ただいま、ウェンブリーパーク駅からホテルまで走ってるところ。集合時間には間に合わないけど、なんとかバス出発時間までには!
と言いつつ、未練タラタラで電車内からこの駅を写真に撮った。
ここを降りたら約300mでアビーロードの横断歩道に着くらしいのだ。(焦る中にも現実的でしょ?笑)
それよりも今回、彼女が喜んでくれそうな、ハリーポッターの聖地を写真に撮ることを選んでしまった。
あれだけ、アビーロードに行くことを夢見ていたのに……。
きっと私のことなんとも思っていない、一方的にただ一目惚れした子のために……。
ゴール!
ホテルの前にバスが止まっていた。
バスの前に見慣れない人が。 …誰?
添乗員の見習いだそうだ。
(ぜーぜーぜー、肩で呼吸しながら)
私「すみませーん!遅れてしまって!ゲホッゲホッ」
見習い「それが、、添乗員とあと2人がまだ着いてないんですよ。」
私「えっ? ロンドン塔に行ったチームですよね?」
見習い「はい。でも連絡とれてますので、大丈夫です。少し待っててくださいね。」
なんだよ、必死に走って汗びしょだというのに。。 アビーロードにも行けたよ。。
バスに乗り込んだ。
私「すみませーん。遅くなりまして……」
と言いつつすばやく彼女の席を確認 
おー、彼女の後ろの席が空いてるじゃないか!
皆さんいかがですか?
神様「最後のチャンスだこの野郎!」
その席を目指していると、またはるか後方の席からオッチャンが手招きしている。
例のごとく無視しようとしたが、今回は手の振りかたが尋常じゃない。
あー、めんどくせーなぁ!なんなんだよ。
私「どうしました?」
オッチャン「あの子とはどうなんだい?」
「えっ!?」
(バレてる?)
オッチャン「あの子はよくあんたの方見てたからさぁ。」
マジ、マジ、マジーーーっ!?
私
→→→
→→→
オッチャン「そうしたらあんた、昨日の朝食はうまいことあの子の方に行ったから。まぁそう仕向けたんだけどね。ハッハッハ」
なんか、「あの子はあんたの方を見てた」という言葉で頭の中が満たされて。。
一瞬、恍惚状態でヨダレが出たかも知れないが、、、(ありえない!)、と気を引き締めた。
オッチャン「あそこの席、空けるようまわりに言ったから。お母さんがいなけりゃなぁ〜」
急に恥ずかしくなった。まさか、まわりもみんな知ってんの?なんて。
(でもまぁ、感謝だな、サンキュー!)
彼女の後ろの席に座った。
さて、と……
トントン、トントン
「ん?」
後ろの席から私の左肩をたたく人がいる。
振り向くと、窓と椅子の間に顔を挟めたおじいちゃんがいた。
おじいちゃん、小声で
「昨日はぁ〜すみませんでしたねぇ〜」
いつものかん高いハスキーな声で、おとぼけの雰囲気で話しかけてくるのだ。
(いきなり、昨日ってなんなんだ?)
おじいちゃん
「写真ねー、お二人がお似合いだからぁ、逃げようとしたら、添乗員さんに見つかってぇ…」
私「!………」
拙い話し方だけど、十分にわかる。
ロンドンブリッジでの写真撮影のことだ。
(③④あたりでご確認を)
本当に気を遣ってくれたんだ…。
私「……(笑)ありがとうございます!」
最終日だから、みんな伝えたかったことを言いたいのだろう。私も同じだ。
でも、ありがたい話ばかり。
わずらわしかったオッチャン、おじいちゃんに背中押されてるじゃん。
私が4日目の夕食だった時だろうか。
いまだ独身であることを伝えてから、気を遣ってくれてたような。
よし、決めた。
私は立ち上がり、バスを降りた。
(告白すると思ったじゃねーか)
外にいる見習いさんに声をかけた。
私「トイレに行く時間はありますか?ぶっちゃけ長いほうです。」
見習い「さっきウェンブリーパーク駅についたそうです。あと10分くらいですかね?」
私は集中して考えたい時、トイレにこもることがよくある。
(なんじゃそりゃ)
改めて、ウェンブリースタジアムの歴史を物語る1Fのロビーを見渡しながら、トイレに向かう。
便器にまたがりながら、
もう、ここで何かアクション起こさなければ終わりだ。
本当かわかんないけど、「彼女が私を見ていた」?
住んでる街が遠いとか年齢差は考えず、まずは想いのまま何か伝えたほうかいいのか?
失敗しても旅の恥はかきすて…
(ポジティブになってきたな)
しかし立ちはだかる、母親の存在。
でも妙にお母さんに気にいられてる感はあるよな?
私はLINEとかやってない。
(マジか!?)
かと言って、お母さんの前でメールアドレスの交換はちょっとなぁ。
お母さんも一緒にメールアドレス……おかしいだろ!
いろんな想いが錯綜する。
そして、、、ある細工をしてバスに戻った。
ほぼ同時に、添乗員さんとあと2人も戻ってきた。
バスもエンジンを動かした。
さっきまでの、し〜んとした雰囲気もなくなり、良い感じでザワザワしだした。
出発!
いよいよ、ロンドン、イギリスともお別れだ。
今日は気候も良く、心地よい風も吹いてて爽やかだ。
自分を煽る、必死に。
イケるよ、自分!
ドキドキしながら、前の席に座ってる彼女親子に、椅子と椅子の間から話しかけた。
私「あの〜」
親子揃って「はいはい?」
すかさず母親「さっきは観光楽しめましたか?」
私「いやー、時間足りなくなって、遅れて帰ってきてこのザマです(笑)」
ちょっと、あることを話す計画が狂った。ま、この際話し続けるか。
しばらく談笑しながら、
私「そういえばさっき、ハリーポッターの聖地、キングス・クロス駅に行ったんですよ!」
彼女「え、本当に行けたんですか?」
母親「だからあなた、一緒に……」
彼女「…………………。」
私「ともかく、動画を撮ってきたんで見てください」
表情は見えなかったが、親子揃って、無口。
動画終了。し〜〜ん。
な、なんだこの雰囲気。え?
母親「ありがとうございました。行けてよかったですね。」
2人とも再び前を向いた。
まったく意味がわからないが、イマイチな雰囲気だ。何が起こったんだ? これじゃ、話したいことも話せない。
なんか、ハリーポッター、失敗。。
しばらく音楽でも聴こう。
助けて、桑田さん!
桑田佳祐 「がらくた」
しがみつくように聴こうとしたが、2曲目の「若い広場」の時、
いや、ダメだ、どうにかせにゃ!
停止ボタンを押す。
また、2人に椅子と椅子の間から話しかける。
私「でですね。」
(何がでですねだよ。)
親子「はいはい」
なんかさっきの雰囲気がなんだったのか?ってくらい、2人とも普通に振り返ってくれた。
よしっ、行け〜!
私「これ、よかったら、受け取ってくれませんか?」
お母さんが受け取った。
私「私の名刺なんです。お二人で福岡に来ることがあれば、是非連絡ください。美味しいところ連れていきますよ!(笑)裏に私の電話番号、メールアドレスも書いてますので。」
母親「あらっ、ありがとうございます。これ、あなたが持ってなさい。」
私の顔をチラッと見ながら、ほんのかすかな笑みを見せながら、
彼女「ありがとうございます。」
母親「よかったじゃないの。」
私「まぁ、福岡なんてなかなか来れないでしょうけどね、ハッハッハ」
2人は前を向き直した。
もう限界というか、このくらいしかできなかったというか、でも何もしないよりは一方的ではあるけど繋がったというか。。
最後のイギリスの風景を見ながら、音楽を聴きなおす。無性に聴きたくなった曲がある。
10曲目の「ほととぎす」を。
『人は何故 戯れに
叶わぬ恋に身悶えて
せつなさと虚しさに
心を乱すのでしょう?
〜あなたがいつも笑顔でありますように
たった一言の「お元気で」』
ヒースロー空港に着いてから、添乗員さんに言われるがまま行動。
飛行機の中は、希望通り、通路側。
彼女親子ははるか後ろ側。
しかも左右反対側だから、通路ですれ違うこともない。
長いこと、眠りについていた。
寝ぼけまなこで、幻のように、なぜか私の横を、彼女が通り過ぎていくのを見たのは夢?それとも、自分に都合の良い妄想?
Walkmanで、耳にイヤホンつけたまま、寝たり起きたりの繰り返し。
成田空港に着いた。
荷物の受け取りで、ベルトコンベアーに荷物が並ぶ。私の右ななめ後ろすぐに彼女がいた。
こんなに引き合わせてくれてるのに、話す言葉が見つからない。
あ、そうだ!
私「今度は具合は大丈夫でしたか?」
彼女「大丈夫です。よかったぁ。」
時折、無邪気な顔を見せる。可愛い。
すっぴんにメガネ、スタートに戻った感じ。
(気になる方は①へ)
山下智久と長澤まさみのドラマ「プロポーズ大作戦」みたいに、時を戻せたら……でも最後は結局、現実勝負だったな。
荷物を引き取った人は、添乗員さんに挨拶してそれぞれ家路につく。集合もなくあっさりしたもんだ。こんな感じで、彼女とも別れるのだろう。
荷物が見つかった。手元に手繰り寄せる。
振り返り際、彼女に最後の言葉を。
私「福岡に来る時は是非、連絡してくださいね(笑)」
彼女「そうですね(笑)」
最後まで、なんとも情けない。
お母さん、いなかっただろうが。
個人的になんかもっと言える言葉があったはず。
添乗員さんにも挨拶して、私は羽田空港までのバス停に行くことになるが、その前に成田空港で借りてたポケットWIFIを返しにいかなくちゃならない。
お店が見つかったが、店員さんがいない。
そういえば、BOXに返せばそれでいいって言ってたっけ?
店員さんからもらった説明書を探すために腰を降ろして、カバンを開けた。
すると、
トントン
振り返る。
おじいちゃんじゃない、
彼女だ。
彼女「あら!私たち、荷物を送るのに、ヤマト運輸のコーナー探してるんですよ」
私「あぁ、そうなんですね。私もポケット……」
少し離れたところからお母さんが
「行くよー、あ? ○○さん? まぁまぁ(笑)」
私「どうぞどうぞ行ってください。本当、お世話になりました(笑)」
母親「私たち、ヤマト……」
彼女「言ったから!」
私「ではまた、お会いできたらいいですね!」
本当によく会う親子だ。
そして相変わらず、気の利いた言葉が言えない私である。挨拶して本当のお別れ。
後ろ姿を見送る。あ、振り返ってくれた。
「バイバイ」
手を振りながら、つぶやくように言った。
福岡空港に着いた。10分しか乗ってない気分だ。熟睡してた。
空港から家まで、タクシーで10分。羽田から福岡までと変わんないや。
家に帰るとまず、窓を一斉に開けて空気の入れ換え。もう薄暗くなっていた。出発時よりもかなり涼しく、心地よい風も感じた。
そして、家でキャリーケースを開けて、いろんなイギリスでの買い物などを見ていると、もう遠い思い出のように感じてくる。
その思い出の中心にはいつも彼女がいる。
夜、眠れなくて、このブログを書き始めた。
思い出にはしたくない。進行形だと言い聞かせながら。
まだ、恋の魔法が解けないままだ。
ずっとお付きあいいただき、ありがとうございました。
エルビス・コステロ 「She」
「ノッティングヒルの恋人」主題歌
桑田佳祐「ほととぎす」
その時思ったことを思いだしながら書きました。
あれから2週間以上経ちました。
今の心境と、番外編をいつか書こうと思っています(^^)



