朝靄通り二番池


町のはずれのゴルフ場

ちょっとさびれたゴルフ場

そのまた先にある山の

人の通らぬけもの道

神さまここを呼ぶ名前

それは朝靄通りです


朝靄通り脇にある

一番池と二番池

五番池までありますが

人は見たことありません

門番してる熊さんが

いつも見張っているのです


二番池にはボウフラと

ヤゴがいっぱい住んでます

今日朝早く池を出た

ヤゴがトンボになりました

子ギツネ走って神さまに

それを知らせに行きました


和紙で作った帳面を

ちょっと分厚い帳面を

神さま奥の書棚から

ゆっくり出して広げます

神さまが摺る墨の色

ちょっと紫がかってる


帳面広げ書いた文字

朝靄通り二番池

今日から空を飛ぶトンボ

先に飛び交う仲間には

神さま書いたその文字が

重ねて見えているのです


これから暑い日が続き

やがては秋になってゆく

いずれは雪もちらついて

山は眠ってしまいます

それまで少しこの山は

賑やかな日が続きます


原句 蜻蛉生る朝靄通り二番池 小川めぐる

(初出 俳句ポスト365第146回2016年4月28日週の兼題「蜻蛉生る」より