(怪談)

カンヌ国際映画祭では審査員特別賞を

受賞し、アカデミー賞では、日本映画史上屈指の傑作と評されながらも
日本での興行成績は不振、赤字。
文芸プロダクションにんじんクラブを
倒産させてしまった名作ーー(怪談)
 
つまりは日本人が日本の文化を理解できなかったことの証明になってしまった。
 
貧しい感覚でしたね。
 
さて、

東京は18日間続けて雨模様だとか。
福岡市も10日程前から
最高気温は31度止まり、
夜は秋の様な風が吹いて
例年のような暑さはなく、
過ごしやすいです。

もうすぐ9月だし
このまま変な夏は終わってしまうのかなあ?

怪談夜咄は
暑い夜を涼しくするための
試みなのに ねえ。

でもBSでは
(怪談)放映されてました。
封切の時に、確か
東京で鑑賞した作品で、
小泉八雲の原作。

1 黒髪
2 雪女
3 耳なし芳一
4 茶碗の中
の4編からなるオムニバス作品です。
オムニバスという言葉もこの作品で知ったかも知れません。
雪女と耳なし芳一は
八雲の作品(怪談)から。
黒髪は作品(影)の中の(和解)から。四話の茶碗の中は
作品(骨董)の中にある
(茶碗の中)を映画化したものである。

記憶にあったのは
映像の美しさ と
(黒髪)の怖かったこと!です。

一話 黒髪

その昔、京に、貧しい武士が、長い黒髪のとても美しい妻と暮らしていました。仕えていた主家が没落したため、男は妻を離縁し、遠い任地の
国守に仕えることになった。良い家柄の娘を新しい妻とし、任地へ向かった。
しかし、その娘はわがままで冷酷な女だったので、男は決して幸福ではなかった。男はいつも京に置いてきた前の妻のことを思い出し、自分の身勝手さを反省していた。そして、今でも前妻を愛していることに気づいた。

やがて任期を終えて京にもどった男は、妻のいる家に向かった。
屋敷は荒れ果てていたが
そこには機織をしている妻の姿があった。


男は今までの自分を詫び、妻をいたわり、一夜を共にする。夜が明け男が目を覚ますと
横に うつ伏せになった前妻の長い黒髪があった。
男は恐る恐る髪に触ると
上を向いた髪の中から
髑髏が現れた。
残された妻にとって、一人の時間は老いを通り越し、屍も通り越して
髑髏となったのか?はたまた
恨み怨念の現れとしての
女の姿なのか?驚いた男は逃げても、逃げても追ってくる
長い長い黒髪に驚愕し、腰が抜けんばかりに怖かった。
男の容貌も見る見る
老醜の顔と変貌し
黒髪に呪い殺されてしまうのでした。

黒髪の妻は男が去ってからすぐに
寂しくて苦しんで苦しんで
死んでしまっていたのでした。

最近テレビではあちこち
不倫騒動が報道されてますが
踏みにじられた女性の怨念の怖さを知りたまえ!
キャスト
男 三國連太郎
前妻 新珠三千代
後妻 渡辺美佐子




第2話 雪女




武蔵の国のある村に、茂作と巳之吉という二人のキコリが住んでいた。茂作はすでに老いていたが、巳之吉の方はまだ若く、見習いだった。
ある冬の日のこと、吹雪の中帰れなくなった二人は、近くの小屋で寒さをしのいで寝ることにする。
が小屋は粗末で扉を閉めても閉めても開いて吹雪が舞い込んできた。
その夜、顔に吹き付ける雪に巳之吉が目を覚ますと、恐ろしい目をした白ずくめ、長い黒髪と白い装束の能面の様な顔をした女が立っていた。
巳之吉の隣りに寝ていた茂作に女が白い息を吹きかけると、見る見る内に
茂作は凍って死んでしまった。
女は巳之吉にも息を吹きかけようと巳之吉に覆いかぶさってきたが、しばらく巳之吉を見つめた後、不敵な笑みを浮かべて囁いた。

「おまえもあの老人(茂作)のように殺してやろうと思ったが、おまえは若くきれいだから、助けてやることにした。
だが、今夜見たことを誰にも話すな。誰かに言ったら命はないと思え」そう言い残すと女は戸も閉めず、吹雪の中に去っていった。


それから数年して、巳之吉は「お雪」と名乗る、雪のように白くほっそりとした美女と出会う。二人は恋に落ちて結婚し、
10人の子供を授かった。
お雪はとてもよく働き、できた妻であったが、
不思議なことに、何年経っても全く老いることがなかった。
ある夜、子供達を寝かしつけたお雪に、巳之吉がいう。「こうしておまえを見ていると、十八歳の頃にあった不思議な出来事を思い出す。あの日、おまえにそっくりな美しい女に出会ったんだ。恐ろしい出来事だったが、あれは夢だったのか、それとも

雪女だったのか……」

巳之吉がそういうと、お雪は突然立ち上り、言った。「そのときおまえが見たのは私だ。私はあのときおまえに、もしこの出来事があったことを人にしゃべったら殺す、と言っただろう。
だが、ここで寝ている子供達を見ていると、どうしておまえのことを殺せようか。どうか子供達の面倒をよく見ておくれ……」
次の瞬間、お雪の体はみるみる溶けて白い霧になり
白煙を撒きながら
消えていった。それきり、お雪の姿を見た者は無かった。
ゾーッ!

キャスト
雪女 岸恵子
巳之吉 仲代達矢

第3話

毎夜、毎夜 出かけて行く芳一に
住職をはじめ、僧侶たちは
その身を案じていた。

ある夜寺男2人が芳一の後をつけることになった......




ーー今から700年前
下関海峡の壇ノ浦で、平家と源氏の間で長きに渡る抗争の最後の合戦が戦われた。世に言う壇ノ浦の戦いだ。そこで平家は女も子供(安徳帝)もことごとく滅び去った。そして七百年このかた、壇ノ浦近辺では怪異が起きている……と噂された。ーー

盲目の琵琶法師の芳一は、ある夜、彼の前に現れた甲冑姿の男に「高貴な人に琵琶を聴かせるために迎えに来た」と言われ、ある場所に連れていかれる。芳一はそこで『平家物語』の壇ノ浦の合戦のところを琵琶で奏でて唄う。それから武士は毎晩芳一を迎えに来るようになった。芳一も繰り返し琵琶を奏でるのだった。
芳一の前には安徳帝を囲む様に平家の一族が鎮座し
芳一の琵琶を堪能した。

寺の住職は毎晩どこかに出かける芳一を心配して寺男の矢作と松造に芳一の後をつけさせたのだった。その夜、芳一の後をつけた寺男が見たのは、人魂が飛び交う平家の墓場の前で琵琶を奏でる彼の姿だった。芳一は目が見えないから墓場で琵琶を奏でているなど
わかるはずもなく、
高貴な方の屋敷だと思いこんでいた。

住職は平家の怨霊に取り憑かれた芳一の体全部に般若心経を書きつけることにした。


その夜、いつものように芳一は
出かけたが、
両耳を押さえ血を流し、喘ぎながら寺に戻ってきた。
何が起きたのか?

実は迎えに来た武士は何度も芳一の名を呼ぶが、返事がない。しかし、空中に耳が二つ浮かんでいたのでその耳を引きちぎって持って帰ったのだった。

両耳を押さえ悶絶する芳一。住職は芳一の耳にだけお経を書くのを忘れていたのであった。
その後芳一のところには

芳一の琵琶の弾き語りの依頼が後を絶たず、芳一は金持ちになり寺は潤った。芳一は耳なし芳一と呼ばれ、その名声は遠国まで聞こえたという。
キャスト
芳一 中村嘉葎雄
住職 志村喬
寺男 田中邦衛


第4話 茶碗の中
中川佐渡守の家臣の関内は、年始廻りの途中、茶店で水を飲もうと茶碗に水を汲み、顔を近づけるが、茶碗の水に見知らぬ男の顔が映っているのに気付く。水を入れ替えたり茶碗を変えたりしても同じ男の顔が映っていた。結局彼は男の顔が映った水を飲み干した。その夜、夜勤している関内のもとに式部平内と名乗る一人の若侍が現れる。その男は昼間茶碗の中に現われた男だった。関内は彼を斬りつけるが消えてしまった。屋敷に戻った関内は三人の侍の来訪を受ける。平内の家臣と称する三人は「主人があなたに斬られて療養中である。来月十六日に必ず恨みを果たしに来る」と言った。関内は三人に斬りつけるのだった……。
『人の魂を飲んだ者の末路は……』そのとき、おかみさんが水瓶を指さして悲鳴を上げた。版元も水瓶に近づくと、水瓶の中に作者が映り、手招きをしていたのである。
キャスト
関内 中村翫右衛門
版元 滝沢修

記憶の中の(怪談)という作品はその頃の私にとって
芸術性などは分からず、
本当にただ怪談としての興味で見たと思いますが、
今、時代を経て 見る本作品は、
時間とお金のかかった
素晴らしい作品だと思いました。
先に書きましたが、
公開当時は、
カンヌ国際映画祭で
審査員特別賞を取ったにも関わらず、興行成績は不振で
大赤字だったそうです。

本作品こそ文芸プロダクションにんじんクラブの製作で、
本作品の赤字でにんじんクラブは倒産してしまった曰く付きの作品でもあるんです。
にんじんクラブはなぜ出来たか?はまた後日述べます。

撮影は廃屋となっていた航空機の格納庫に大規模なセットを組んで行われた。武満徹による音楽は、幻想的な世界を作り上げていますね。
その後、黒澤明、市川崑、
木下恵介と共に(四騎の会)を結成。

1971年、
カンヌ国際映画祭で25周年記念として世界10大監督の1人として功労賞を受賞しています。


小林監督は
田中絹代さんの又従兄弟で
彼女に誘われて映画界に縁する。が絹代さんの力を借りずに大監督になった方ですね。
(人間の条件)、から
(切腹)、(怪談)、
(上意討ち)、そして
(東京裁判)まで
問題作を作った社会派監督の第一人者です。
晩年の田中絹代さんを
借金してまで面倒をみて
見送り
ご自分の遺骨も分骨して
壇ノ浦のある下関の絹代さんのお墓に一緒にお入りになっているそうです。


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