「・・・・あれ・・・・・」
ムクッと起き上がると、傍らで、ロビンが椅子に座ってうたた寝をしていた。
隣のベッドを見ると、アランがすやすや寝息を立てて眠っている。
「アラン・・・助かったんだね。良かった」
私はようやく安堵し、泣いてしまった。
その声で、ロビンがハッと目を覚ます。
「どうしたの、メグミ?どこか痛いの?」
「ロビン・・・。ううん、何ともないよ。安心したら涙が・・・。勝手に外出して心配かけてごめんなさい。こんなことになると思わなくて。ロビンここでずっと見ててくれたの?」
「うん。君が襲われたって聞いて、慌てて見舞いに来たんだ。レジスタンスのことで君が一人で悩んでいた事に気付けなくて、僕の方こそ済まなかったね。でももう大丈夫。レジスタンスはこっちで保護する事になったからね」
え・・・・保護?
城の意外な決断に拍子抜けしていると、ロビンが苦笑いした。
「もうすぐアラドラスの王子を迎えることになっているのは知ってるよね?その影響で今までのことは大目に見るとの判断なんだよ。レジスタンスは殺人を犯したわけでもないし、重罰には値しないってことでね。もっとも、ゴードン・レストランの店主たちには殺人未遂の他にも、客に毒を振舞ってた重い罪があるから、何らかの重い罰が下ると思うけどね」
「罪が・・・立証されたの?」
ゲルダが、ベッドのカーテンを開けて、お粥を持って入ってきた。
「レストランの倉庫にあった変わった花をあたしが調べてみたのさ。あれはルシフォワールっていう、極めて希少な花でね。量によっては人を薬物中毒にするし、人を死に至らしめる事もある恐い花なのさ」
あの花、ちゃんとゲルダが検査してくれたんだ。
よかったぁ・・・。
いや、やっぱ良くない。
「ゲルダさん、私もシルフィも花の毒の入った料理を食べてしまったんです。私はともかく、シルフィは大丈夫なんでしょうか?」
「それなら心配ないさ。微量だったからねぇ。常連客だったら今頃は完全に中毒になっていただろうけど、1回2回じゃ問題ないよ。マーガレットさんはどちらかというと、二日酔いの方を心配した方がよさそうだけどねぇ」
確かに・・・。
シルフィのあの酔いっぷりはすごかったもん。
「さ、これをお食べ。栄養のつく薬草が入ってるから、すぐに元気になるよ。あたしゃあの花のことをもう少し調べたいし、ワクチンも作らなきゃいけないから実験室に行ってるよ」
私にお粥を手渡すと、ゲルダは病室を出て行った。
「レストランはこれからどうなるの?」
お粥を食べながら、ロビンに尋ねた。
「あぁいうことが発覚したからね、営業中止というか、事実上の倒産になるだろう。中毒にかかっていると判断された常連客に賠償金を支払わなきゃいけないからね。今回の君たちの食事代も払わなくて済んだみたいだよ」
ロビンがニコッとして言う。
それは、不謹慎かもけど助かった。
・・・シルフィの財布がね。
「それにしても、レッテたちどうして私たちの危機が分かったの?外出してることすら知らなかったはずなのに」
「運が良かったんだ。レジスタンスのアジトへ、アランの捜索に向かった後、レストランの方にも現れるかもしれないと推測して、行ってみたそうなんだ。そしたら倉庫から異常な金属音がして確認しようと扉を開けたら、君たちを見つけたってわけさ。間に合って本当に良かったよ」
レッテたちがレストランに来てくれてなかったら私たち今頃・・・。
レッテにお礼言わなきゃ。
「そうだ、あの時アランの血の色を多くの兵士に見られてしまったんだよね。メグミ、勢いあまって別の世界から来たって言っちゃったらしいけど、レッテを含め、皆信じてなかったよ。兵士たちはアランを異常に恐がっていたけど、僕が兵士たちを説得して、口外しないように言い聞かせておいたから、たぶん大丈夫」
「そうか、レッテにも別の世界があることは言ってなかったよね・・・。取り乱して、口がすべっちゃった。ロビン誤魔化してくれてありがとう。ごめんね、色々迷惑掛けて」
ロビンが首を横に振る。
「謝る必要なんかないよ。君が無事でいてくれれば、それでいいんだ」
何だか、胸がドキッとした。
ロビンにとっては大したことを言ったわけじゃないと思うけど、私にとっては今の言葉がとても嬉しかった。
思えば最近忙しくて、こうやって二人で話をする事もなかったっけ。
久々の二人きりの会話に、私の気持ちは喜びに溢れた。