今のところこの新型コロナウイルスの特効薬というか、ワクチンがないというのは最新医療科学時代においてどうもヘンだ。
肺結核にはストマイ(ストレプトマイシン)というのがあり、インフルエンザにもその年に適ったワクチンがある。
こういう場合、温故知新で基本に戻って見直し、ゼロから組み立てる必要があるのではないだろうか。
過去に学ぶということで、次にあげるのは、18世紀の事です。
その頃の状況は天然痘が流行し、今のように世間がパニックになっていました。
そんな中、イギリスで町医をしていたエドワード・ジェンナーはある噂を聴き、閃いたと言います。
この町で牛の乳しぼりをしている女の人たちの間で、不思議なうわさが流れていました。
牛痘にかかった牛からこの病気をうつされた人は、天然痘にかからないというのです。
でもほとんどのお医者さんは、
「そんなバカなことがあるもんか。天然痘は誰にでもうつるおそろしい病気だ」といってそんな噂を信じようとしませんでした。
ところがジェンナーだけは
「いくら噂だけだといっても、実際に天然痘にかからない人がいるのだから、そこには何かわけがあるに違いない」と思っていました。
しかし、それを証明するためには、臨床実験が必要です。
だれも、そんな実験になる人はいません。
ジェンナーはしかたなく、自分の子どもで実験してみることにしました。
産まれてまだ十ヶ月になったばかりの、たいせつな男の子です。
もし、実験に失敗したらどうなるでしょうか。
自分の子どもを病気にさせた鬼のようなお父さんになってしまいます。
でもそれが、もしうまくいったら、自分の国の人たちだけでなく、世界中の人々がこの流行病、天然痘から救われるのです。
人々を助けるためだ
「エドワード、ゆるしておくれ」
ジェンナーはなんにも知らない赤ちゃんのエドワードに、牛痘にかかったブタからとったばい菌をうえ、病気にさせてしまったのです。
それから今度は、おそろしい天然痘のばい菌をうえつけました。
うわさが本当でなかったら、エドワードはまちがいなく天然痘にかかってしまいます。
「どうか神さま、この実験が成功しますように」
ジェンナーは何度も神様に向かって手を合わせました。
不思議な事に、先に牛痘にかかったエドワードは、いくらおそろしい天然痘のばい菌をうえつけても、天然痘にならないのです。
「やっぱり、私の思っていたとおりだ」
そして、ほかの子でも実験して自分の考えが正しかったことを、論文にして発表しましたが、有名な医者たちは非難するばかりでだれもこの新発見を認めようとしません。
ところがこの実験はイギリス以外の国では、たいへんな評判になり、実験が正しいことが各国で認められました。
やがて、イギリスでもその功績をたたえるようになり、そのための施設もでき、現在では天然痘は世界中の国からなくなりました。
そして、現代2020年
このように、種菌をうえて抗原抗体反応を起こし、免疫を育てるということが、今回の新型コロナウイルスでもできないものかと思うのだが。
実際に新型コロナウイルスにかかって、入院し、そして退院された方々の白血球、あるいは遺伝子、ゲノム塩基配列などからなんらかの抗体があったから治った、退院できたのではないのか。
よしんば、退院しても再発、あるいは再罹患した症例があるにしても、そこにはなんらかの抗原抗体反応がある筈である。
ジェンナーだったら、そう考えるだろう。
*参照図書:「心を育てる偉人のお話3」西本鶏介/編・著(ポプラ社)