一人暮らしを始めて、ちょうど一年が過ぎた。

あたしがこの狭い1Kにひとりきりだった時間なんて、正確には、ほとんどない。
引っ越してから最初の2ヶ月は彼が出入りしていたし、入れ替わるように現れた同居猫が、今となっては帰りを待ち詫びてくれる唯一のソウルメイトだ。

高速に巻かれるようにそびえる薄い灰色の建物は、その立派な外観とは裏腹に、あまり外向けできない事情の人が多く住んでいる。
明け方近く、尖った踵で冷えた廊下を蹴る彼女は、がちゃがちゃ鍵を鳴らしてドアを開く。同じ頃、単身者用マンションの一室に集う4人の男が、大声で何やら意味不明な言葉を発しながら出て行った。

そんなこの場所を、あたしは愛しているのだと思う。誰もが面倒を放棄して帰ってくるこの場所。気怠い帰路の先に待つ、各々の熱いシャワー。
朝は、太陽だけが連れてくるものではないということをまことしやかに教えてくれたのは、グレーのコンクリートと、ボルドーの遮光カーテンだった。

嘘っぽい灯りに24Hと縁取られた店で、ヨーグルトを買った。「カロリーオフ」のどきついピンク色が、真夜中の不摂生に言い訳をしているようで好ましい。
言い訳もせず、不正を不正とも気がつかず、その上、世のためになっていると傲っている人たち―昼間大きな顔を晒して歩いている人たち―は、不摂生もしないのだろうか。



3層のセキュリティの先には、護るべき幸せの個室が待っている。護られるべき人たちの気怠い帰宅は温かく、あたしを安心させる。

不摂生が連れてくる朝をこんなにも、愛している。