「こんな簡単にまっちまうとは、あたしらも落ちぶれたもんだねぇ」

 

牢獄で、フィオネが愚痴を漏らす。


「あれだけの人数に囲まれたら、抵抗しようがないよ」

 

レジスタンスの一人が力なく言う。


「あっちが先に仕掛けてきたことなのに、悪者にされるのはいっつもあたしらの方だ。腐った世の中になっちまったよ」

 

牢屋の鉄の格子を見張りの兵士がガンッと叩いた。


「うるさいぞ。罪人は大人しく、静かにしていろ!」

 

それにカチンときたフィオネは兵士に食って掛かる。


「なんだって!?あんたの方こそ・・・」

 

フィオネが言い返そうとしたとき、牢獄の間に少女が飛び込んできた。



「お願い、その人たちにひどい事しないで!」


「メグミ?メグミじゃないか!」



フィオネは鉄格子にへばりついた。


「何だお前!誰の許可を得てここに入った?」

 

兵士が尋ねると、私の後ろからレッテが姿を見せた。


「許可を出したのはわたしです。メグミはレジスタンスに話したい事があるそうよ。話だけならいいでしょう?」

 

ロビンの側近、レッテの判断だ。


したっぱの兵士は「ダメです」などとは言えなかった。


「ありがとう、レッテ」



私はフィオネの傍まで行って、しゃがみこんだ。


「お久しぶり」


「なーに呑気な事言ってんだい!あんた、いつの間に逃げ出したのさ?もう、アランのやつカンカンだったんだよ!!」


「こっちもあの後色々あって大変だったんだからね!それより、アランは?一緒じゃないの?」

 

どれだけ見回してもアランの姿は見当たらない。


フィオネは苦虫を食いつぶしたような顔をした。


「あいつはどさくさに紛れて逃げちまったよ。あたしらを置いてね」


「うそぉ!!」

 

以前、仲間が猛毒に侵されていた時、アランはものすごく一生懸命だった。


なのに、こんなアッサリと仲間を見捨てるなんて信じられない。


「何があったの??詳しく聞かせて」


「・・・あんたに言った様に、あたしらは料理屋の店主に復讐しに行ったのさ。開店中だったけど、かまいやしなかった。店内をめちゃくちゃにして、店主を探し回った。だけど見つからなかったのさ」


「報復を恐れてたんだね?きっと」


「そうだろうね。毒を盛るだけ盛っといて、卑怯な奴だよ!あームカつく」



フィオネは格子をガンガン蹴った。


思い出すだけでイライラするみたい。


「落ち着いてフィオネ。それからどうしたの?」


「仕方ないから、警備が来る前にその店からトンズラした。スッキリしないままアジトに戻ったら、あんたがいなくなってて、アジトの中も荒らされてたからアランがぶち切れて大変だったよ」


「こ・・・こわ。でも私の方もね!指名手配犯があのアジトに偶然現れて、殺されかけて大変だったんだよ!」


「・・・それ、マジ?」


「ロビンたちが来てくれたから私、助かったの」

 

フィオネはぶつぶつ言いながらちょっと考えて、「あぁ!」と大きな声を出した。


びっくりしてのけ反る私。


「あんた、あそこがあたしらのアジトだってチクッたでしょ!?」

 

それを言われて私もハッとなった。


「・・・・もしかして、あなたたちが捕まったの、私のせい?」


「そうだよ!!アジトでくつろいでたら、いきなりその女(レッテ)と兵士どもが突入してきたのさ!城のもんが来て、皆パニックだよ!その混乱に乗じてアランの奴はどっか行っちまうし、メグミには裏切られるし、もぅ最悪だ」

 

最初は勢いづいていたフィオネも、後半脱力したようで、格子を掴んだままヘナヘナとその場にへたりこんだ。


私は呆然としてしまった。


レジスタンスのアジトは護衛戦士に知られていた。


考えてみれば、彼らが逮捕されるのは当然の結果。



でも、裏切ったつもりは毛頭ない。



「ごめんなさい。こんなつもりじゃ・・・」


「言い訳なんか、聞きたかないよ」

 

謝る私から目を逸らし、フィオネはふて腐れてそっぽを向いてしまった。