子供たちがまだ小さかった頃、子供にスキーを教えていて、自分が夢中になってしまい、休みの日はほとんどスキー場に行くという日々が10年ほど続きました。ちょうど車で5分も走らない距離に、リフトたった1本の小さな市民スキー場があり、そこはナダラカで基礎練習にはうってつけでした。今思えば、良く飽きもせず通ったものだと思います。

 自分でその日の目標を立てては、何本もその練習を繰り返します。お昼になれば自宅に帰って昼食をとり、またスキー場に戻るという、都会の人から見たら、まさに夢のような環境にありました。人に言わせれば、「あんなスキー場面白くもなんともない」と言われましたが、大きなスキー場に行って、思いっきり滑る技術を磨くのには最適でした。

 そんなスキー技術の基本にプルークボーゲン(以下ボーゲン)があります。所謂「ㇵの字スタイル」です。指導員も「ㇵの字になって」と声をかけて指導します。ㇵの字にならないとスピードが出過ぎて、スキーをコントロールできません。そこで先ずはスピードを押さえるためにこれを覚えます。しかしこのボーゲンには、スキーのターンにおいて、鋭くきれいに弧を描くための技術要素が含まれています。

 スキーがソコソコ上手な人は間違いなくボーゲンもそれなりに上手いです。しかしこの上手になる過程で、ボーゲンをよく練習したから上手になったかというと、そうでもありません。何度か足をそろえながら滑って、転んで、曲がっているうちに少しずつ上手になっていくというのが一般的です。しかし、さらに上級者になるためにはこのボーゲンの技術が欠かせません。以前、私の知人が、「スキーが上手いのは、ボーゲンが上手いからではなくて、スキーが上手いからボーゲンが上手いのでは」と言っていて、確かに一理あるなと感心したことがありました。この話は、中学では数学が出来たという人と、その後数学を得意とする人の違いによく似ています。

 学力テストの数学で満点近くとるためには、短時間で、難問と思われる問題を解かなくてはなりません。そのためにはどうしても解き慣れる必要があります。(解き慣れなくてもできる人もいますが、それは私の教える人の範疇にありません。)難問と言われる問題を解ければ、それは嬉しいです。周りからも凄いと言われるので舞い上がります。しかし、この体感が、せっかく数学の成績が良かったのに、高校に進んで全く分からなくなった私の経験に重なります。

たとえば、数1で習う2次方程式の平方完成は等式変形を意識しないと発想できません。

中学で習う乗法公式

(x+p)=x2+2px+p2

これを変形して

x2+2px=(x+p)―p2

この右辺=左辺の等式変形からスタートします。

実は中学3年生で習う「解の公式」(ゆとり世代は習っていません。その理由は以前書きました。That‘s poor stuff)もこの変形を利用しているだけです。

 以前慶應義塾大学の入試で、この「解の公式」を導く問題が出題され、正答率が低かったそうです。あの私学の雄を目指す人でさえそうなのですから、普通の人は言わずもがなです。

数学において、等式変形を意識することは、スキーのボーゲンで基本的な体の使い方を確認し、体に染み込ませるのと同じです。等式における移行の意味(等式の4つの性質)を何度も何度も体感することこそ、数学を得意とするためのボーゲンなのです。いくら難問に解き慣れて、解法への選択肢を持っていても、スキーで言えば、コブや深雪をそれなりにこなせたとしても、真の上級者にはなれません。

 残念ながら、中学数学も殆どの人が中途半端で終わるのが現状です。そうであるならば、数学におけるボーゲンがなんであるかを伝え、自分が上達しない原因がどこにあるかを、後に自分の力で探し出せることが出来る道筋だけは、付けてあげたいと願っています。

 

四方山話編

 メンタリストDaigoてだれ?北川景子の旦那?とかいう人の発言が話題になっています。私は一度も見たことはありませんが、その弟がクイズを作るのは「あさイチ」で見て知ったいました。初めは面白く見ていましたが、今は全く興味がわきません。東大を出ているそうですが、「他にやることないの、テレビ出て目立ちたいだけ」と思ってしまうし、その兄の謝罪にも同じ匂いがプンプンします。テレビ局さんちゃんとやってください。私は無知なのですから。