主人公のユダヤ人仕立て屋・アブラハムが第2次大戦後住んでいた
アルゼンチンは、ハンナアーレント『イェルサレムのアイヒマン』で
取り上げられた、ナチのホロコーストの中心人物・アイヒマンが潜伏
していた国でもあることに気付いた。これは偶然なのだろうか?
アブラハムは生まれ故郷のポーランドに向かうが、途中で立ち寄る
スペイン、フランス、ドイツでそれぞれ女性に助けられる。
現代ヨーロッパの特急列車やパリの終着駅、ドイツの地下鉄駅など
駅や鉄道が舞台となって、魅力的に描かれているのがうれしい。
一人のユダヤ人のロードムービーでありながら、南米からヨーロッパ
まで70年間の時間と民族を超えるスケールの大きさを感じた。
…朝日新聞・Reライフプロジェクトに投稿、2018年12月7日