俳句ポスト365兼題「炭」の人選・並選発表がありました。
今回も有難いことに二句選に入りました。
皆様のご指導・ご鞭撻のお陰でございます。
 
もう一句は
蠍座よそう言い放ち炭をつぐ
という句でございます。
 
今回も過去にご交流の記憶がある方や、そのご家族の方などの句を鑑賞させて戴きます。
記憶で探しておりますので、見落としがありましたらご指摘下さい。
また、ご自身の鑑賞が載せられるのが不快な方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければ削除致します。
 
入選なさった皆様、おめでとうございます。
 
 
 
炭熾す明善寮の四人部屋 ラーラさま
仙台の寒さをしのぐ東北大学生の姿が浮かびます。
 
炭つぐや秩父の風を聴きながら ラーラさま
空っ風の音と寒さが伝わります。
 
炭を割る音で機嫌がわかります S.A.Y.さま
毎日のちょっとした違いから感じる家族への愛ですね。
 
炭の香や祖父の蘊蓄祖母の所作 S.A.Y.さま
お爺さんとお祖母さんの人間関係が見えてきます。
 
んぎやんぎやと雪子の泣けり炭を継ぐ 24516さま
子育てをする雪国の昔の家庭を思い起こしました。
 
炭挽けば今朝も青空尖りけり 24516さま
空が尖るという表現が詩的です。
 
炭継ぎつ海荒れさうと仲居言ふ トポルさま
日本海の旅館のやり取りのように感じました。
 
日本晴れ炭透き通るまで熾る トポルさま
空も炭の火も透き通っています。
 
宇治十帖読んでかそけき炭をつぐ 剣持すな恵さま
読書の暖房として、源氏物語との響き合いがあります。
 
雲厚きこの夜の底の炭火かな 剣持すな恵さま
夜の底という表現がいいですね。
 
炭継ぐや箱根寄木の秘密箱 小川めぐるさま
炭と寄木細工の取り合わせです。
 
野衾の飛び立つ気配炭砕く 小川めぐるさま
外には物の怪もいる夜の寒さでしょう。
 
足跡は深く沈んで運ぶ炭 城内幸江さま
炭の運搬は雪深い道のようです。
 
はつきりと炭折れる音聞きにけり 城内幸江さま
何でもないようですが、冬の音の通りを表現しています。
 
陣痛の端緒のやうに炭熾る 中山月波さま
炭の赤くなっていく様子を陣痛に喩えました。
 
里帰りの理由は聞かず炭爆ぜる 中山月波さま
里帰りの会話と取り合わせ実家の冬を詠みました。
 
空は灰色茣蓙に広げる小枝炭 桃猫雪子さま
準備の景ですね。この発表位置は地選天選の暗示でしょうか。
 
竹炭の節冴え冴えと立つ気かな 楠えり子さま
竹の節が立つという表現が冬と似合っていると思います。
 
炭の香や星擦り合うてゐる気配 楠えり子さま
星が擦り合うとは、詩でなければしない表現です。
 
百年の家百年の炭の数 比々きさま
古民家の風情です。
 
炭と炭叩いて眠い火をおこす 比々きさま
眠いのは炭でもあり作者でもあり、朝の景でしょう。
 
炭ついでなんとはなしに居座らむ dolceさま
ありがちですが、人間観察がいいと思います。
 
語り部がこれでこっぽし炭ぱちん GONZAさま
昔話の終わりが「こっぽし」のようです。津軽は「とっちばれ」です。
 
炭注いで尽きることなき宇宙論 いもがらぼくとさま
語り続ける中での暖房です。
 
三更に尉が立つまで聴く奇譚 ウロさま
三更も尉も始めて知りました。勉強になります。
 
火箸刺す炭ほうほうと盛りたる さとう菓子さま
オノパトペが独特ではないでしょうか。
 
木琴は水晶の笛備長炭 ぽろたまさま
備長炭との取り合わせに響き合いがあります。
 
炭を足す通学列車着く前に ゆきたまさま
駅の思いやりでしょうか。学校かもしれません。
 
戸をたててあとはひとりの炭火かな 近澤有孝さま
誰かが帰ったあとの寂しさです。
 
屍の爪白きことお花炭 山香ばしさま
何かを悼んでいるようです。
 
炭爆ぜてふたご座に消えていく火の粉 枝温李さま
双子座という断定が詩的です。
 
日溜りへ備長炭の闇を置く 耳目さま
炭ではなく、炭の闇を置くという表現がいいと思います。
 
炭をつぐ祖母の戻らぬ祖母の部屋 小市さま
亡くなった方への追悼です。
 
炭焼きの男が握る拳固飯 酔いどれ防人さま
いかにも武骨そうです。
 
炭の火の優し澄子の句の易し 石川焦点さま
池田先生の句なのでしょうか。
 
来年は夫の厄年炭をつぐ 猫愛すクリームさま
暮れの風情ですね。
 
炭の香ややうやう縮む猫の髭 葉音さま
暖かさに猫が安心したのでしょうか。何匹も飼っていそうです。
 
買われゆく俺の背骨のような炭 理酔さま
売り物の炭に自分の背骨を投影しました。
 
パガニーニアーナの調べ炭を挽く 立志さま
バイオリンとの響き合いです。挽くが弾くとも重なりそうです。
 
埃及の壁画にあかあかと炭おこすひと ニットさま
エジプトの炭を詠みました。
 
側室の増える分だけ嵩む炭 まゆ熊さま
大奥でしょうか。財政が厳しいようです。
 
故郷の父の焼きたる炭もらう 松尾富美子さま
離れた家族への愛と感謝を感じました。
 
パチパチと炭音となり昭和かな 風花さま
この昭和は回想なのかもしれません。
 
 
 
 
おまけ
 
RNB南海放送ラジオの番組「夏井いつきの一句一遊」12月20日(水)放送
 
今週の兼題はタウンページ企画、テーマ「中予」でお送りをしております。
 
青森から参加、佐東亜阿介です
◇注ぐ陽や忽那の旨味たるモイカ 青森・佐東亜阿介/忽那七島の海から獲れるモイカでしょうね