《尼僧物語》・宗教戒律の矛盾に苦しむオードリー・1959年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画のことを
日記形式で書いています。
戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。






こんばんは。

今夜は
オードリー. ヘップバーンの 
 <尼僧物語>を
取り上げます。
      
この作品は高校生の時に
学校から推薦があって
みんなで鑑賞した作品。

カソリック系の学校でしたが、今思うと作品のテーマを考えても、あの当時でよく学校が私達にこの作品を見せたなあと 思います。

尼僧物語であるから、信仰の世界へ入り、
修行してゆく
尼僧ルーク(ガブリエル)の成長が
丁寧すぎるくらいに描かれています。

これは物語の本質を訴える為に必要なデテイールだと思われます。

その証拠にこの二時間半という長いストーリーの半分は
一人前の尼僧となっていく過程に時間を割いています。

その過程に後半部のルークの葛藤を理解する鍵がありますので
どうしても紹介をおろそかにすることが出来ません。

医療への使命と宗教戒律の矛盾に
苦しむルーク(ガブリエル)を

<真昼の決闘>、<オクラホマ>、<地上より永遠に>の
フレッド.ジンネマンが誇張を避けて、端正に撮り上げた
限りなく美しい名作です。

よって、わたくしも、この作品も丁寧にストーリーを
書きまする。
また、長くなりますが
最後までどうぞ読んでくださいね。

彼女がアイドルだけでない,存在感だけの女優でないということを
示す本物の演技を見つめたいと思います。


ストーリー

舞台はベルギーのブルージス。

時は第二次大戦前。

医師の娘ガブリエルは修道院に尼僧として入ることを決心した.
ゆっくりと婚約指輪を外し、慣れ親しんだ部屋を見回した。

ピアノをつま弾きながら娘を待つ父がいた。

鏡を見ないで帽子を直す練習をしなくてわねと
ジョークを言いながら父を慰めた。。

”妹マリーも、ルイーズもわたしに会いたがらないわ”と 悲しむ妹達を思いやるガブリエル。
幼い弟は”どうして修道院に入るの”と心配そうに尋ねたが
”私は幸せよ”と答えた。

何人もの志願者が集まっている修道院。
修道院の鐘を聞きながら向かう親娘。

”あの鐘に従順に従うことができるのか?”と医師の父はガブリエルに尋ねた。

”コンゴで働く事が夢なのよ。”

”個人の希望が叶えられるとは限らん”
 自分の選んだ道が間違ったと思ったら帰って来るんだよ。”と父.

”パパの誇りとなるように努力するわ”。。。

”わたしの願いはおまえの幸せだ”と二人は別れた。

熱帯医学を優秀な成績で修めた彼女は
コンゴで熱帯病と
闘う人たちの為に尽くすのが夢であった。

控えの間でシスターから説明を聞いた。

”ガブリエル、1072番...コンゴで働いていたシスターの番号よ”
と研修尼僧の衣服を与えられた。

黒いヘヤーカバーと白いエプロンを渡された。

”一ケ月間は、研修生は私語は禁止!
修道院の戒律を守り、
沈黙をまず学ぶことです。”とシスターは、言った。

礼拝堂へ行くドアが開くと、長い廊下を通って見習い生は歩く。
鍵がかけられる。

ガブリエルは、祈りの途中で、
  薄目を開けて礼拝堂の全体を観た。

全身白い衣服のシスターが内側の列、

その横が白い聖衣に
黒のヘヤーケープの師長クラスの尼僧たち。

ガブリエル達研修生は
まだ、
上の祈りの場で祈るだけだ。

”内なる沈黙を守り、
5日間研修を受けて初めて見習い生となることを許されます。”と
説明を受け、そして手話のような合図を教わった。

”なにも欲しがらず、
思いやり、人への気遣いを
まず学んでください。
歩く時はだらしなくてはいけません。
壁に寄り添ってきりっと歩いてください.”

ひとつひとつの言葉をかみ締めるように聞くガブリエルであった。

のっけから走ってしまい、
シスターのもう一度というゼスチャーで
もう一度,部屋に入りなおした。

研修生は院長から入門許可が下りてから
初めて、正式な研修が始まる。
シスターの説明が終わると改めてエマニュエル院長からの
お言葉を賜った。

そして、シスターの並ぶ中を
研修生達は整列して歩き、床にふす。

また、顔を挙げて覗くガブリエル

”世間からの逃避ではなく,自己犠牲の生活です。
自然に逆らった生活です。
迷いに苦しむものも出るでしょう.
愛の力があって初めて、犠牲に耐える事ができます。
ここでも世間と同様
愛するものへの思いが不可能を可能にする。
私たちの愛の対象がキリストである事を思えば
犠牲に堪えられます。”
長いお説教は続く..

”主に近づく事ができるように,あなた方は試練と訓練を受け、
自分の弱点と欲望を押さえる事を学び、
得と仁を身に付けるのです。
これらの試練に疑問を抱き、
主に近づく事に迷いを持つものは入門の資格がありません
修道院生活は,規則で成り立っています、
日々,一時の休みも無く、聖なる戒律を守り、
絶えず,自己を練磨せねばなりません。
完全な尼僧は神への愛に生き
生涯服従を守るのです
我々の目を誤魔化す事は容易ですが
自分と神を騙す事は出来ません。
そして、
鐘は神の声です。鐘に従わねばなりません
何をしていても即座に中断して鐘の合図に従うのです。

ガブリエルは付設病院の看護を担当することになった。
毎日,自分のノートに懺悔を書き反省する。

当然,ガブリエルも書くことがいっぱいで苦しみだらけである。

”良き看護婦,良き尼僧になりたい。”とガブリエルは告白した。
”まず、良き尼僧になりなさい。”との院長のお言葉。
(ここでまず、彼女はドカンとやられた。
コンゴに行って奉仕をするということへの
手段として尼僧になったことを自分自身が気付いていないのでは
ないかと思うのですね)

”これからは、思い出も、品物も一切捨て去るのです。
新しい衣服一式が届けられます。
過去の記憶を呼び戻すものは一切捨てるのです。と
研修を終わったガブリエル達はシスターに告げられた。

ーー白い衣服に身を包む。看護婦の戴冠式のようなものか?

結婚衣裳と思しき白の衣装と白の髪飾りで
神との結婚式をする研修生。

鉄柵扉の向こうには彼女達を見守る家族達がいる。
下の妹マリーも今度は見守っていた。

司祭が清拭した白い被り物を院長が一人一人に手渡す。

”この世の空しい衣服を脱ぎ捨てて、
謙譲の衣をまとうが良い。。。”と司祭は謳うように言った。

それは誠に神聖で清いものとして映る。

レースの被り物を脱ぎ、長い髪を切り落とす。
美しいですね、ガブリエルは。

そして、顔を覆う白い巻きもの、そして白いヘヤーケープ。

妹マリーはキッと口を結んでその様子を見ている。

全身真っ白のシスターが出来上がった。
これから本格的な修行が始まろうとしている。

長いキャンドルを持ち、
司祭の言葉...
シスターの名が与えられる瞬間だ・
 ”ガブリエルは
”シスター、ルーク”を与えられた。

看護婦としての仕事は続いた。
詰め所で、ランプが点いた。急患だト思い慌てて病室へ行くと、
患者たちが拍手と共に,小さな花束を呉れた。
思わす、喜んだ...が
ーーこれは自己意識があるからだーーと反省する。

これから一年間は、真の尼僧となる訓練。

”欠点を補正し、欲望を抑制することを第一とし、
キリストの中に蘇るのです。
慈悲と忍耐と謙譲の心を養い、自己を捨てるのです。
試練の第二は,告白と懺悔の業です。
告白や懺悔を恥と感じるのは
自尊心が残っている証拠です。
自尊心を捨てて初めて、謙譲の心が得られるのです。
罪の告白を怠るものがいれば、
仲間を告発して
本人に気付かせねばなりません
マザーの足にキスして食事を請うがよい”...と言われ、
臥して、行動したガブリエル=ガブリエル。

毎日の彼女達の仕事は廊下の床磨き、祈りをし、
病人の看護だった。
ルークの懺悔....
  ”戒律をいまだ守りきれません。
   服従の規則を守ると自尊心がそれを喜びます。”と
ルークは告白した。

いつも話し掛けてくるシスターは
いまだ話し掛けてきた。沈黙をと合図をすると、
とうとう、
”服従できない、
あなたのように強くなれない”と
修道院を去る決心をルークに告白した。
首を振るルーク......・

見習期間が終わった。

”今後三年間、修道院の戒律を守ります。
汚れなく質素な生活に堪え、神への服従を誓います”..と
ルークはサインをした。

今度もまた,家族達は柵扉の向こうから見守っている。
かくして正式な尼僧となる。
ガブリエルは、
★恋人ジャンにもらったボールペン★を捨てた。

三年の月日が経ち、
白の被り物から黒へと変った。
そして、
自分を打つ鞭をもらった。
  
  ”これは懲戒の鞭です。懺悔の時に使うのです。
 まだ,あなたは神の道具に過ぎず、
   今のままでは無に等しい存在です。
 ”使いすぎてはなりません。”と院長は言った。
そして、
”アントワープの熱帯病研究所へ行ってください”と言われた。
 熱帯医学を学ぶ学校である。
ここまでが、前半のヤマ場と核心部分ですね。
ここのところをしっかりと把握しておかないと
後半部分のルークの悩みが見えてきません。

ここ、アントワークの学校で,
彼女は大学で勉強した成果が顕れた。
 顕微鏡を覗く彼女に、

”さすが父上の娘さんだ”と老教師に褒められた。

その言葉にハットするひとりのシスターがいた。。。

ルークたちは顕微鏡で、 病原菌を覗き,何の菌かを書き取る。

コンゴ行きの試験の為の授業であった。

 7年もコンゴにいたシスターは
 ハンセン氏病の菌が分らずに叱責を受けた.
   師は、言った。
 
”困っている友人を助けたらどうかね”と
 ルークに聞こえよがしに言った。
  そして、こうも言った。

”君等がおもちゃで遊んでいた頃に
彼女は顕微鏡を覗いていたんだ。”と。

隣のシスターに親切に教えてあげる彼女を
意地悪な目で見るシスターがいた。

ハンセン氏病原菌が分らなかったシスターである。

五ヶ月経った。

ルークは師長マルガリータに悩みを打ち明けた。

”シスターポーリンにどうしても好意をもてないんです。
この五ヶ月間彼女を助けようと努力しましたが、
どうしても受け入れてくれないのです”と。

”彼女も悩みを打ち明けましたよ。
あなたは誇りが強く,謙虚さにかけると。 
彼女は恐れているのです。
コンゴ行きの試験に落第するのではないかと。

  ルーク,あなたの犠牲の精神を試す、
いい機会かもしれませよ。
  
 自己を犠牲にして★試験に落第する事が出来ますか★??

 ハッと顔をあげ、シスターをじっとみつめた。。

”院長様に事情を説明していただけますか?。。。”

 シスターは言った。 ”謙譲に条件をつけの?

あなたは見返りをもとめているわ・
院長がご存知という満足感を求めてる。”

”勇気のためです。”
とルーク。

 ”真の犠牲は目立ちませんし、神だけがご存知です。
 善行を施し、速やかにされ!...と”

”それで謙虚な人間に?”とルーク。
 ”落第という屈辱に堪えることがその第一歩です。”

 ”神がお望みなのですか?”とルークの顔は苦渋にゆがんだ。

 ”神にお尋ねなさい!これは願ってもない機会ですよ。”
 落第する事など、永遠の中の一瞬です。
 神があなたの魂に近づこうとなさっているのですよ..”....

口頭試問で聞かれた事はルークにとって
難しい問題ではなかったが、
即答するかどうか迷った。
師長の諫言に服従するか否か試験中にも
迷い悩んだルークであったが、
結局、試験には全員合格した。

しかし、シスター.ポーリンがコンゴへ派遣され、
ルークは.ブリュッセルの精神病院へと赴任した。

自己の願いと考えはことごとく否定される事へ
ルークの心の葛藤は続いた。
師長に言わせれば、ルークにはコンゴへ赴く事は
早すぎるという配慮からであったが、
ルークは失望を隠せなかった。
しかし、ここで服従という意味を学んだような
★気★がした。

宗教戒律には漠然と疑問をもちながらも
患者達には寛容で優しい彼女はだれからも敬愛されていた。

だが、この精神病院では、彼女の配慮、
人を疑う事の無いやさしさは
マイナスに出て、危険な目にあう事も多かった。

凶暴な患者の舎監をしていて、一杯の水がほしいという患者に
ルークの優しさを逆手にとって暴行しようとした。

それをルークは自分の思い上がりだったと反省するが、
あまり自分を責めすぎるようだ。
ここの師長もそういった。

ルークはいまだに服従が出来ないと師長に告白し、
試験のことも話した。だが、ここの師長は
”あれはシスターのほうが間違っています”と言ってくれた。

いよいよ最後の誓いを立てる日がやってきた。

ルークはやっと,念願のコンゴへ行けることになった。

船を見送る院長や父。やっとルークは笑顔を見せた。

見送る父に手を振りながら笑顔と共に、心で告げた。

  ”パパ,これは門出ではないわ,逃げ出すのよ。。。!”と。

船を降り,列車にのり、またコンゴ河を船で渡るとそこが
修道院だ。

しかし歓迎してくれる現地人スタッフたちと
交流するも彼女の勤務は白人病棟と知らされたのだった。
またしても失望したルーク.

学校や産院とここで働ける喜びもつかの間だった。
シスターオレリーは失望も試練のひとつよと言った。

そこの独身医師フォチュナテイは
黒人病棟と白人病棟を掛け持ちで
診ている。
彼の助手として働く事になるのであった。

フォチュナティにとって、
今までの尼僧と違ってルークは、
現場で非常に頼りになる助手であった。

それは,服従を優先し、彼に反抗もしないシスターと違って、
疑問は疑問で彼に本気でルークがぶつかってくるからだ。

フォチュナティは口は悪いが優秀な医師であった。

現地スタッフのイルンガはルークに心を開いたが、
他のスタッフは難しかった。というのは
キリスト教を邪教と思い、自分達の宗教を誇示していたからだ。

フォチュナテイ医師の医療への姿勢に共感するルークは
またしても、医療への使命感に”服従”というものが
邪魔をする悩みに葛藤していた。

フォチュナテイはルークの悩みを見透かすように

口の悪さで彼女の気持ちを救おうとする。

ある日、シスターオレリーが病室で現地スタッフのひとりに
撲殺された。
兼ねてより改宗させようとしていたひとりだった。

それでもルークたちシスターが
彼らを憎まない事に怪訝な顔をした。

”私たちは罪人も許すのです”と言う言葉に

クリスマスイヴのイベントにイルンガは参加してくれた。
彼の胸にかかっていた彼らのお守りは外されていた。
キリスト教に改宗してくれたのだ。

毎日,激務は続き、ルークは結核に冒されてしまった。
フォチュナテイは言った。
 ”ベルギーに送還されるぞ。病は私が治すが、
 国に帰って尼僧の生活が続けられるか?

ひとつだけ言っておこう、
今まで大勢の尼僧と一緒に仕事をしてきたが、
 君は彼らとは違う。
 
人間的だ.だから患者に好かれる。
 君は自分の考えを持っている。
修道院の求めるシスターではない!”
 君の本当の病気はそこにある!”

 そしてこの医師によって自分の求めるもの、
また、どうしても服従と言うものを自分が受け入れない事を
 次第に悟ってゆくのです。

彼の担当医としての命令への服従には
何の抵抗も無くできた。
納得できるからだ。

ルークはベルギーへ帰される事になった。

見送るフォチュネテイーに別れを告げる日に
ルークは一抹の淋しさを覚えた。

きっと彼のことを好きだったのでしょう。
そして、フォチュナテイーも。

さて、帰った彼女に待っていたものは
弟からの手紙。

時はもうナチズムがベルギーを占領していて、
路上でけが人の手当てをしていた父が
乱射弾に当って殺されたと言うものだった。

コンゴでオレリーシスターが亡くなった時に だれをも許す  と言ったはずなのに、
今はナチスが憎かった。

私は偽善者だと自分を責め、”おとうさま”と
叫ばずにはいられなかった。

願い出たが,尼僧の身ではレジスタンスに入ることも
許されなかった。

新しく入った見習尼僧はルークに憧れていたが、
彼女と違って良い意味で要領よく立ち回るようで
ルークの支えとなっていた。

とうとう、もうこれ以上は無理だと悟ったルークは
彼女に、この修道院を去る決心を話した。

彼女はルークに即座に地下組織の連絡場所の
メモを渡した。

こういういい意味での裏表を使い分ける人でなければ
尼僧というものは勤まらないかのように、
ルークは彼女に
  ”あなたはいい尼僧になれるわ"と言った。
そして院長が必死に止めるがルークの決心は揺るがなかった。

聖なる掟よりも自分の良心を選ぶ事にしたのである。

*号室にあなたの私服が置いてあります,
済んだらボタンを押しなさいという言葉に
彼女は部屋へ行き、ヘアーケープを外し,
衣服を着替え,キリストとの結婚指輪をはずし、ボタンを押した。

するとすぐに、まるで自動的なように、冷たく錠がガチャンと
降りて扉は開いた。
その先はいきなり街へ続く路地だった。

おわり・

★この冷ややかな錠の降りる音が総てを表していたように思います。

余談ですがアラン,ドロンの作品では刑務所はお馴染みなので
申し上げますが、刑務所は入るときも出るときも同じ大きな門を
くぐるようですが、
ここは入るときの奥行きとは全く違う。
出るときは、ドアを開けるとすぐに路地だった...
これもジンネマン監督の痛烈な批判のように感じました。

1959年度のアカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞、
撮影賞とすべてノミネートではありましたが
リストに上がっていました。

キャサリン.ヘップバーンやエリザベス.テーラー、
シモーヌ.シニョレと共に
女優賞にノミネートされていました。

後半は、ノーメークで苦渋の顔を隠すことなく演じ、
ラストの私服に着替えた姿は地味な容姿なれど
苦しみから解放され、凛とした彼女は輝いていました。

宗教戒律というものを批判する気はありませんが、
ジンネマン監督はコンゴなどの医療現場において、
また、押し寄せる戦争の前には宗教など
なんの役にも立たないということを
訴えたかったのだと思います。

ルークも人間らしさを失うことなく医療へ立ち向かえる事を望み、
作品中でも言っていますが
”思えば最初から”服従”という
ものについていけなかった”とあるように、
彼女には人間らしさを押さえる事など出来なかったのです。

患者や現地の人たちにとって必要としているのは
形ではなく、本当の人間らしい優しさ持ったひとを
求めていたと言う事ですね。

★この作品での経験が彼女の晩年の社会福祉に貢献するきっかけを
作ったと私は勝手に解釈をしております。★
そういう意味でも人間オードリーの素晴らしさを受け止める
名作だと思います。


また、オードリーはこの作品には最初から
積極的だったそうです。
というのも,オードリーと
シスター.ルークには共通点があったからです。
どちらもベルギー人で、オードリーも大戦の頃、
レジスタンスの資金集めの為のバレーの公演に
参加したりしていたし、
二人の兄が強制収容所に捕えられていたという経緯がある。

この映画の原作はキャサリン.ヒュームがベルギー人の
還俗尼僧の体験をもとに書いた小説で
内容が内容だけに当時は
センセーショナルな話題になっていたそうだ。

この作品の映画化権をいち早く獲得した、ヘンリー.ブランケが
地味で真面目なケレン味の無いフレッド.ジンマンを
監督に選んだのである。
狙いどおり、骨っぽい作品となった。
静かな場面の積み重ねで,ヒロインの心の奥の深さを描いて
見事である。

そして撮影はローマの休日のフランツ.プラナーが
担当しております。
  

1959年度作品