本日は、俳句ポスト365兼題「烏瓜」の人選・並選発表日です。
今回も有難いことに二句も選に採って戴きました。
読者の皆さんのご指導・ご鞭撻の賜物と感謝申し上げます。
もう一句は
烏瓜客足絶えた秘宝館
という句です。
 
いつものように過去に交流があった方やその方のご家族など関連が深い方を中心に鑑賞させて戴きます。
俳号を記憶だけを頼りに探しておりまして、時折漏れることがありますが、どうかご容赦ください。
また、このブログで鑑賞されることや、句を掲載されることが不快な方は、お申し出戴ければ、気付いた時点で即座に句を削除致しますので、ご連絡下さい。
 
貴様ほど寂しかないぞ烏瓜 理酔さま
楽しい句です。季語を相手に啖呵を切っています。
 
烏瓜ここに星雲有りました 理酔さま
星雲は烏瓜の花の記憶かもしれません。
 
割りて喰ふ胃液の色の烏瓜 トポルさま
烏瓜は実は胃袋だったというのは驚きです。
 
烏瓜村は海松色寡婦ばかり トポルさま
過疎の村の色や寂しさが伝わります。
 
試しゐる墓石のすわり烏瓜 ウロさま
新しく建てたお墓の準備中でしょうか。
 
この村は寺だけ立派烏瓜 ウロさま
特に観光施設などはない、昔栄えた村なのでしょう。
 
烏瓜割れてこの世に怒声満つ ゆきたまさま
烏瓜の中には怒りの声が沢山詰まっているという発見です。
 
烏瓜手繰り限界移住かな ゆきたまさま
「限界移住」とは何でしょうか。限界集落への移住かもしれないですね。
 
バッハ聴くかういふ朝の烏瓜 ラーラさま
優雅な朝の烏瓜は格別なのかもしれません。
 
部屋住みの叔父と私の烏瓜 ラーラさま
独身のまま、実家に居続ける叔父と自分を季語に喩えたのでしょうか。
 
喰ふために太らせる豚烏瓜 耳目さま
まさに真理です。季語が何か不穏な感覚を与えます。
 
みどりごに五つの臓器烏瓜 耳目さま
五臓六腑というのですから、正常なのですが、生々しさを覚えます。
 
おみくじの吉事を信ず烏瓜 中山月波さま
悪いことは信じないという信念と季語の響き合いです。
 
からすうり火星は青く暮れゆけり 中山月波さま
赤い火星が青く暮れていくところと季語の微妙な関係が神秘的です。
 
烏瓜しやがしやが揺るる薮を揺る 楠えり子さま
少し風があるようです。不安な心もあるのかもしれません。
 
玉梓や一道七県三笠山 楠えり子さま
三笠山という名前の山があちらこちらに。季語も様々な連想が浮かびます。
 
マタイ伝閉ぢ明日は明日烏瓜 猫愛すクリームさま
新約聖書の巻頭です。山上の垂訓などが有名ですが、レットイットビィと観念なさいました。
 
ハモニカのラの音がする烏瓜猫愛すクリームさま
風に音階を感じたのでしょうか。
 
烏瓜ひつぱれば出る昼の月 比々きさま
引っ張れば出てきそうな月という表現が詩的です。
 
嗅覚のとがる妊婦や烏瓜 比々きさま
妊婦と季語が通じ合っています。
 
山小屋は少し傾いで烏瓜 小川めぐるさま
山行の風景なのでしょう。
 
てゆてゆと雨後の沢水烏瓜 24516さま
独特なオノマトペとも、アイドルの挨拶とも取れる言葉が魅力的です。
 
つつぬけの噂ばなしや烏瓜 dolceさま
烏瓜がみんなに伝えてしまったのでしょう。おしゃべりな季語ですね。
 
コンビニに万屋の跡烏瓜 GONZAさま
昔は田舎のよろずやだったのでしょう。コンビニになっても烏瓜は健在です。
 
母は今最後の実です烏瓜 S.A.Y.さま
話し言葉のようでありながら、意味が通じない詩的な言葉です。おそらく比喩なのでしょうが、現代劇のような違和感が心地好い句となっています。
 
烏瓜路傍の箱に猫五匹 いもがらぼくとさま
ちょっぴり可哀想な景ですね。誰かがまとめて自分のウチの子にしてくれることを祈ります。
 
烏瓜ちょいと顔など描いてみる さとう菓子さま
楽しい句です。誰でもそう思うだろうことをそのまま言ったことが先進的です。
 
いま烏瓜のあたりか家出の子 さるぼぼさま
どのあたりか見当はついているのでしょう。焦りを感じませんので、かわいい子には旅をさせよと悟っているのかもしれません。
 
いのちとはおもはざりしも烏瓜 しらぬいのがねさま
生き物ではないように感じたのでしょう。夏の季語である烏瓜の花をも含めて考えるとまさにそう感じます。
 
岩肌はいつも濡れいろ烏瓜 剣持すな恵さま
湿度が季語との響き合いを作っています。
 
立ち退きの計画ありて烏瓜 佐川寿々さま
きっとこの烏瓜も無くなって近代的なビルになってしまうのかもしれません。
 
烏瓜墳墓支ふるがらんどう 山野穴太さま
古墳の空洞が古墳を支えているという逆説的な発想です。
 
生酔いの遠き家路や烏瓜 松尾千波矢さま
中途半端に酔っていると、帰りがやたら遠く感じませんか。
 
逆さまな空しがみつく烏瓜 城内幸江さま
うっかりすると空に落ちてしまいそうです。必死にしがみついています。
 
生籬へ夕陽のしずく烏瓜 水間澱凡さま
この季語は、夕陽の一滴なのだと言い切っています。
 
烏瓜かじり物欲失せました 石川焦点さま
どんな味なのでしょうか。あらゆる欲望から解放されるような味かもしれません。
 
地球ささえる象と亀と烏瓜 桃猫雪子さま
古代インドでは、世界は巨大な亀の甲羅(こうら)に支えられた3頭の象が半球状の大地を支えていると考えられていました。
その一つに季語も加わっているのだと言う主張は、詩的説得力が絶大です。
 
東雲を宿せし卵烏瓜 立志さま
この季語は、朝の茜色を孕んだ卵だったのです。
やがて、太陽をも産み出すのでしょう。
 
廃線の電信棒木からす瓜 ぐずみさま
寂寥感と季語との響き合いが感じられます。
 
緞帳の括りにしたき烏瓜 ニットさま
劇場の幕を留める器具にぴったりですね。
発見が独創的です。
 
確かなる中に吾あり烏瓜 ぽろたまさま
自分自身を見つめなおして喝を入れたように感じました。
 
ハロウィンの魔女の帽子に烏瓜 まゆ熊さま
お化けカボチャに似ています。ピッタリですね。
 
カラコロと芸子の帯や烏瓜 枝温李さま
芸妓の帯留めと季語とが似通っています。下駄の音が響いています。
 
その赤は何を告ぐるや烏瓜 小市さま
季語に問いかけています。不穏な感覚が疑問を呼んだのでしょう。
 
登山道ひとり遅れし烏瓜 松尾富美子さま
みんな先へ行ってしまいました。道連れは烏瓜だけです。
 
烏瓜赤の強くて哀しくて 風花さま
季語に想いを託してみたのでしょう。他に言葉が無いという強さを感じます。
 
ミサイルの行方は知らず烏瓜 葉音さま
不穏さに響き合いがあります。戦争がいつ起きるのかという不安は、この季語にピッタリです。