マニラ署では、全員別々の取調室で調べられることになる。
基本的な容疑は、入国管理法違反ということになる。ビビアンは、任意としてしか取調べはできない。
まず、ビビアンの取調べからである。僕たちは、取調室の中が見える部屋で中の会話を通訳を介して聞いた。
大越刑事が、取り調べにあたった。
「あなたは、八千代さんとは、どういう関係なのですか? 」
「主人との付き合いで知りました。主人の取引先です。それ以外の詳しいことは知りません。ただの、友達という感じです。フィリピンによく来られるので親しくなったのです。私は、殺人とは関係はありません・・・」
「・・・では、話を変えます。どうして、八千代さんが家に来ることを知ったのですか?」
「それは・・・八千代さんからの電話です・・・何でも、一日だけ、泊めて欲しいということでした。何のためだとは聞いていません・・・」
「理由も知らないままに泊めるのですか? それは、変ですね・・・そうは思いませんでしたか?」
「・・・いえ・・・来られた時に聞けばいいと思って・・・」
「そうですか? で、泊まるのは八千代さんだけだと聞いていましたか?」
「いえ・・・もう一人、男の人がいると・・・」
「それが、徳野和義さんですね・・・知り合いでしたか?」
「いえ、徳野さんとは、今日が初めてでした・・・全く、知らない人です・・・」
「ということは・・・和義さんの、お母さんも知らないということですか?」
「それは・・・誰ですか?・・・」
「徳野茂美という女です。その人も知らないということですね?」
「はい・・・名前も聞いたこともありません・・・私の知っている人は、八千代さんだけです・・・」
「八千代さんだけ・・・そうでしょうか? 八千代さんの息子の、純一郎も知らないのですか?・・・」
「・・・名前だけは・・・でも、会ったことはありません・・・東京にいると・・・」
どうやら、ビビアンの言っていることに間違いはないようである。
その間に、ビビアンの旦那の素性を、マニラ署が調べていたのであるが、特におかしい点はないという。
普通の、総合商社の会社員であり、それが縁で、井上八千代との付き合いが始まったようだ。
続いて・・・・
「ビビアン・・・ベニーノ・真奈美という女は知り合いですよね?」
「真奈美・・・知りません・・・誰ですか?・・・」
「八千代の死んだ旦那、金田栄一の姉ですが・・・」
「知りません・・・真奈美さんは知りません・・・私と何の関係があるのですか? 私が知っているのは、八千代さんだけです・・・」
「元のご主人の浅田さんが亡くなったことは話しましたが、あなたの元の義理の母親の和子さんとは長く付き合っているということですね?病院に通われていると聞きました。それは、あなたの息子さんが祖母に会いたいということですね・・・?」
「はい・・・息子は、祖母のことが大好きなのです・・・それで・・・」
「で、息子さんは、この家にいないのですか?」
「息子は、セブ島の飲食店で働いています。ここにはいません・・・息子は、何も関係ないし、何も知りません・・・」
「それは、変ですね・・・署としては、息子さんのことを調べさせてもらいましたが・・・飲食店ということは確認しています、しかし、それは、セブ島ではなく、マニラのエルミタではないですか?セブ島には、一年前にいましたよね。今は、エルミタの飲食店・・・それも、真奈美さんの経営している店ではないですか?」
マニラ署は、すでにビビアンの息子のことまで調べていたのだ。
全く、僕たちの知らないうちに・・・