私なりの『道』感・・フェリーニ作品 ・ 伊 1954年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画のことを書いています。

好きなのは戦前のフランス映画です。

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《道》



こんばんは。

今夜は

フェデリコ.フェリーニ監督です。



フェリーニを本当に理解するのはむつかしい。



《道》ーー表面的には

静かな 地味な作品。だけど

怖い。



イタリアを代表する

最もすばらしい作品です。

1954年度作品。

フェリーニのネオリアリズム最後の作品。

アカデミー外国作品賞受賞



日本で封切られた時、

アンソニー.クイーンしか知らない日本人たち。



《道》という題名さえ、

何なんだろう!という感じで、フェリーニも

マシーナも誰も知らない。



だけど、封切り後、大ヒット。



ザンパノという大道芸人は

ローザという相棒の女性が亡くなったので、頭の少しイカれた妹のジェルソミーナを一万リラで買い取り

新しい相棒にする。



ジェルソミーナはお金で買われているから

ザンパノの言う通りに

従わねばならないと思っていた。



海の辺の故郷を出るとき

ジェルソミーナはじーっと

海を見つめた。



ジェルソミーナは仕事の相棒の他、身代わり嫁の役目もさせられる。

旅先で知り合ったオンナたちとザンパノが関係を持っても当たり前のことと思っていた。



そんな夜は道端でずっと待つジェルソミーナ。

焚き火をじっと見るジェルソミーナ。



ジェルソミーナは水と火が好きな

本当に生まれたままの無垢な娘なんですね。



何をやってもうまくできないジェルソミーナは

ザンパノにおこられてばかり。

ある日、サーカス団とめぐりあい、一緒に仕事をすることになる。

綱渡りのイル マット《キ印という意味》とザンパノは昔からの知り合いだが、

曰く因縁ありでザンパノは彼を毛嫌いしている。



ザンパノをからかうイルに

ザンパノは怒ってナイフを

振り回してイルを追いかけた。ザンパノは留置場に

放り込まれた。





その夜、ジェルソミーナは

イル マットに話しかける。





《ザンパノと居たって

みんなと居たっておなじことよ。わたしは何の役にも立たない女よ。》



イル

《料理は?

歌や踊りは?



なぜ、ザンパノといるんだ?なぜ逃げない?》



ジェルソミーナ

《逃げたけど連れ戻された。》



イル

《ザンパノはなんでお前を

連れ戻したのかなあ、

おれならさっさとお前なんか捨てちまうがな。



おそらく、ザンパノはお前に惚れてるんだ。》



ジェルソミーナ

《ザンパノが?私に?



イル

《変かい?奴は犬だぜ!

お前に話しかけたいのに

吠えることしか知らん男だ。》



ジェルソミーナ

《かわいそうね!》



イル

《そうだ かわいそうだ!

しかし、お前以外に誰が奴のそばにいられる?



俺は無学だが、何かの本で読んだ。



この世の中にあるものは

どんなものでも、役に立つんだ。

例えばこの小石。どれでもいい イル は石を拾った。こんな小石でも何か役に立っている。



ーーーーーどんな?ーー

それは.........俺なんかに聞いてもわからんさ!

けど、神様はご存知だ。

お前が生まれる時も、死ぬ時も人間にはわからん❗️

俺には小石が何の役に立つかわからん。だけど

何かの役に立つ。》



そして、

石を握った彼はーーもし、これが無益というなら、

すべてーーー

無益だ!

空の星だって同じだとおれは思う



お前だって 何かの役に立ってるよ。ブスでもな。



と、

小石を渡す。

すると、ジェルソミーナは小石を

眺めながら何度も頷くのだった。

涙と笑みを浮かべながらーそして、イル マットはラッパを渡して🎵曲も教えます。







何もかも火をつけて焼いてやるわ

布団も毛布もみんなー

もうあの人とは働きたくないのよ。と言いながらも

イル マットには付いてゆこうとはせずに

警察署までザンパノを

迎えに行くのだった。









旅の途中、尼僧院に寄った二人は食事をご馳走になった。



若いシスターが聞く

《あちこちへ巡業するのは

お好き?



ジェルソミーナ

《あなたはここばかり?



シスター

《私たちも移るのよ、

2年ごとに僧院を変わるのよ、ここは2つ目なの



《どうして?



シスター

《同じ所に長くいるとーー

離れづらくなるから。住む土地に愛情がわいて 一番大切な神様を忘れる危険がある。

わたしは神様と二人連れで方々を回るわけなの



ジェルソミーナ

《人によっていろいろあるのね



その夜、僧院に泊めてもらう。

ジェルソミーナ

《ザンパノ! なぜわたしと一緒なの?私は醜いし

料理もなにも出来ないのに》



ザンパノ

《何を言ってるんだ?早く寝ろ、おかしなことを言う女だ》

ジェルソミーナ

《雨だわ ここに泊めてもらってよかった》とひとり

つぶやいた。



ジェルソミーナ

《ザンパノ 私が死んだら悲しい?

ザンパノ《お前 死ぬのか?



ジェルソミーナ

《前には こんな生活なら死にたいと思ってたわ

今は 二人が夫婦みたいね

小石でも役立つなら一緒に暮らせばいいわーよく考える必要があるわ あんたは考えない?



ザンパノ

《考えることはねえ

《本当に?

《何を考えるんだ?こんなバカげた話はやめろ❗️早く寝ろ!



横になりながら

ジェルソミーナは

《ザンパノ 少しは私を好き?》と聞いた

返事かないので

ジェルソミーナはラッパを

吹き始めた。



ザンパノ《やめて寝ろ!





夜中に嵐になり

眼を覚ましたジェルソミーナはザンパノがいないので

起きて探すと、

修道院の美術品を盗んでいた。悲しむジェルソミーナ。

ジェルソミーナが止めても、止めても悪いことばかりするザンパノ。



三輪車は出発。



途中 イル マットに出会い

ザンパノは怒りを露わに

イル マットに殴りかかり

撲殺してしまった。



殺す気はなかったが、

打ちどころが悪く

死んでしまったのだ。



泣きわめくジェルソミーナ

心の底からザンパノを

拒否した瞬間だった。









それからのジェルソミーナは心も身体も病んでいった。



放心状態のジェルソミーナを見ても、ザンパノには

後悔の気持ちなどなく、

ジェルソミーナの気持ちの理解さえできない男だった。

口も聞かないジェルソミーナに

故郷に連れて帰ってやろうと話すが、ジェルソミーナは《私がいないとあんたは

ひとりぼっちよ》と

つぶやいた。

ザンパノは《遊んでるわけにはいかん、飯のタネを稼ぐんだ! お前は病気だ ここがな》と怒鳴りながら

頭に手をやった。

悲しそうなジェルソミーナの顔。

横になって眠りながら、

《あんたが彼を殺したのよ

もういやだわ 逃げたかったの でも、彼が言ったのよ 一緒にいろって》



そして、眠っているジェルソミーナに毛布をかけて、

役に立たなくなった彼女をとうとう

置き去りにしてしまうのだった。それでも、ラッパは横に置いてやった。





どの位経ったのだろう?



ザンパノは港の岸壁を歩いていて、ジェルソミーナがいつも吹いていた

メロディーが聞こえてくる方へ引き寄せられた。



洗濯物を干している女性がくちずさんでいた。



《 奥さん、その唄 どこで覚えたんだい?



主婦《ああ この歌 ずっと昔ここにいた娘が歌っていたの》



ザンパノ

《どれくらい前だ?



主婦《4、5年前だわ ラッパで吹いてたわ それで覚えたのよ



ザンパノ

《その娘は?



主婦

《死んだわ かわいそうに

あんたはサーカスの人ね

あの娘も旅回りの芸人だったわ ここでは知り合いもなく、口数も少なかった

頭が変だったわ ある夜

私の父があそこの海辺で見つけて連れて帰ったの

熱が高かった。

何も言わず 何も食べず



ただ泣いていたー



具合のいい日は日光浴してた、そしてラッパを吹いてた。ーーある朝 冷たくなってたの》



ザンパノは

サーカスの仕事を終えると

酒場で飲んで荒れた。



そして、気がつくと

ひとり 浜辺に座っていた。





人を人とも思わない仕打ちを

あれだけジェルソミーナに

してきたザンパノ。

夜の浜辺には誰もいない。



忍び寄る孤独感。絶望感。



砂にうつ伏せで漏らす嗚咽は止まらなかった。

《ジェルソミーナ!

この嗚咽は

何なんだろう。



ジェルソミーナは明らかに

フェリーニ夫人のジュリエッタ.マシーナがモデルでしよう。



フェリーニの人生の中に

存在するジュリエッタの意義。彼女の人間性が

《道》を作るきっかけになったんだそうです。



ザンパノのわがまま、

ジェルソミーナの忠義、

ジェルソミーナは決して

白痴ではない。



ジェルソミーナはまさに神で、

イル マットは天使だったんだ。



フェリーニにとっての

神はジュリエッタなんでしょうね。



フェリーニ作品は何度も見ないと、奥が見えてこない、むつかしい、抽象的なんです。



イル マットとジェルソミーナの小石の会話と

尼僧院でのシスターとの会話に

作品のテーマがありますね。

改めて、教会色の濃い作品だと感じました。

フェリーニは青年時代、神学校に在籍してたらしい。

ザンパノにとってのジェルソミーナ、
ジェルソミーナにとってのザンパノ
人は生まれた時から、誰かの役に立っている。そして役に立つ喜び、
誰かがいるから感謝。人は誰かの役に立つために生まれてきているということを
教えてくれる作品ですね。深い、深い人間愛です。





わたしの《道》感が

どんなもんかわかりませんが、今回の感想です。



10年後に見るとまた、違うかもしれませんね。



改めて すごい 作品だと

思いました。



映画好きと公言する方は絶対に一度は

見るべき作品です。



ジェルソミーナ=

ジュリエッタ.マシーナ



ザンパノ=

アンソニー.クイーン



イル マット=

リチャード.ベイスハート



1954年度作品

1957年日本公開

キネマ旬報ベストテン

第一位