「井上さん・・・こんなところで会うとは・・・不思議な縁ですね・・・」と、僕が言うと。

「どうして?・・・ここにいるのですか?何故なんですか?私を尾行していたのですね・・・」

「えぇ・・・そうです。で、そちらの男性は誰ですか?息子さんではないですね・・・」

「息子?違います。彼は、徳野和義といいます・・・」と、徳野という言葉を出した。

年のころなら、金田純一郎と同じように、30才前後だと思われる。

徳野・・・? もしかして徳野茂美の・・・と思い、聞いてみると。

「ご存知だとは思いますが・・・茂美さんの息子さんです。私と一緒にフィリピンに来ました。私の仕事のブレーンです。勿論、徳野茂美さんも仲間です・・・皆さんは、息子の純一郎だと思っていたのですか?」

僕たちは、完全に無言になっていた。純一郎ではなく、徳野茂美の息子・・・なのだ。

徳野茂美には、息子がいたのだ。全く、予期せぬことであった。

「井上さん・・・旧姓、金田八千代さんですね。DNA鑑定の結果、あにたと、純一郎さんは、親子だと確認しました。それは間違いないですね?」と、新開刑事が尋ねる。

「・・・間違いありません。純一郎は、私の息子です・・・」

「それは分かりました。だが、あなたの出国履歴がないのは、何故ですか?」

「闇のルートを使いました。もう、調べはついていると思いますが、中国人の候さんにお願いして、韓国に行き、それからフィリピンに入りました」

「候は、すでに逮捕されています。日本を出る理由は、何故ですか?」

「私に容疑がかけられていると確信したからです、博多の刑事さんの尾行がついていたのも分かっていました。だから、日本を出たのです・・・普通のルートだと無理だと思って・・・」

「では、何故?容疑があると思ったのですか?何の容疑だと・・・」新開刑事は、ゆっくりと尋ねた。

「それは、皆さんがよく知っていることです。御手洗や、倉重、浅田のことです。全て、私がやりました。もう、何も隠すことはないので、全てお話します・・・」

「井上さん・・・あなたには無理だ。あなたに、車の知識はない。全て、純一郎さんがやったことですね。あなたには無理なのですよ。息子さんをかばっても何にもなりませんよ・・・」

「息子は関係ありません・・・息子は・・・関係ないのです・・・」と、毅然とした態度である。

「あなたの言いたいことは分かります。しかし、あなたに、車の高度な細工はできない。車に細工がしてあったということは、警視庁の科捜研で判明しているのです。ここまできたなら、何もかも話したほうがいいと思いますよ。どちらにしても、ここでは仕方がないので、マニラ署まで同行してもらうことになります。そちらの、徳野和義さんもいですね?」と、新開刑事が言った。勿論、ビビアンも一緒に同行することになった。

しかし、意外な展開である。



3人を乗せた車は、マニラ署へ向かった。

本格的な取調べが始まる。

それにしても、金田純一郎は、どこにいるのであろうか?

これが大きな疑問となっていた。早晩、八千代の口からはっきりとしたことが分かるであろう。

この時、日本で新たな殺人事件が起こっていようとは・・・・

その夜、東京の新藤から、スカイラインGTRの事件のことを知ることになる。




新開刑事にも、出口刑事から連絡が入ったのであった。

また、事件は、思わぬ展開となっていた。