あたしは、一生幸せになんか
なれない気がしています。


割れた褐色の瓶やひっくり返った灰皿でごった返した刺々しい景色は、カーテン越しの朝焼けにくっきり輪郭を縁取られ、妙に白々しい気分にさせた。

シュールに研ぎ澄まされた3回の夜明け。

あの夜以降の時間は、もやがかった景色となって実体を遠ざけている。玄関先の車輪の跡や左腕の内出血は、わざとらしく遺された刻印のよう。

ただ、十六夜の月影が痛々しい明るさで闇を照らしていたことだけは、うんざりする程の鮮明さで覚えている。冴え冴えと、はっとするほどの輝度で佇む月。


誤魔化すしかない。

直視はできない。


そう思い込んで痛がることから逃げ出したあたしに、出遅れの満月が教えた潔さ。

朧な毎日であたしにできるのは、痛みに、融けていくしこりに、対峙すること。先の見える苦悩は痛くない。
苦しくなったその時は、薬指に僅かに残る痺れの襞に逃げ込めばいい。

貫くこと。

偽らないこと。

伝えること。


それさえ守れば、
大丈夫だと思う。

あたしはこのまま
前を向いているつもり。


通り過ぎるのが怖い。


あたしの知らないまち。

あたしの知らないおもいでのまち。


強くいなきゃ。

うーん…やっぱ憎いな。

手に触れただけで分かる。

幾つもの感情の脈が、渇いた傷を残して流れ出した痕。

削り取られた荒涼の表皮が見える。


【信頼】を意識した瞬間、

本当は在るべきでない【疑念】への抗いに磨耗して。

背徳との葛藤、信じたい想いの上に、内側を蝕む二律背反。

きっと、怖かったと思う。
痛かったと思う。



貴方の【これまで】に介入することはできない。

傷を埋める術は何一つ持たない。

だからせめて、

貴方の【これから】に寄り添いたいと思った。
ただ穏やかに、

誰かを想うことができるように、

信じる努力をしなくてもいいように。


繋がる指の隙間を意地悪な風が掠めないよう、

強がりな輪郭を押し付けた。


よく、ここまで歩いて来たね。

あたしには、何が出来るのかな。