監督 熊井啓について

先日、熊井啓監督作品を
三作続けて鑑賞した。

〈帝銀事件 死刑囚〉と
〈日本の熱い日々 下山事件〉、
そして
〈日本の黒い夏 冤罪〉

以前から観たくてたまらなかった作品群でしたが、DVD化されたのか
CSで放映され、気づいて良かったです。
期待通りの圧巻でした。

社会派監督と言われる熊井啓監督は1930年生まれ。
ご存命なら今年87歳ですか。
亡くなられて10年も経つのですね。

1954年に日活に入社。久松静児監督や田坂具隆監督の助監督をしながら
シナリオもこなし始めました。

デビュー作が
〈帝銀事件 死刑囚〉



社会派とは、
社会の市井の人々 弱き者、貧しき者、ともし火の命のような力なき者の
傍に寄り添うこと。
時の権力が弱者を残酷にしかも
何気に一刀両断に斬るといった理不尽な社会に憤然と立ち向かって
メスを入れる骨太な姿勢の作品を
制作する人に与えられるものだと
思うのですね。
大いなる魅力で、わたしの
大好きな分野です。

私吐夢の映画日記では、熊井作品は
過去、〈海と毒薬〉、
〈望郷 サンダカン八番娼館〉、
〈忍ぶ川〉を取り上げましたが、
熊井作品を少し整理してみます。


①サンダカン八番娼館 〈1974年度〉

舞台は熊本県崎津町。
遥かボルネオに売られていき
からゆきさん として
愛と青春を没していった少女たちの秘話を描く。
原作は山崎朋子。
主人公の咲さんが、務めを終えて帰ってきた崎津の山の中でひっそりと息を潜めて生きていく......冷たい世間に背を向け、哀れさの中に強靭な信念と優しさを持つ咲さんの取材に
原作者である山崎さん=栗原小巻さんが寄り添って生活を共にする......

ベルリン国際映画祭銀熊賞、キネマ旬報ベストテンの第1位と監督賞を受賞。また、アカデミー外国語映画賞にノミネートされた。
田中絹代さんの遺作。


②忍ぶ川〈1972年度〉

話が出ては消え、消えてはまた持ち上がる三浦哲郎の同名小説〈忍ぶ川〉だったそうですが、第44回芥川賞を受賞した作品を熊井監督は情感豊かに、単なる恋愛映画ではなく、日本の...日本人の心の故郷に回帰する潜在的思慕を描き切った。

キネマ旬報ベストテンの第1位と監督賞、芸術選奨文部大臣を受賞。

③日本の黒い夏 冤罪〈2001年度〉

1994年6月27日に起こった 間違いなく松本サリン事件がモデル。一市民を冤罪へと陥れた警察捜査、マスコミ報道、そして市民の偏見の在り方を問う社会派実録ドラマ。平石耕一原作。
主演は、中井貴一と寺尾聰。ベルリン国際映画祭でベルルナーレ.カメラ(特別国際功労賞)を授けられた。

④帝銀事件 死刑囚〈1964年度〉
人間が人間を裁くことの難しさ
戦後の法律の悪弊が冤罪?を
引き起こしたと主張する2人の記者が
真実を追い求める中で
色んな悲劇が浮かび上がってきて、、
戦時中に蔓延った毒薬兵器が絡んでくる。
監督デビュー作品

⑤日本の熱い日々 謀殺下山事件
〈2001年度〉

昭和二十四年に起きて
今だに多くの謎を残す、国鉄初代総裁下山定則が列車線路上に轢断死体で発見された“下山事件”を改めて追求する。矢田喜美雄の原作「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」の映画化。
重いテーマを扱いながら、重厚な人間ドラマを完成させ、海外からも高い評価を得た。

どこまでがフィクションで
どこまてが裏付けのある実録なのか
息つかせぬ展開の一級サスペンス作品に仕上がっている。
ここでも
2人=
記者仲代達矢と警視庁捜査二課刑事の山本圭が執拗に足で
探し求めて、真実に近づこうと
粘る。
仲代達矢さん演じる矢田は
原作者の朝日新聞記者矢田喜美雄がモデル。矢田さんは
この事件で
下山総裁は死後轢断されたと他殺説を
唱え、世間の注目を集めたと聞く。
作品は俳優座や無名塾の共同制作とあって錚々たる俳優陣が出演している。
役所広司さんもチョイ役で。
ベルリン国際映画祭コンペティション参加。

⑥海と毒薬〈1986年度〉

太平洋戦争末期、米軍捕虜八名を生体解剖した事件を二人の研究生の目を通して描く。原作は遠藤周作の同名小説。
、ベルリン国際映画祭審査員グランプリ
ベルリン、毎日映画コンクールの
大賞、
3回目のキネマ旬報ベストテン の第1位と監督賞を受賞。


⑦千利休 本覚坊遺文〈1989年度

千利休四百年遠忌特別作品。安土・桃山時代の茶人・千利休の謎に包まれた晩年を、愛弟子・本覚坊らが解き明かしていく様子を描く。井上靖原作の小説『本覺坊遺文』の映画化。
ヴェネツィア国際映画祭監督賞を受賞。

⑨お吟さま〈1978年度〉

茶道の名匠・千利休の娘・吟の悲恋を描く、今東光原作。香港国際映画祭
コンペティション参加、モントリオール映画祭オープニング作品。

⑩日本列島〈1965年度〉。

日本列島〉=戦後の日本で起こった謎の多いどす黒い事件の諸々を
GHQ→米国の謀と結びつけ、掘り下げ探求した力強い作品で
社会派監督ここにあり!とインパクトの強い作品。モスクワ国際映画祭
招待作品、


で、 これからもう一度みたい作品は

、〈地の群れ〉、
〈海は見ていた〉かな。
地味に見えるけどファンの多い
骨太な熊井作品を
是非是非、ご覧になってくださいませ。