さて、お気に入りの書籍を私の独断と偏見で世に知ってもらう、第3弾です

 

今回は小説ですタイトルは「オデッサ・ファイル」です。

 

 

 

 

 

作家さんは公然と私がファンだと言っている、英国のフレデリック・フォーサイス氏です。

一度絶筆宣言したときは悲しかったですが、その後撤回してくれてたりしてます。

氏の作品ではほかに「ジャッカルの日」とか「戦争の犬たち」とかも有名ですが私は特にこの作品が大好きです。

フォーサイス氏を知ったきっかけは「ジャッカルの日」の映画版(1973)フレッド・ジンネマン監督です。(ちなみに1990年代にもリメイクっぽい映画はありますが、個人的には評価は低いです)

 

このジャンルは、、、なんて言うんでしょうかね、、サスペンス・スリラーって言われてるみたいですが、、しっくりくるのはあんまりないです。

 

題名になっているウクライナの黒海に面した都市でも人物名でもありません。第二次世界大戦後、ドイツのナチス親衛隊(SS)のメンバーを戦争犯罪の追及から救済するため海外逃亡等を手助けした秘密組織 の名前なのです。(これは実際にそうした名の組織があったのかは不明なのですが、組織的にそうした動きがあったのは事実のようです。アウシュビッツ収容所のアドルフ・アイヒマン中佐が身分を隠してアルゼンチンい逃亡していたことなどが有名です。)

 

まずはっきり言っておきますがこれは小説です、つまりフィクションです、それでもこれはこの著者の他作品でもそうなのですが、実在の人物・事件・社会情勢などをうまくとりこみ見事にに虚実を入れ混ぜたフィクションなのです。

 

物語の舞台は旧西ドイツ、フリーのルポライターのピーターがケネディ暗殺(1963/11/22)の頃にユダヤ老人が残した日記を手に入れたことに始まります。

 

日記により、ピーターは現ラトビアのリガ収容所の所長でありナチス親衛隊(SS)の隊員であったエドァルト・ロシュマン(これはどうも実在の人物のようです)という将校が身分を隠して国内で暮らしていることを知ります。

 

これをきっかけにピーターはロシュマンを追跡すべくオデッサへ侵入調査を進めていきます。

作中、このロシュマンという人物はオデッサが画策していたエジプトの対イスラエル(当時敵対関係にあった)協力の中心人物であったため、イスラエルの諜報機関(モサド)のエージェントや、ピーターの正体に気づいたオデッサの殺し屋が動いていたり、事態はピーターが知らぬところでも進展していきます。

そういったところがこの作品の物語になります。

 

著者の作品全般にいえることなのですが、ピーターが秘密組織であるオデッサにどのように侵入して、ロシュマンに迫っていくのか、とかオデッサの殺し屋がどのようにピーターを追っていくのかとか言ったことを、かなり詳細に記述していて、追うものと追われるもの、追うものをさらに追うものの描写で緊張感を高めていてそういった世界に読者を引き込んでくれます。

 

この作品の面白いと思うのは、こうしたテクニカルな部分を詳述し読者を惹きつけつつも、物語全体をうまくまとめ上げていっているというところです。ネタバレはしたくあいので深くは言及しませんが、わたしはこの本を読んだとき、チャールズ・ディケンズの「二都物語」を読んだ時と同じような、作者に一本取られたって感覚と同じような気持ちになりました。

 

この卓越したストーリーテリング術ははシェイクスピアやディケンズを生んだ英国の伝統なのではと根拠もなく考えてしまうくらいでした。

 

とにかく、国をまたいで秘密裡に進んでいくスケールから一ルポライターがあの手この手とロシュマンに迫るスケールまで、重層的に描きつつ、一つのストーリー、それも読者を引き込むを紡いでいくそんな魅力がこの作品にはあります。

 

以上、なかなかうまく伝わらなかったかもしれませんが、、、興味がわいた方は是非ご一読をと思います。

 

あぁ、「ジャッカルの日」とか他の作品も称したくなってきた、、、