コーヒーブレイク・≪樹木希林さんを偲んで・・≫  | 吐夢の映画日記と日々の雑感

吐夢の映画日記と日々の雑感

ご訪問ありがとうございます。
懐かしい名画、最近の気になる映画のことを書いています。

戦前のフランス映画が大好きです。

読まれて共感頂けたら、"いいね"を押してくださいませ。
励みになります。

         

                                         コーヒーブレイク
    

      樹木希林さんを偲んで・・

 

                                      

                                       

思えば彼女との出逢いはテレビドラマの<七人の孫>でした。

 

1964年のこと。

 

その頃、やっと普及し始めた水洗トイレの製造会社の会長である

 

明治生まれの森繁久弥さんをおじいさん、

 

大正生まれの息子夫婦と昭和生まれの孫七人の家族を

 

描いたホームドラマで、視聴率多分30何パーセントだかをたたき出した・・

 

と記憶する。

 

配役は息子夫婦に大阪志郎、加藤治子

 

孫には高橋孝治、長谷川哲夫、松山英太郎、田島令子、勝呂誉、

 

いしだあゆみ、島かおり

 

その家庭のお手伝いさんとして登場したのが樹木希林さんで

 

デビューである。その頃の芸名は悠木千帆さんである。

 

ちらちらと家族の間を行き来する姿は視聴者の眼には

 

明らかにインパクトを与え、

 

森繁氏と交わす会話は完全に喰っている状態で、たちまち

 

お茶の間の人気者になってしまった。

 

 

そしてそのキャラクターはアレンジしながらも

 

お亡くなりになるまで膨らみ

 

誰にも真似ることの出来ない唯一無二の大女優となられた。

 

そして演出の久世光彦さん、脚本の向田邦子さんをも世にだしたのである。

 

それまでの銀幕のスター女優さんたちは

 

同じ作品の主役を舞台や映画やテレビで競いあうことは当たり前だし、

 

また何の違和感もなかった。

 

しかし希林さんの演ずる役作りはとてもとても

 

誰にも出来るものではなく、個性を通り越した、映画界の 宝 といって

 

良いと思います。

 

人間への観察力と洞察力が並外れていて、それを

 

あたかも演技ではないように自然にやられるから

 

共演する俳優さんたちはどうしても霞んでしまって

 

やり難かったのではないかと思いますね。

 

 

その次にお目にかかったのが東映映画の佐久間良子さん主演の

 

<湖の琴>でした。佐久間さんの幼馴染の役で

 

ちょっとしか出演場面はなかったのですがよーく覚えています。

 

絣の着物の素朴な娘っこを軽ーーーく演じられていました。

 

 

そして吉永小百合さん主演のテレビドラマ<夢千代日記>でひょうきんな
芸者菊奴に出会いました。


小百合さんとはそれからプライベートなお付き合いが続いていったようです。


<夢千代日記>は早坂暁さんの書き下ろしで

 

ストーリー展開はすばらしく作品としても魅力あるものでした

 

ある意味反戦映画でもあり原爆の怖さもさりげなく描いた作品で内容的には

 

重厚なものでしたが

 

それにも増して毎土曜日にテレビのスイッチをひねったのは

 

すばらしいキャストのせいでした。

 

脇役のすばらしさです。

 

樹木希林さんの芸者菊奴、秋吉久美子さんのシングルマザーの芸者金魚

 

ストリッパーの緑摩子さん、その他 あがた森魚さんやケーシー高峰さん

 

林隆三さん、

 

石坂浩二さん、松田優作さん、ばあやさんの夏川静江さんなどなど

 

芸達者が織り成すドラマの展開が愉しみでした。

 

そしてテレビの<寺内貫太郎一家>と続くわけです。

 

30代前半の老け役はそれからの希林さんの定番となっていった。

 

30代の若い肌の手を隠すために指の出る手袋でカバーし、

 

10歳も年上の息子役小林亜星さんの暴力が始まると

 

部屋に引き返し沢田研二さんのポスターに向かって

 

”ジュリー!!”と叫んで身もだえする様は大反響でしたね。

 

 

 

小百合さんで思い出したのが、

 

映画<アマデウス>が日本公開された時に

 

雑誌<家庭画報>での記事。

 

小百合さんと希林さんの往復書簡のような形で掲載されていました。

 

夢千代以来のお二人のお付き合いの中で

 

希林さん”見に行った?アマデウス??”

 

小百合さん”行ったわ”というような始まりで

 

その作品について論じ合われていましたが、その成り行きは

 

言わずもがな希林さんの感性にはいかな小百合さんもついていけない感じで

 

たじたじの有り様でした。

 

そして話は趣味の話題に移りますが、器用で何でも出来てしまう希林さんに

 

洋裁の話だの、お料理の話だの、画のお話だのと話は続くのですが、

 

<あくまでも記憶ですので悪しからず>

 

その不器用さを指摘している希林さんの応対を

 

なぜかさもありなんと頷いた私なのでした。

 

 

その不器用さが演技そのままで、多分代表作というものがいまだない

 

美しいスターの小百合さんを表していたのでした。

 

今回の希林さんの訃報で、

 

何かの記事が眼に留まりましたが

 

小百合さんと希林さんはどっちが演技力がありますか?なんて

 

ナンセンスなことが書かれていました。

 

力のない女優がいつまでもちやほやされるのが分かりませんというものでした。

 

 

アイドルがそのままお年を召された女優さんと比べることが無理であって

 

役者として希林さんに軍配があがるのは当然です。

 

 

なにが言いたいかと申しますと

 

前に書いたように希林さんの人間への洞察力と観察力そしてそれを

 

演ずる努力の方向が他の女優とは全く違うということなんです。

 

 

演ずる時の 間<ま>がすごいです。

 

<七人の孫>のお手伝いさんも<寺内貫太郎一家>のばあちゃんも 

 

<夢千代日記>の旅回りの芝居一座に熱を上げる芸者 菊奴 の役の

 

強烈なインパクト。

 

 

世間ではいいおばあちゃんの年齢なのに

 

いつまでもいつまでも着飾って美しいスター女優さんたち、

 

それはそれでいいと思う。

老いて壊れていく過程をありのままに見ていただきたいという

 

希林さんの役者魂はこの方の人生観にも通じ

 

また二度と再び現れないすばらしい感性の役者さんです。

 

賑わせてくれたいろんな話題はすべてこの方の肥やしとなり

 

年を取るほどにすてきなすてきないい女、いい役者、いい女優に

 

なられていきました。

夫君内田裕也氏の追悼メッセージ、
   

    ≪見事な女性でした≫が全てを語っています。

 

          ご冥福をお祈りいたします。