雪”

 

        ”歌行灯” そして”濹東綺譚”

 

また、長谷川一夫さんの銭形平次の常連で女房お静の妹役がおきゃんで可愛くて

 

大好きでした。

 

とにかく日本人形のような美しさといえばこの方をおいて他にはいないでしょう。

 

さて、

 

女性を探し続けて余りある。

 

だけど、特殊な女性に

 

スポットをあて、その世界を描いている作家ーー永井荷風。

 

ここに武田泰淳が50代の時に書いた文章の中の数行を書き出してみる。

 

結婚によって安定できなかった女、

 

家庭によって守られていない女、

 

主婦としての地位を確立できなかった女、

 

一人の男の愛情だけに付き合っていられなかった女、

 

世のいわゆる”倫理”を無視しているような女、

 

安全な社会的な立場を築くことに失敗した女、

 

立ち止まっていられないで流れ行くことを喜んだ女、

 

男をないがしろにする女、

 

男からないがしろにされる女、

 

そういう女性を荷風は追い続けたーーーとある。

 

 

つまり時代の変化につれていろんな新しい女性のタイプが

 

出てくるわけだが、

 

その女性達を次ぎから次ぎへと描き出した荷風。

 

しかし突き詰めるとそのおびただしい数の女性達の探求にもかかわらず、

 

荷風の作品に登場する女性達は、

 

すこぶる限られたタイプの女性達に過ぎないかもしれない、

 

あまり沢山読んだわけではないが、

 

この種の女性ばかりが登場しているように思われる。

 

≪濹東綺譚≫

 

 

永井荷風は東京の街を散策するのが好きな人で知られている。

 

この作品もたまたま散歩にでてで通り雨のなかで出遭った

 

女とのことを散歩の途中のひとつの話しとして書いている。

 

隅田川の東つまり墨東のどぶの匂いのする

 

やぶ蚊の舞う汚い家に住む娼妓との出遭い。

 

小説では彼の豊かな東京の街の風俗、風景の知識を散りばめている。

 

一緒に散歩をしている気分になる、

 

街に詳しくはないけど、小説等で知ったその懐かしい風景。

 

荷風自身の随想みたいなものだ。

 

通り雨であったそのお雪という女性をクローズUP させて

 

創られたのが、映画ーー濹東綺譚ーーー

 

荷風に代わる男性は学者のようである、

 

家では新興宗教に凝っているヒステリーの妻と、

 

娼妓ではあるが優しく活発で苦労を表に出さず健気なお雪

 

その狭間でぐずぐずする男、この3人の話しとして

 

撮られている。

 

筋はまー別として

 

私にとっての原作の醍醐味はその東京散歩にあると思っている。

 

落語に夢中になり、歌舞伎に浸り、そのハイカラなファッション、

 

グルメぶり、コーヒー好き、そのライフスタイルは憧れであったし、

 

今でも憧れている。

 

その文章の中に出てくる地名を地図を広げて確認して楽しんだ。

 

せめてもと、その雰囲気を映画で楽しんできました。

 

小説の中のほんの一部を、女と男と妻との話しにクローズアップし、

 

明治の濹東のどぶ臭い中で

 

凛とした娼妓の生き方を、その雰囲気たっぷりに

 

見せてくれた。

 

 

荷風の作品はその江戸の、また新東京の匂いを感じる小説として

 

わたしは好きである。

 

そして自身が女性好きであったから探求は続いたのだろうし、

 

冒頭に書き出したさまざまなタイプの女性を手を変え、品を変えて

 

作品に登場させるのであろうが、

 

タイプはいろいろでも その日陰の立場の女性に焦点を充てることに

 

偏っていることも確かであろう。

 

 

そして面白いのは、

 

こういうはかない運命の女性、けなげで尽くす昔で言う良い女に

 

寄り添う男はどうしてこう優柔不断で、ほんと煮え切らないのか。

 

 

だからヒロインが美しく素敵で同情もする。

 

 

良い男に会いたいなら、こういう映画を見ても逢えない。

 

こういう映画でなく男の世界を描いた映画に良い男はいる。

 

やはり三船敏郎が終生演じたような男の中の男に会うことだ。

 

話しを元に戻して、

 

でありましてーー映画ー濹東綺譚ーーは

 

その情緒で見て欲しい作品です。

 

リメイクもされたようですが、ポルノまがいのような作品に

 

仕上がったようで

 

そう言う内容のものとは無縁の文芸作品である。

 

この映画、山本富士子と芥川比呂志、新珠三千代の3人の共演の

 

作品でれっきとした女性文芸作品にしあがっています。

 

浅丘ルリ子主演の舞台劇も見ましたが

 

富士子さんのしっとりとした情緒と品のある娼妓とは

 

比べ物になりませんでした。

 

富士子さんは綺麗過ぎる役もすてきだし、

 

 

汚れ役もまたいい。どんなに汚れ役をやってもどうしても品は隠せない。

 

綺麗な頃の富士子さん・・・・・

 

 

そして、

 

映画同様、永井荷風の世界もまた覗いてみてくださいませ。

 


製作  大映  1960年度作
監督  豊田四郎
出演  ランキングに参加しています。
 

 

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