紅花

~始まったら終わると思い踏み出せぬまま終えた恋~


あれは花火の日だったよね

みんなで語り合ったあの夜

君はいつの間にか眠りこけていた

君の手の熱を感じて

君の胸の音が響くよ

君の手を握ればきっと恋になる

でもその恋は長く続かない

浴衣姿をほめてくれた君の

眩しそうなまなざしを忘れたくないから


君は遠くへ行くんだよね

想いは一つも伝えぬまま

君とガラス越しに見つめ合っていた

君の想いだけ感じて

君の声は何も聞こえない

君に手を伸ばせばきっと恋になる

でもそれはすぐ終わる恋なの

新幹線の窓の向こう君は

眩しそうなまなざしで見つめていたけれど



君の手を握ればきっと恋になる

でもその恋は長く続かない

浴衣姿をほめてくれた君の

眩しそうなまなざしを忘れたくないから


原句 紅花や触れざる夜を忘れ得ず 小川めぐる(初出 湯豆腐句会)