先日、父の誕生日だった。

75歳、後期高齢者になった。

 

これが最後の誕生日になってしまうのかな。

 

プレゼント、何がいいか考えたんだけど、今さら何をあげたら良いのかわからなくて、結局何もあげなかった。

出勤前に「誕生日おめでとう」とだけは言った。
「ああ、ありがとう」と言う父の頬が随分こけているように思えた。

 

 

自営業を営んでいた父は若い頃から「自分の人生は太く短くだ」と言い続け、早朝から大きいトラックに材料をたくさん積み込んで遠くの仕事現場まで行き、仕事後は毎晩のように仕事仲間の方達を連れて繁華街に行き、文字通り浴びるように酒を飲んで、深夜ぐでんぐでんになって家に帰ってきていた。繁華街ではいろんな人たちと揉め事をおこし、袋叩きにあってボロボロで帰ってきたこともあった。

休日は朝から酒を飲むこともあり、母とよく言い合いになってたな。

 

「豪傑」というか「やりたい放題」というか…

みんなから「慕われている」のか「嫌われている」のか…

僕の地元では、良くも悪くも常に話題にあがるような人物だった。

 

 

しかし、そんな毎日がいつまでも続くハズがない…

 

 

 

約20年前のある日、仕事中に母から震えた声で電話が入った。


「お父さんが大量の血を吐き出し、救急車で病院に運ばれた」と。

 

僕は職場を抜け出し、急いで病院に駆けつけた。

病院には青ざめた表情の母がいた。


父は緊急手術中だった。

 

 

吐血の原因は「食道静脈瘤」だった。