2017/9/6投句分(○が付いているのが疑似自選句です。)
 烏瓜ダム湖の底の赤鳥居 ○
 烏瓜灯り一つの無人駅 ○
 烏瓜鉄路はがしたホーム跡
 烏瓜旅館と文字のある廃墟 ○
 烏瓜施設の母の目の光
 烏瓜火葬場の窓叩く雨 ○
 烏瓜納骨終えた喪主の肩 ○
 烏瓜老いた和尚の袈裟の裾
 烏瓜お稲荷さまの神集い
 烏瓜人の気配のせぬ神社 ○
 烏瓜ずっと見られている気配 ○
 烏瓜酒場一軒だけの村
 烏瓜ひげの濃さ増すゲイの朝
 烏瓜酒の匂いの残る朝 ○
 烏瓜帰宅の記憶失せた朝
 烏瓜財布ないこと気付く朝
 烏瓜天井回る二日酔い
 烏瓜撮り鉄並ぶ線路脇 ○
 烏瓜三門の龍禅を問う
 烏瓜探幽の龍鳴らす鈴
 烏瓜竹針使う蓄音機 ○
 烏瓜螺鈿の箱のオルゴール ○
 烏瓜自動ピアノの紙の穴 ○
 烏瓜公案を解く寺の猫
 烏瓜悟りすました庫裏の土間
 烏瓜長考の末底歩打つ
 烏瓜マディソン郡の信号機 ○
 烏瓜散骨願う母の遺書 ○
 烏瓜柔肌の歌詠む晶子 ○
 烏瓜伸ばした紅の薬指
 烏瓜シートに残るイヤリング
 烏瓜温泉街のママの頬
 烏瓜櫛の形の赤き月 ○
 烏瓜社員旅行のコンパニオン
 烏瓜貴船の闇の藁人形 ○
 烏瓜取引持ちかける悪魔
 烏瓜キャバクラ嬢の生欠伸 ○
 烏瓜地蔵の赤きよだれ掛け ○
 烏瓜昔食ったと言う叔父貴
 烏瓜駐在裏の狛狐
 烏瓜笛と太鼓と子らの舞
 烏瓜鼻筋白く塗った子ら
 烏瓜肩出し太鼓打つ娘 ○
 烏瓜町内の子ら打つ太鼓
 烏瓜ダムに沈んだ村の舞
 烏瓜石鹸溶けぬ湯の匂い
 烏瓜饅頭ふかす蒸籠かな
 烏瓜東北自動車道の朝 ○
 烏瓜太陽背負う岩木山 ○
 烏瓜弁当箱の醤油入れ ○
 烏瓜弘前城の濠の碧 ○
 烏瓜二時間待ちの停留所
 烏瓜野点の菓子の艶袱紗 ○
 烏瓜杜の野点の緋毛氈 ○
 烏瓜十五代目の樂の銘
 烏瓜初代の樂を接いだ金
 烏瓜母の実家の瓦屋根
 烏瓜ガムランの哭くジャワの夜 ○
 烏瓜除染進まぬ村の杜 ○
 烏瓜復興進む街の音
 烏瓜夜中の光る観覧車 ○
 烏瓜朝の静かな獣道
 烏瓜河床路に立つ痩せた犬 ○
 烏瓜夜目の光る仁王像 ○
 烏瓜遠くをうねる寺の鐘
 烏瓜客足絶えた秘宝館 ○
 烏瓜突き返されたラブレター ○
 烏瓜ストーカーめく客の頬
 烏瓜一雨去った正午前
 烏瓜干上がりそうなダムの底 ○
 烏瓜次のバスまで三時間
 烏瓜百万遍と彫った石 ○
 烏瓜雲をかぶった岩木山
 烏瓜墨の薄れた下乗の字 ○
 烏瓜底黒々と厚い雲
 烏瓜香炉の炭の熱の赤
 烏瓜工場横の赤提灯
 烏瓜泣く母を見た十五歳 ○
 烏瓜父を初めて殴った日 ○
 烏瓜涙こらえた息子の眼 ○
 烏瓜母の火葬を待つ間 ○
 烏瓜サヨナラ云わず去った人
 烏瓜祝言の日の父と母
 烏瓜セーラー服の笑う妣
 源氏名の名刺の文字や烏瓜 ○
 アンコールワットの朝や烏瓜 ○
 聞き取れぬ防災無線烏瓜 ○
 朝乱すJアラートや烏瓜
 抜け肌の備前の見込み烏瓜 ○
 鬼萩の釉薬白し烏瓜 ○
 琉球の魚文の皿や烏瓜 ○
 常滑の朱泥の急須烏瓜 ○
 スポークの錆びた自転車烏瓜 ○
 宴席の手持無沙汰や烏瓜
 サヨナラのメールの文字や烏瓜
 慰霊碑の蝋燭揺れる烏瓜 ○
 教頭と面談する日烏瓜
 朝夢と知る妣の声烏瓜
 妣宛の考の手紙や烏瓜
 初めての沐浴の我烏瓜