《にあんちゃん》・日本の女優さん ⑦北林谷栄さん・1959年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

吐夢の映画日記と日々の雑感

ご訪問ありがとうございます。
懐かしい名画、最近の気になる映画のことを
日記形式で書いています。
戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。

 

 

≪にあんちゃん≫

 

こんばんは。

 

日本の女優さん  ⑦

今夜は

大好きな女優さん、

北林谷栄さんです。

 

北林谷栄さんは

30代の頃から老け役を

得意とし

日本一のお婆さん女優と言われた。

劇団民藝の創立に

宇野重吉、滝沢修と共に参加

2010年に98歳で生涯を閉じたが

2003年まで活躍された。

名作と言われる多数の作品に出演され

印象深いのは

《ビルマの竪琴》の

おばあさん。

 

 

《キクとイサム》

《真昼の暗黒》など

 

《大誘拐》では

可愛い肝っ玉の太いおばあちゃん、

面白いところでは、

大映の大物女優に混じってお手伝いさんを演じた

《婚期》

 

 

また、《キューポラのある街》にも出られてましたね。

いろんな古着を集められ

いろんなタイプのおばあさんを演じるためそれらの衣装を自前で準備なさっていたそうです。

 

本当に汚れ役の多い、またそれを好んで演じられていましたが、私生活では

オシャレでセンスのよい

素敵なご婦人でしたね。

 

 

{C1EEF18F-66D5-4FD8-A1C9-B5A18D8F5E03:01}

 

 

{FE6904D0-80AD-425C-8D20-82885B912B52:01}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その北林谷栄さんの作品の中でも彼女が最も得意とする 外国人のおばあさん役の

《にあんちゃん》をとりあげますね。

 

 

 


全て40代ではないかと?

さて、

 

わたし達の小学、中学時代にはまだクラスに

必ず一人、二人の外国人がいたものだ。

まだ、差別という言葉はそんなにあからさまに使われてはいなかったように思うが、

からかう男の子はいた。 

それは、外国人だからという意識ではなく、

他の同級生をからかうのと同じような種類のものであった。

少なくともわたしの通っていた田舎の学校ではそうであった。

成績のいいかたもいらしたし、貧しい方もいらした。

でも上手く溶け合っていたように思う。

 

久しぶりに観た今村昌平監督の≪にあんちゃん≫。

 

この話しは実話?だと聞かされていたがどうだろう?

原作は在日コーリアンの安井末子という方となっている。

≪にあんちゃん≫

製作 日活 1959年度作

監督 今村昌平

音楽 黛 敏郎

 

昭和29年から30年の頃全国の炭坑は相次ぐ閉山で

その失業者20000人とも言われたそうだ。

 

この物語は佐賀の西端に位置する貧しい炭坑町で

どん底の生活の中での四人の兄弟の生活記録であるという。

 

この作者の作文か何かを元にしたものだろうか?

長男ーーあんちゃん   長門裕之

長女ーーねえちゃん   松尾嘉代

次男ーーにあんちゃん  沖村 武

次女ーーせいこちゃん  前田暁子

保健婦さん         吉行和子

外国人のおばあさん    北林谷栄

 々  のおっちゃん    小林昭一

おっちゃん          殿山泰司

銭湯のかまたき男     西村 晃           

保健婦の婚約者      二谷英明

 

この役者、配役で場面が想像出来るかもしれない

素晴らしい役者さんたち。

この他にもすばらしい役者さんがたくさん出ている。

 

悪人という悪人は出てこない・

ただ貧乏ゆえ致し方なく非情になる場合もある。

がそれはわたしが今の感覚で見るとそうなるが、

あの時代子供達もおとなの事情というものを

理解しているから、ひねくれたりはしない。悪人ではないのだ。

だれもそうしたくてしているのではない。
 

落盤事故で父を失った(母はすでに他界している)四人の兄弟は

あんちゃんの炭坑の臨時雇いの賃金だけで生活している。

にあんちゃんは元気が良く 妹思いで 頭もよくお勉強は学校イチ出来る。

 

お昼のお弁当は運動場のお水、

せいこにだけには食べさせてやりたい。

 

町はあまり衛生的ではないから保健婦さんは一生懸命

衛生的にしようと働きかけるが街者(東京)だからていう理由で

みんな言うことを聞かないが、にあんちゃんとせいこちゃんは

このおねえちゃんが大好きだ。

 

赤痢も出るし、相次ぐ落盤で失業者も相次ぐ。

あんちゃんは職を失い働きを求めて町を出る。

ねえちゃんも同じだ。

 

残された二人は近所に預けられるがそことて楽な生活ではなく

夏休みに漁師の家の手伝いをして金を得る。

がそれとてまだ小学生のにあんちゃんの身体からして

楽ではないが、にあんちゃんは逞しい。

 

せいこちゃんはまだ母の膝が恋しい年頃だ。

じっと歯を食いしばって淋しさをこらえている。

 

この町にいてもずーっとこのままだと思い、稼いだお金で

にあんちゃんは東京へ行くが、おまわりさんにつかまり、

佐賀へ送り返されてくる。

 

にあんちゃんは言う。

”今はじっと我慢して勉強だけをするんだ。

 

そして医者になって貧しい人たちを診てあげるンダ。

 

東京よりもこの町のほうがいまは良い。

みんなのどかだあ。

辛いことはいっぱいあるだろうけど...我慢する!

もっと大きくなったら..。がんばるぞー”

 

とせいこちゃんの手を

引いてトロッコ用の線路を元気に登っていく...

 

これはせいこちゃんの目から見た逞しくやさしい

2番目のあんちゃん=

にあんちゃんが

主人公のお話である。

この町の生活水準しか知らない兄弟です。

 

でも、せいこちゃんの望みは貧しくとも兄弟四人が一緒に暮らせる

そのことだけなのです。

 

にあんちゃんが東京へ行くときのせいこちゃんのくしゃくしゃの顔

やるせなくて、やるせなくて。。

 

いまの軟弱な子達に観て欲しい!

 にあんちゃんのたくましさ!

いじめられても”おれは水腹じゃけんど いつでもかかって来い

相手になるぞ”と頼もしい。

そして卑屈にもならない。

利口だからだ。

愚痴も言わない。

そしてあの当時いたような外国人のおばあさんも

すごく良い。

谷栄さんが良いですね。

生活に上手く溶け合った時代だったんだ。

 

 

 

今村監督は小津監督の助監督をしていたが、

小津に反発して松竹を出た方らしい。

 

問題作を次々と発表した社会派の代表的な監督であるが

デビューして2.3作目にしてこの”にあんちゃん”を

世に送った。

この作品にも貧乏をどうすることも出来ない事実を

リアルに描き 頑張るという意識、希望を

 希望に 

向かってくじけない強さをしっかり持つこと

このことを投げかけている。

 

子供の時に見たこの映画はせいこちゃんが可愛そうで。。。。

という記憶しかなかったが、

みんなが一生懸命で、

こんなに素晴らしくさわやかな映画だったんだと改めて思う作品でし

た。

 

豚と軍艦、日本昆虫記、赤い殺意、神々の深き欲望、楢山節考、

と数々の賞も受賞、

 

日活というプロレタリア思想の濃かった場で力いっぱい

作れたのだと思う。

 

世のお子さん方、にあんちゃんのようにたくましく

育ってくださいね。

 

≪余談≫

 

数十年前にテレビで見たこと。

長門さんがお出になっていて、

にあんちゃんの共演者のお二人にお会いしたいとおっしゃられた。

 

で、にあんちゃん役の

沖村 武さんが来られたんです。

40年ぶりだとか。

沖村さんも、前田さん(せいこちゃん役)も

これ1本きりで引退。

 

沖村さんはあのにあんちゃんが

そのままおじさんにおなりになったという印象でした。

 

撮影当時は本当の兄弟のように生活をしていたとかで

感無量というものでした。

が、せいこちゃんのお話になって....

彼女は若くしてご病気でお亡くなりになったとか。

それを知らなかった長門さんが号泣なさっていたのを

思い出しました。

 

ランキングに参加しています。

ポチッと押して頂けたら嬉しいです。

              ↓

 

 


にほんブログ村