高校三年生の夏休み直前。

 

朝7時過ぎ。

学校に向かうため、到底最寄りとは言えない最寄り駅までチャリンコこいでました。

暑いし、セミうるさいし、駅遠いし、暑いし。

ちょっとでも涼しいように、木陰を見つけては蛇行しながらチャリンコこいでました。

 

道中、高架をくぐる道があり、その道はチャリンコ2台がやっとすれ違えるくらいの細さでした。

高架で陰になってるから涼しいし、下り坂でチャリこがなくていいから楽やし、結構好きな道でした。

 

その高架の下り坂に差し掛かったところで、後ろから原付が来ていることに気付きました。

「マジかよ。こんな狭い道、原チャで通るなよ。」

と、内心思いながらも原付が通れるように最大限端に寄ったわけです。

 

原付が私の横を通り過ぎるその瞬間、

チャリンコのサドルに乗っている私のお尻に衝撃が走りました。

 

最初何が起こったか分からなかったのですが、

私のお尻を触って走り去っていこうとする原付の映像が、

本当にスローモーションのように見えて、

 

「こいつ痴漢やっ!」

 

ということに気付きました。

 

 

私の怒りのボルテージが振り切れるまでにかかった時間は2秒。

 

 

「てんめぇ、待てこらぁ~!!!」

 

 

通勤通学のサラリーマンや学生が行きかう道で、

文字に起こすのも憚られるこの上ない暴言を吐きながら、

普通のチャリンコで原付の痴漢を追いかけまわす私。

 

 

 

そりゃあ原付のほうが断然早いので、途中で見失うわけです。

でも私の執念も尋常じゃない。

通勤途中のサラリーマンに声をかける。

 

 

「おっちゃんっ!フルフェイスのメットかぶった原付どっちいったかわかるっ?!」

 

「さっきあっちの方に走っていったで!」

 

「ありがとう!」

 

 

訳も聞かずにサッと答えてくれたおっちゃんに感謝し、

痴漢の追跡を続行。

 

 

ちょうど人通りの少なくなった路地のビルの陰で、

私のお尻をドライブスルーで触っていった痴漢が、

原付にまたがったまま、ハアハアと肩で息しながら、

フルフェイスのヘルメットを脱ごうとしているじゃないですか!

 

 

「お前なんで原付のくせにハアハアしとんねんっ!!!」

 

 

私のバカ。

怒りのボルテージが振り切れてしまっているので、

心の声がダダ洩れどころの騒ぎではありません。

 

 

暴言吐きながらチャリンコで執拗に追いかけまわしてくるJKに恐れおののいたのか、

ドライブスルー痴漢は原付のエンジン壊れるんじゃないかと思う音を出しながら、

猛スピードで逃げて行ってしまいました。

 

 

さすがの私もチャリンコで全力出して死にそうだったので、

断腸の思いで痴漢の追跡をあきらめることにしました。

 

 

 

この時点で、すでに学校は遅刻。

部活もやっていたので一度も遅刻をしたことがなかった私は、

生徒指導の先生に呼び出されました。

 

「遅刻なんて珍しいな。なんかあったんか?」

「朝痴漢に遭ってしまって…。」

「そうか…。それは大変やったな。」

「はい。追いかけたんですけど捕まえられなくて…。」

「…えっ?!追いかけたっ?!痴漢を?!」

「はい。もうちょっとやったんですけど。私チャリンコやって、相手原付やったから。」

「危ないやろ!!相手武器持ってたらどないすんねん!!絶対に追いかけたらあかん!!」

「…確かに。」

「なんで追いかけるねん(泣」

「二度と痴漢なんかできへんようにボコボコにしたろ思って…。」

「頼むからやめてくれ。」

 

というやり取りの後、警察に被害届を出しに行きました。

 

 

その年の夏休み前の終了式で、

校長先生から、

「痴漢に遭っても絶対に追いかけてはいけません。」

と、異例のお達しがありました。

 

 

 

 

ちょうど今ぐらいの時期の出来事で、

私自身の過去の振り返りをしていて思い出したので記事にしてみました。

 

今考えても、めちゃくちゃ恥ずかしい話です。

でも、こういった恥ずかしい経験や、悔しい経験、辛い経験といったマイナスの経験が、今の自分の人生に与えている影響が実はすごく大きかったりします。

 

自分で過去の振り返りをする際は、

ぜひマイナスの経験に着目してみてください。

 

笑い話にできるようになっているかもしれませんし、

その経験が人生のスパイスになっているかもしれませんよ!

 

注)くれぐれも、痴漢を追いかけるような危険なマネはしないでください